自治体DXとは? 課題や推進のポイント・取り組み事例など

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業や組織が競争力を維持するための重要な要素となっていますが、その波は自治体にも押し寄せています。

本記事では、「自治体DX」という概念を紹介し、その目的や課題、推進のポイント、さらに実際の取り組み事例をご紹介します。自治体DXの意義を理解し、自治体DXの取り組みを促進していきましょう。

自治体DXとは

自治体DXとは、自治体がデジタル技術を活用してサービスの提供や業務の改善を行う取り組みのことです。

従来の紙や電話などの手続きに代わり、インターネットやスマートフォンなどを利用したオンラインサービスやデジタルツールを導入することで、市民や事業者とのコミュニケーションをスムーズにする効果などが期待できます。

自治体DXの目的

自治体DXの主な目的は、行政サービスの効率化と高度化を実現し、地域住民により良いサービスを提供することです。その手段として、デジタル技術を活用し、煩雑な手続きや情報伝達をスムーズにし、時間とコストを削減することが挙げられます。

また、少子高齢化が進む現代社会では、地域コミュニティの維持・活性化が大きな課題となっています。自治体DXにより、高齢者や子育て世代などのニーズに応える柔軟なサポートが可能となり、地域のつながりが強化されることが期待されます。

さらに地方自治体では、人口減少や都市部への一極集中により、公務員の減少が深刻化しています。自治体DXを通じて業務の効率化や見える化を実現することで、限られた人材でも質の高い行政サービスを継続的に提供することができるのです。

自治体DXの課題

自治体DXを進める上での課題は、デジタル人材の確保、人員不足の解消、ペーパーレス化の推進などが挙げられます。

自治体においては、デジタル化に関する専門的な知識やスキルを持った人材が不足しており、DXの推進に大きな障害となっています。そのため、DXに取り組む人材を確保するために、積極的に人材の育成や採用に取り組む必要があります。

また、人口減少や予算の制約により、地方公務員の数が減少しています。このため、行政サービスの提供においても、人手不足が深刻な課題となっています。

そして、最後にペーパーレス化についてです。自治体では紙ベースの業務プロセスがまだまだ残っていることが多く、それが行政サービスの効率化やスピードアップを阻害しています。

自治体DX推進のポイント

自治体DXを成功させるためには、以下の3つのポイントが重要です。

1.計画的に進める

まずはどのような課題を解決したいのか、どのような目標を設定するのかを明確にし、計画的に取り組むことが必要です。具体的なスケジュールやタスクを設定し、実行に移すことで、効率的なDX施策の展開が可能になります。

2.スモールスタートする

自治体のDXでは、スモールスタートすることが重要です。小さなプロジェクトから始め、PDCAを回し成果を出しながら段階的に取り組みを拡大していくことで、失敗を最小限に抑えながら持続的なDX推進を実現できます。

3.組織全体で施策に取り組む体制を作る

自治体DXを成功させるためには、DX推進部署を設置し、自治体職員全体にDXに関する教育・研修を行い、DXに対する理解を深めるといった意識改革をおこなうことが必要です。また、自治体職員がスキルを向上させるための支援策や、DX推進に向けたインセンティブ制度の導入も検討すると良いでしょう。

自治体DXの取り組み事例

これまでに行われてきた、自治体におけるDXの取り組み事例を紹介します。

とよなかデジタル・ガバメント宣言(大阪府豊中市)

「とよなかデジタル・ガバメント宣言」では、市民や事業者が市役所に来庁せずともさまざまな手続きを可能にする『オンラインサービスの拡充』を最重点課題としてDX推進に取り組んでいます。

具体的な取り組みとして、キャッシュレス決済、ペーパーレス推進・拡充、リモート会議の促進、人材育成・ガバナンス強化などが挙げられています。

スマート人材育成事業(三重県)

三重県では、生産性の向上と正確性の確保を両立させたスマート自治体を目指し、「スマート人材育成事業」に取り組みました。

DXやAIに関する理解を深める研修を実施し、研修参加者の中からDX推進を担当する希望者を募ることで、継続的なスマート改革の実現を目指します。

やまがたe申請(山形県)

「やまがたe申請」とは、山形県が導入した行政サービスのオンライン化プロジェクトで、パソコンやスマートフォンからインターネットを使って各種申請手続きを行うことができます。

やまがたe申請は、山形県民の行政サービスの利便性向上に貢献しており、他の自治体でもオンライン化プロジェクトが進められるきっかけとなっています。自治体DXの一例として、注目されている事例です。

自治体DXは、デジタル技術を活用して行政サービスの質を向上させるだけでなく、地域の未来を拓く鍵となる取り組みです。

市民サービスの向上に加え、行政サービスの効率化によって、税金の無駄遣いを防ぐことにもつながります。スマートな行政で地域と住民を繋ぎ、持続可能な地域社会の実現に貢献しましょう。