スマートファクトリーとは? 目的やメリット・デメリットなど

この記事では、生産状況の見える化、予知保全、設備稼働データの分析による業務改善などが実現できるスマートファクトリーについて説明します。
スマートファクトリーの目的、メリット・デメリット、課題などを説明した上で、スマートファクトリー化の進め方までを解説します。スマートファクトリー化に興味のある方は参考にしてください。

スマートファクトリーとは

スマートファクトリー(Smart Factory)とは、製造業における生産ラインのようなものづくりの現場において、センシング技術やAI、ビッグデータ、IoT機器、ロボットなどを活用して、極力人の手をかけずに稼働することを可能にした工場、およびそれを実現するための取り組みを指した概念です。

スマートファクトリーは国を挙げて注目される取り組みであり、経済産業省では2017年にスマートファクトリーロードマップを作成・公開しています。

スマートファクトリーロードマップでは、品質の向上、コストの削減、生産性の向上といった企業が日頃から取り組んでいる目的ごとに分けて、スマートファクトリー化を成功に導くためのポイントがまとめられています。

なおスマートファクトリーという概念や用語は、ドイツにおける製造業のデジタル化を目指す国家プロジェクト「インダストリー4.0」を具現化する取り組みとして誕生したと言われています。

スマートファクトリーの目的

スマートファクトリー化の目的は、業務を自動化・効率化・最適化して、人手不足を解消することにあります。

国内の製造業は、少子高齢化に伴い技術継承がなかなか進まず、将来的にさらに人手が不足することも分かっている中で、持続可能な生産体制の構築が急務です。

こうした状況を打破する手段として、スマートファクトリー化が注目されています。

スマートファクトリー化のメリット

スマートファクトリー化するメリットの1つは、生産性の向上です。稼働設備や人の動きといった生産状況を見える化することで、生産ラインを最適化できるため生産性の向上が見込めます。

また、ロボットの導入により製造工程が自動化すれば、属人的なエラーや作業のバラつきが抑制できるため、一定の製造品質が担保できます。人と機械の接触が減れば事故の予防にもつながるため、作業環境の改善も実現します。

さらに、ロボットによる作業の自動化が成功すれば、人から人へ技術を継承したり熟練工を育成したりするためのコストも削減でき、空いたリソースを他に割くことも可能になります。

スマートファクトリー化のデメリットや課題

メリットの多いスマートファクトリー化ですが、一部デメリットや課題も存在します。

まず、スマートファクトリー化にはさまざまな機器やシステム、デジタルツールの導入が不可欠なため、導入コストが高額になりがちです。人件費削減や事故のリスク減少などによって、長期的にはコストに見合う成果が得られる可能性の高い取り組みですが、その導入コストの高さから、短期的にスマートファクトリー化を推し進めるのは難しい場合も多いと言えます。

また、工場の制御システムはもともとインターネットにつながらないことを前提として設計されているため、スマートファクトリー化によってネットワークに接続すると、サイバー攻撃などのセキュリティリスクにさらされる点にも注意が必要です。

スマートファクトリー化の大きな課題は、実現までに相応の時間がかかるため、進め方を間違えると途中で頓挫する可能性があることです。スマートファクトリー化を進める上では、次に解説する進め方をよく確認してください。

スマートファクトリー化の進め方

スマートファクトリー化を進める際は、まず目的の明確化から始めることが重要です。なお目的を明確化する際は、日々の改善活動と混同して部分最適にとどまらないよう気を付けましょう。

目的を明確化した上で、実際に体制を構築していきます。このとき、いきなり影響の大きい部分から着手するのではなく、部分的なデジタル化から始めることが大切です。安く小さく始めることにより、現在の作業とのギャップが少なくなり、現場の人員も改革を受け入れやすくなります。

IoTツールの導入を本格的に進める段階では、年単位でのロードマップを敷いて、取り入れるデジタルツールを吟味することが大切です。ツールによっては、稼働データは取得できるが他のデータを取得するのに別のツールを導入しなければいけない、という状況に陥ることもあり、無計画に推し進めるとそこでスマートファクトリー化が止まってしまいかねません。

初期段階の部分的なデジタル化によって得られたデータも活用しながら、長期的な計画を立ててスマートファクトリー化を進めていきましょう。

スマートファクトリーについて、目的やメリット、デメリット、課題、進め方などを解説しました。スマートファクトリーはメリットの大きい生産体制ですが、デメリットや課題も多いため、スマートファクトリー化を進める際は慎重に取り組むことが求められます。

工場の省人化を実現する方法については、下記記事をご覧ください。
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