IoT導入のポイントと分野別の導入事例を紹介!

IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略称で、通信用の装置が搭載されたさまざまな「モノ」がインターネットに接続し、データを共有しながらユーザのニーズに合うように提案を行ったり、製品やサービスの改善につなげたりすることを指します。ここでは、IoTの導入のポイントとさまざまな分野での導入事例を説明します。

IoT導入のポイント

IoTを導入した製品は、製品を利用するユーザにとってさらに便利なものになります。たとえば自宅の冷蔵庫をIoT化してインターネットに接続すると、ユーザはレシピの検索や食品の賞味期限に関する情報をリアルタイムに得られるようになります。企業側はユーザに寄り添う製品を提供する一方で、ユーザの情報を集めて分析し、さらにニーズに合う製品の開発に活かすことができます。多くのユーザの需要を正しく見極めるうえでも、ビッグデータの活用が可能なIoTに注目が集まっています。AI(人工知能)技術との組み合わせによる活用も有効です。

企業が新たにIoTを導入する場合は「スモールスタート」と「アウトカムの認識合わせ」が有効です。情報の収集・管理は安価なクラウドサービスを利用し、コストを最小限に抑えながら徐々にIoTビジネスを形にしていくことで、あらゆる負担が軽減できます。経営者と現場担当者の間、IoT導入プロジェクト担当者の間でもスモールスタートの認識をすり合わせることも非常に重要です。そして新たなIoTビジネスに割く予算の割合や金額、人材確保と割り振りに関する計画を話し合い、IoTを導入して、どういう成果が欲しいのかという「アウトカムの認識」の違いを埋めていくことがIoTビジネスを軌道に乗せるためのポイントといえるでしょう。

IoT導入の注意点

企業がIoTを導入する場合、どのような点に気をつけたら良いのでしょうか。最も大切なことは、「IoT機器のセキュリティ対策を万全にする」ということ。IoTを導入するということは、サイバー攻撃による情報漏洩や改ざん、不正アクセスなどのリスクに備えなくてはいけません。特に、人を対象としたIoT機器を導入する場合、個人情報をはじめとするパーソナルデータの取り扱いが圧倒的に多くなります。ひとたび個人情報の漏えいが発生してしまうと、企業にとっては取り返しのつかない致命傷となる恐れがあるため、とりわけ細心の注意が必要になります。

IoTのセキュリティ対策について詳しく知りたい方は、「IoTのセキュリティ対策とは? 安全に活用するために」も併せてご覧ください。

分野別IoT導入事例

具体的にIoTはどの分野でどのように取り入れられているのでしょうか。分野別に詳しく解説します。

製造業分野

製造業分野では製品に組み込んだり工場の生産ラインを管理したりとIoTが活用されています。適切な品質、適切な量を適切なタイミングで供給するということに利用されています。

例えば、新潟県の自動車や医療機器の部品を扱う企業では、部品を造る成型機にIoTを導入したことによって、これまで紙ベースだった生産管理をシステム化することに成功しました。その結果、成型機の稼働状況や部品の生産量などを自動受信することが可能となり、全てのデータをタブレットやパソコンで一元管理できるようになりました。また、生産データを蓄積できることで、欠品や余剰を出すことなく適切な在庫管理ができるようになったり、これまでは人の手によって行われてきた在庫の確認や生産ラインの監視もできるようにもなりました。IoTの導入によって全体の手間とコストの大幅な削減が実現したのです。

また、群馬県ではプラスチックの製造ラインにネットワークカメラを設置し、稼働状況を確認できるようにしたことで、生産性のアップに成功した企業もあります。

農業分野

農業分野では、IoTを導入することでビニールハウス内の環境を遠隔で制御し、取得したデータをクラウド上で管理できるようになります。ビニールハウスに取り付けた環境センサーがデータを送信し、通信網を経てプライベートクラウドに格納する仕組みです。逆にクラウド経由でビニールハウス内に取り付けたアクチュエータで作物に水やりや施肥も行っています。クラウドへのアップロードを閉域網の中で行うことで、セキュリティレベルが高く安定的な通信が実現します。
農林水産省に報告された事例によると、農業分野にIoTを導入することで生産者の育成を行っているケースもあるようです。群馬県での取り組みもその一例で、農家として長年の経験を持つベテランの方に、小型カメラを装着して作業をしてもらい、作業中の視線を分析。その結果、農作物のどの部分を意識して作業を行っているのかなどを見える化し、若手や経験の浅い農業従事者のスキルアップのために活用しているそうです。
また、鹿児島県の畜産農場ではモニタリングシステムを導入。それぞれの牛に取り付けられたセンサーによって、広大な敷地内にある複数の牛舎にいるたくさんの牛の行動や健康状態を一元管理できるようになり、牛それぞれにとってより最適な状態で管理することに成功しています。

