
デジタル革命が進む現代、企業の業務効率化を支える最先端テクノロジーの一つが「RFID」です。バーコードの限界を超え、非接触で瞬時に大量のデータを読み取れるこの技術は、製造業から小売業まで幅広い分野で注目を集めています。
今回は、RFIDの概要から仕組みや種類、導入メリット、注意点までをわかりやすく解説します。
RFIDとは?
RFID(Radio Frequency Identification)とは、電波を利用して情報を非接触で読み書きする技術です。ここでは、RFIDの仕組みや種類、用途について見ていきましょう。
RFIDの仕組み
RFIDは専用のタグ(ICタグ/RFタグ/RFIDタグ)とリーダー(ライター)を使用し、電波によってデータをやり取りします。具体的には、リーダーから電波を送信し、タグが電波を受信して駆動、タグが応答結果を送信してリーダーが受信する、という仕組みです。従来のバーコードと異なり、タグとリーダーの間に障害物があっても情報の読み取りが可能で、複数のタグを同時に認識できる点が特徴です。
RFIDの種類と用途
RFIDのタグは電力供給方式と周波数帯によって、それぞれ3種類と4種類に分類されます。電力供給方式は「パッシブタグ」「アクティブタグ」「セミアクティブタグ」の3種類です。バッテリーの有無、通信距離、価格もそれぞれ異なります。
また、周波数帯は「LF帯(135kHz未満)」「HF帯(13.56MHz)」「UHF帯(860~960MHz)」「マイクロ波帯(2.45GHz)」の4種類です。それぞれ異なる通信距離と特性を持っています。
RFIDの用途は多岐にわたり、電力供給方式と周波数帯の違いによる特性を活かして、交通系ICカードや物流管理、在庫追跡などに利用されています。
RFIDを導入するメリット
RFIDを導入することで得られる主要なメリットとしては次の3点が挙げられます。
作業効率とコストの削減
RFIDの最大の魅力は、業務効率の劇的な向上が期待できる点です。従来のバーコードスキャンでは一つずつ読み取る必要がありましたが、RFIDは電波の範囲内にある複数のタグを一括で読み取れます。そのため、在庫管理や棚卸し作業の時間を大幅に短縮し、人件費の削減といったコスト削減も期待できるのです。
リアルタイムの在庫管理
RFIDは、各工程におけるリアルタイムのトラッキングを可能にします。商品の流れを可視化できるようになり、滞留状況の把握や工程改善に活用することが可能です。特に物流業界では、誤配送の防止や在庫管理の精度向上に役立てられています。
精度向上による業務改善
RFIDのタグは電波で情報をやり取りするため、表面が汚れていても読み取りが可能です。バーコードの場合、表面が汚れていたり、読み取り面がでこぼこしておりうまく読み取れなかったりしますが、RFIDであればそのような問題が発生しません。読み取りがスムーズに行えることで人的ミスが低減し、業務プロセスの透明性を高めることにつながります。
RFID導入時の注意点
RFIDにはさまざまなメリットがありますが、導入する際には次に挙げる点に注意する必要があります。
導入コストとROIの検討
RFIDシステムの導入には、タグ、リーダーライター、ソフトウェアなど、初期投資が必要です。特に低価格帯の商品に大量のタグを付ける場合、費用対効果を慎重に検討する必要があります。低価格なタグとはいえ、大量に必要となるとコストも無視できないものになります。導入前に、具体的な業務改善効果を試算することが重要です。
データセキュリティとプライバシー対策
RFIDタグには個人情報や機密情報が含まれる可能性があるため、適切なセキュリティ対策が不可欠です。電波を用いた通信であるため、外部から情報が盗まれる可能性も考慮しなければなりません。タグの複製防止や不正アクセス対策など、情報保護の観点からシステム設計を行う必要があります。
適切なシステムの選定
業界や用途に応じて、最適なRFIDシステムを選択することが成功の鍵となります。RFIDのタグにはさまざまな種類があり、それぞれ特性が異なります。そのため、特性を上手に活かせなければ、求める効果を得られない可能性があるため注意が必要です。通信距離、周波数帯、耐環境性など、具体的な要件を明確にし、専門家と相談しながら導入を進めることをおすすめします。
RFID導入を検討する際のポイント
RFIDは、業務効率化と生産性向上を実現する強力な技術です。しかし、盲目的な導入は避け、自社の具体的なニーズと照らし合わせて慎重に検討することが重要です。初期投資とランニングコスト、期待される効果を総合的に判断し、段階的な導入を心がけましょう。
特に、物流業界におけるIoT化にRFIDは大きく貢献しています。物流業界のIoT活用については、こちらの記事で詳しく解説しているため、併せてご覧ください。
→「物流業界のIoT活用とは? 導入メリットや注意点など」
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