物流でもIoTを活かせる! 導入するときのポイントは?

モノとモノとを通信させてデータを活用するIoT技術は、物流業界でも活躍の場を広げています。荷物にセンサやデバイスを取り付けることによって、保管中や移動時の事故防止と品質管理を無人で行い、リアルタイムに情報を収集します。現在、IoTの進化による省人化と標準化を目標とする物流の第4次産業革命「ロジスティクス4.0」が進行中です。ここでは、物流業界のIoT活用について詳しく紹介します。

物流におけるIoT導入の方向性

物流業界では配車の効率化・貨物のリアルタイム監視・倉庫内の貨物設備の管理と、大きく分けて3種類のIoT活用が行われています。

配車の効率化

天候や道路状況によってタイムロスや遅延が起きやすい配車については、IoTの活用によって迅速かつ確実性の高い結果が生まれています。

一例として貨物車の積載情報や空車情報をリアルタイムにチェックし、関係部署とシェアをして配送作業をスムーズに行ったり、工場の生産状況を物流側で確認してから在庫や配送状況を照らし合わせて次回の出荷数や配送の場所を取り決めたりといった計画的な配車が行われています。また、積載量の少ない貨物車に荷物をまとめて配送上のロスを防ぐ取り組みも実施されています。

配送中の貨物のリアルタイム監視

出荷から配送までの貨物の進捗状況をクラウドサービスと連携して管理するリアルタイム監視も行われています。倉庫側やドライバーによる操作の必要はなく、貨物の現在位置および目的地への到着時間を自動で予測。貨物にはそれぞれセンサが取り付けられているので、どの状態でどのくらいの時間をかけて運ばれているかがチェックできます。

リアルタイム監視で活用されているセンサは位置情報・温度・湿度・衝撃・加速度などを把握するため、温度管理が必要な貨物についてもどの程度の温度と湿度の中で配送されているかがリアルタイムにチェックでき、品質管理に活用されています。

倉庫内の貨物・設備の管理

倉庫内の貨物や設備にもIoTが取り付けられています。貨物や商品の在庫チェックや作業状態のリアルタイムチェックのほか、作業の進捗状況に遅れが発生した際の計画立案、すでに終了した作業実績の分析を行い業務の改善を図るなどの目的に活用されています。

倉庫内には膨大な貨物や資材が積み込まれており、入出庫・在庫管理を一つずつ行おうとすると相当な負担になってしまいます。しかしIoT技術を導入することで、入荷状況・検品・ピッキング・梱包・出荷・実績の分析まで一連の作業にかかる手間を減らし、業務環境を効率化することができます。

物流で活用されているIoTソリューション

倉庫管理システム(WMS)

倉庫内の貨物や設備を管理するIoTシステムは「WMS(Warehouse Management System:
倉庫管理システム)」と呼ばれています。入庫処理・出庫処理を人の手を介さず、確実に行い、返品や在庫の照会、廃棄処理や商品補充の状態をリアルタイムで検索することができます。
 商品のピッキングにもIoTは使われます。商品1つ1つをバーコードやRFIDタグで管理し、ロボットによる自動ピッキング、人間によるピッキング後の自動確認などが行われています。ピッキングの準備は実は入庫時点から始まっており、入庫した商品の種類と場所が厳密に管理されれば、ピッキングの効率化や省力化が図れるようになるのです。
 さらにこれらのデータを活用して、季節ごとに商品の入荷量を調整したり、次に売れる(出庫される)商品を予測したりする、AIも出てきています。人間の経験や頑張りに頼ってきた倉庫業務が変わってきているのです。

今後の新常態でのビジネスでは、外的要因(疫病・災害)で突発的な変更が増えてくる状況が想定されます。倉庫全体をローカル5Gでネットワーク化し、変化や変更に強いインフラを構築していくことが求められてくるでしょう。

配車システム(TMS)

輸配送管理システムは「TMS(Transportation Management System:輸配送管理システム)と呼ばれています。WMSと連携することにより、WMSで把握した貨物や資材の状況を受けて配送計画を策定、配送指示を出して運行実績を記録します。さらに運賃計算や物流費計算、請求と支払を管理するなど、月次作業も自動で実施。輸配送の課題の一つである人手不足の問題解決にも役立てられています。

人手が必要な輸配送をトータルで見える化することでコストカットと効率化を実現し、配送現場の透明性の確保とサービスの品質向上にも貢献。納品先への確実な配送はもちろん、最小の車両と最短の距離を立案するなど、人力では難しい無駄の削減も実現します。

配送中の貨物については、GPSでリアルタイム監視を行っているため渋滞や事故発生時の対応も迅速に行えます。迂回やそれ以外の指示を的確に行うほか、ドライバーとの連携もスムーズに行うことができます。

配送経路の最適解を導き出すのは「セールスマン巡回問題」と言われている昔からある難問です。経路の数や組み合わせは指数関数的に増えていきますので現在のコンピュータでは計算することができません。5Gネットワークが広く社会に行き渡り、量子コンピュータが一般的に使えるようになるまでは、場面場面で最適解を出していく現実的なソリューションが必要なのです。

物流にIoTを導入するときのポイント

物流に導入するIoTは、業務効率や業務上の課題に対応できるかどうかが重要です。そのためには、いま自社の物流で抱えている課題はどういうことなのかを分析し、問題を設定し直すことが必要なのです。

例えば、物流は会計処理に直結しています。自社の資産がいまどこにどのような状態で置かれているのか、売上計上や預け在庫の棚卸しなど、商品の状態を正確にリアルタイムに把握することが会計上求められます。この会計処理を明確にするためにどうしたら良いのかという問題設定をした上で、IoTの導入を決めるという手順が必要なのです。

物流にIoTを導入することが目的ではありません。物流業務の課題を解決することが目的で、IoT導入はあくまでも手段なのです。

人手不足やヒューマンエラーなど、あらゆる課題が山積する物流業界では、情報をリアルタイムにやり取りできるIoTの導入が急がれています。一方で、いま現場で働いている人たちに対して、IoTを導入することで作業方法や作業内容がどう変わるのかを丁寧に説明していく必要もあります。それは、新たな仕組みを取り入れる際にはどんな部署でも多かれ少なかれ抵抗があるものだからです。

IoTの導入で生産者と倉庫、倉庫とドライバー、ドライバーと受け取り主の間に起こる遅延や無駄を減らし、コストカットや24時間体制でのリアルタイム監視が可能になるなど、多くのメリットが得られます。ロジスティクスのあらゆる課題解決に役立てられるIoTの導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。