AI(人工知能)やIoT、VRなどさまざまな新しい技術が登場していますが、そのなかでも特に注目を集めているものの一つに「メタバース」が挙げられます。用語として聞いたことがあっても、その内容については詳しくわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、メタバースの概要から注目されている理由、できることやメリット・デメリットについて解説します。
メタバースとは
メタバースとは、おもにインターネットを通じてアクセス可能な3Dの仮想空間です。「メタ(超)」と「ユニバース(宇宙)」を合わせた造語であり、1990年代に発表されたSF小説の中で登場する仮想空間サービスが由来となっています。
メタバースでは仮想空間に入り込み、現実世界と同じように自分自身のアバターを操作して他者とコミュニケーションを取ったり、ゲームをしたりして楽しむことが可能です。エンターテインメント分野だけでなく、ビジネス分野へも活用されています。例えば、バーチャルオフィスなどと組み合わせて仮想空間上で仕事をしたり、打ち合わせをしたりすることが可能です。
メタバースとデジタルツインの違い
デジタルツインとは、現実世界で収集したデータを使って、コンピュータ上に現実世界と同じ環境を再現する技術です。仮想世界を作り出すという点はメタバースと共通していますが、メタバースは必ずしも仮想空間と現実世界がリンクしているとは限りません。
例えば、ゲームの世界ではファンタジーな世界観で仮想世界が構築されることが多いですが、フィクションの仮想世界であってもメタバースといえます。メタバースとデジタルツインの違いは、現実世界の複製有無にあるといえるでしょう。
メタバースとVRの違い
VR(Virtual Reality)は仮想現実とも呼ばれ、おもに仮想的な3D空間において現実世界と同じような体験を得られる技術です。メタバースとVRも似ていますが、メタバースは仮想世界そのものを表す言葉であり、VRはその仮想世界にアクセスするための技術として用いられることが多いといえるでしょう。
メタバースを体験するために、VRゴーグルやヘッドマウントディスプレイなどのVR技術を活用します。仮想空間上で現実世界と同じようにコミュニケーションを取ったり、動いたりするために欠かせない技術がVRです。
メタバースとブロックチェーンの関係
メタバースとブロックチェーンは、それぞれ異なる技術ですが、組み合わせることにより、大きな可能性が広がります。ブロックチェーンは分散型のデータベース技術で、世界中のコンピュータに分散してデータを保存し、改ざんが非常に難しい特性を持っています。
ブロックチェーン技術をメタバースに導入することで、メタバース上での所有権や取引の透明性、信頼性の確保が可能です。例えば、デジタルアートや仮想空間内の土地、デジタルアバターなど、メタバース内のアイテムの所有権をブロックチェーン上で管理し、NFT(Non-Fungible Token)として取引することができます。
またブロックチェーンは、メタバースの領域を超えた相互運用性(インターオペラビリティ)も実現します。これにより、異なるメタバース間でのアイテムの移動や利用が可能となり、メタバースの体験が一層豊かで自由なものとなります。
メタバースが注目されている理由
現実世界と同じような仮想空間を作成する、と言葉でいうと簡単ですが、実際に実現するためには高度なIT技術が欠かせません。しかし、昨今のIT技術の進化や通信の高速化によって、以前は実現できなかった仮想空間が構築できるようになりました。
コロナ禍でテレワークが急速に普及するなか、オンラインコミュニケーションの重要性も増しています。多様化するオンラインコミュニケーションを実現するための手段としても、メタバースは注目されています。
また、Facebook社は2021年に社名を「Meta」に変更し、メタバース市場に1兆円規模の投資を約束するなど、ビジネス分野での発展も期待されています。大手企業も続々とメタバース市場に参入しており、今後ビジネスにおいても無視することのできない市場として注目されているのです。
メタバースでできること
メタバースは仮想世界であり、ゲームとしてそのなかで暮らしたり、遊んだりすることが可能です。また、現実世界と同じようなことを実現する例として、ライブなどのイベントを開催することもできます。
また、このようなエンターテインメント分野だけでなく、ビジネスへの活用が注目されています。新型コロナウイルスの流行によってテレワークが普及しましたが、テレワークはコミュニケーション不足に陥りやすいという課題がありました。メタバースを活用したバーチャルオフィスなどが実現できれば、仮想空間上で現実世界と同じように働くことが可能です。先に紹介したMeta社を筆頭としたこの分野への市場進出も現に増えてきています。