建築・土木分野

建築現場では測量機器や建設現場の安全管理システムにIoTが導入されています。ドローンと通信システムを組み合わせた3次元地形データの取得と解析、設計図の自動作成によって手作業で計測する手間が不要になりました。また、現場で使われる建機を自動化して施工を高精度化したことで、作業員の安全確保も図られています。迅速なデータ収集と送信システムの確立によって、従来の建築・土木分野にはなかった「作業の効率化と安全の確保」の両立が始まっています。

医療分野

医療分野では院内で使えるリアルタイム患者見守りシステムが導入されています。患者に送信機を携帯してもらい、院内の各所にある受信機で位置情報を取得。患者の現在位置をリアルタイムに把握できます。ウェアラブル端末によって患者の心拍数や脳波、心電をリアルタイムに把握できるシステムも活用されています。

教育分野

教育現場ではSTEM教育やSTEAM教育の考え方の元、ドローンを用いた授業やプログラミング教育にIoTが活用される一方、通常の授業そのものにもIoTという考え方が取り入れられています。それが、電子黒板とタブレットです。遠隔授業でタブレットを使うのではなく教室でタブレットを使い、質問に対する全生徒の回答を教師が見ることで、手を上げた人だけでないクラス全体の理解度を把握しながら授業を進められるのです。

運輸・倉庫分野

迅速なモノの移動が急務である物流・倉庫分野では、入荷時点からモノの位置を把握し、オーダーに合わせてロボットが動き効率的な荷物のピッキングを手伝いながら、配車システムと連動し、ネットワーク上で受注から配送までの稼働を最適化。労働力不足を補い、配達の遅延も防いでいます。

保険分野

保険というIoTとは遠いように思われる分野の事例では、ドライブレコーダーのIoT化があります。ドライブレコーダーが搭載された自動車が事故を起こしたとき、ドライブレコーダーはそれを感知し、その場の情報をリアルタイムにサーバーに送信します。事故情報は即座にサーバーから保険会社に送られ、運転手(当事者)はリアルタイムに保険会社のフォローを受けることができるのです。

サービス分野

人手不足やインバウンド需要などの時代の変化に対応するため、接客業やサービス業でもIoTの導入が進んでいます。ホテルでのタブレット端末による「スマートチェックイン機」の導入をはじめ、民泊でのスマホを使った鍵の受け渡し、専用のIoTデバイスで客室内の家電製品や空調設備の制御を行えるように一本化し、利便性を向上させています。

小売り分野

小売り分野では商業施設内の各所に設置したセンサーを来店客のスマートフォンアプリに連動させるシステムで、クーポンを発行するサービスや顧客の顔認証システムにIoTが使用されています。他にも在庫管理や発注業務といったバックオフィス業務のスマート化、顧客情報の分析とその結果に基づく顧客満足度の向上、商業施設内の人の流れを把握することによる新たなショッピング体験の提供などに役立てられています。

電力分野

電力分野では、発電施設へのIoT技術の導入が進められています。最も多いのが、電力設備や発電施設などの保守・管理にIoTを活用するケースです。例えば、太陽光発電にネットワークカメラを取り付けることで、現地まで行かなくても遠隔から監視することができるようになり、発電の障害原因にいち早く気づくことができるようになりました。また、複数の発電施設の映像やデータを一元管理できるため、管理運用の手間やコストも削減することが可能です。

IoTは多くの業種で導入が進んでおり、今後もIoT化の加速にあわせてさまざまなモノやサービスが便利になっていくと考えられています。また、「ローカル5G」といった新しい通信技術を使い、制御やロジスティクスも組み合わせたさらに高度なIoTの仕組みが使われることにもなるでしょう。「IoT+あなたのビジネス」をゼロベースから考え、ぜひあなたのビジネスにも取り入れてみてはいかがでしょうか。