その他にも、ブロックチェーンを利用したNFT(Non-Fungible Token)などのメタバース上における商品の売買も注目されており、ビジネス分野への活用が期待されています。
メタバースのメリット
メタバースはさまざまなメリットをもたらします。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
コスト削減につながる
メタバースは仮想世界であるため、インターネットを通じて世界中どこからでもアクセス可能です。場所を選ばずに利用できるため、移動にかかるコストの削減やイベントなどへの参加も容易になります。加えて、物理的な環境を再現する必要がないため、設備投資や維持管理コストも大幅に削減することが可能です。
例えば、企業が製品展示会やセミナーを開催する際、従来は会場のレンタル費用、設営・撤去の人件費、参加者への交通費や宿泊費の補助など、膨大なコストが発生していました。しかし、これらのイベントをメタバース上で開催することで、これらの費用を大幅に削減し、また時間的な制約もなくなります。
働き方改革の促進
単なるオンライン対面などとは違い、空間をシェアできることが最大のメリットでしょう。コロナ禍の中で急速に進んだオンライン会議ですが、対面とは違い多少の壁を感じている方も少なくないと思います。その点空間を共有できるメタバースでは、よりリアルに近いコミュニケーションを遠方の方とも行えるという点は魅力的です。
メタバースは単に話すだけでなく、共有空間で一緒に活動し、アイデアを共有し、共同作業することを可能にします。これにより、働く人々の間のコラボレーションやエンゲージメントが高まります。
さらに、場所や時間に縛られないこの新しい働き方は、従来の9時から5時までの働き方、オフィスでの働き方とは異なる、新しい形の働き方改革を促進します。従業員のワークライフバランスの改善、多様な働き方の実現、地域や時間帯に制約されずに才能を活用することなど、働き方に革新をもたらす可能性があります。
新たなビジネスチャンスが得られる
ビジネス分野でもこれから発展することが間違いない市場であるため、新たなビジネスチャンスを得ることも可能です。
まず商業的な視点から見ると、メタバースは新たな顧客接点を提供します。従来の物理的な店舗やオンラインストアとは異なり、メタバース上のビジネスは、24時間365日、世界中の顧客と接点を持つことが可能です。これは、新たな顧客層にリーチし、ブランドの露出を拡大する機会を生み出します。
次に創造的な視点から見ると、メタバースは新たな商品やサービスの創造を可能にします。仮想的な商品やエクスペリエンス、あるいはメタバース内での広告やスポンサーシップなど、新たなビジネスモデルが生まれる可能性があります。これは、企業が新たな価値を提案し、競争力を維持・向上させるための重要な手段となり得ます。
商圏を拡大できる
メタバース上では、企業は世界中どこにでも存在し、そのサービスを提供することが可能です。言い換えれば、地理的な制約なしに、遠方の顧客に直接アプローチできるのです。市場の拡大、ブランドの露出の増加、そして新たな顧客層の獲得といった形で、ビジネスにポジティブな影響を与えるでしょう。
特に、メタバースは時間や場所にとらわれずに接続可能なため、顧客のライフスタイルや好みに合わせたサービスを提供する機会も増えます。これは顧客体験の向上に直結し、結果的には長期的な顧客ロイヤルティの確立につながる可能性があります。
メタバースのデメリットや注意点
メタバースは注目されるようになって日が浅い技術であり、法整備などはまだ追いついていません。また、メタバースを実現させるためには多大なコストが必要であり、従来とは異なるセキュリティ対策も必要になるでしょう。さまざまなメリットを活かすためには、国内外の先進事例をもとにこれらの課題を解決する必要があります。ぜひ御社の実現したいサービスや仕組みがございましたら、IoTを専門に扱う事業者に相談してみてください。
メタバースをビジネスで上手に活用してみませんか。メタバースはゲームなどのエンターテインメント分野だけでなく、ビジネス分野への活用も期待されており、今後私たちの生活に大きな変化をもたらすと予想されます。現在の私たちの生活にインターネットがなくてはならないものになっているように、メタバースも新たな活動の場として、一般的になる未来はそう遠くないかもしれません。
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