自動車業界のIoT活用事例!IoTで何が変わる?

車のIoT化が進むことで、車はこれまでの「人が運転して遠くへ行ける道具」から脱して、それ以上の新しいものに変わろうとしています。コネクテッドカーや自動運転といった言葉が車の未来を占うキーワードであり、そこにつながるようなテレマティクスなどの技術がすでに実用化され活用されています。車のIoT活用の現状や、数年先の未来のことについて解説します。

何が実現できる?車へのIoT活用でできること

車の利便性は誰もが認めるところですが、一方で交通事故の危険、交通渋滞の慢性化やCO2排出量の増加も車社会が抱えるネガティブな側面です。また少子高齢が進むにつれ、高齢者の運転に関する問題もクローズアップされるようになっています。

車へのIoT活用は、こうした問題の解消に役立つものとして期待されています。IoTだけでなく、5Gなどによる通信インフラの整備やAI技術との連携によって、自動車を安全に制御し、交通渋滞を回避することが可能になり、CO2の排出量抑制にも役立つと考えられています。

こうした車のIoT化を代表するコンセプトとして挙げられるのが、コネクテッドカーと自動運転です。

コネクテッドカーはインターネットを通じて常時データセンターやインフラとつながる車です。そしてやがてコネクテッドカーと融合するような形で普及するだろうと言われているのが自動運転です。自動運転は、システムがステアリング操作と加減速のどちらかをサポートする「レベル1」から、場所を問わずシステムがすべてを操作する「レベル5」までの段階が想定されています。

車のIoT化へのトレンドは、技術的な実現可能性があることを前提に、車をより便利に、安全に利用できるもの進化させる目的で進められています。

車へのIoT活用におけるメリットと課題

すでに述べたように、車へのIoT活用は利便性と安全性の向上をもたらします。

具体的にはエンジンやブレーキ、タイヤなどの各種点検項目のモニタリング・通知機能、駐車中の車の盗難防止機能、万が一の事故の際に自動で消防や病院に通報してくれる機能、商用車の無人配車機能、車と車がつながることで追突などの危険性を回避する機能、混雑状況・交通状況をリアルタイムに把握して知らせる機能、AIを活用した管制システムと自動運転の組み合わせによる交通円滑化・最適化などが考えられます。

一方で課題として挙げられるのがサイバー攻撃などによるセキュリティの問題です。とくに懸念されるのは、車がサイバー攻撃やハッキングを受けるとそれがそのまま安全性の低回に直結してしまう可能性が高いことです。IoTによって安全性が向上するはずが、逆の結果を生むことは何としても避けねばならない大きな命題と言えます。

車にIoTを活用した事例

現在、すでに実用化され、使用されている車へのIoT活用例もあります。

たとえば従来のカーナビに近い機能を持つテレマティクスと呼ばれる技術があります。テレマティクスはカーナビやGPS機能と連動し、モバイル通信網通信などを経由してインターネットと接続することで、さまざまな情報管理や関連サービス提供に利用できる技術です。車との双方向通信を可能にする通信モジュールは「TCU(テレマティクス・コントロール・ユニット)」と呼ばれます。

このテレマティクスを使ったシステムは、eCall(車両緊急通報)による事故の自動通知、自動料金収受システム(ETC)、車両追跡などに活用可能です。また、テレマティクスで記録したデータにもとづいて保険料を算定する「テレマティクス保険」という自動車保険も登場しています。

もっと身近な例では、ドライブレコーダーやデジタルタコグラフ(運行記録計)もIoT化が進んできています。ドラレコやデジタコのIoT化もまた、安全・安心機能の実現と、利便性の向上をもたらします。また商用車の場合は車両管理・運行管理にも役立っています。

自動車業界とIoTの未来

ある調査では、2035年には新車販売台数の9割近くをコネクテッドカーが占めるだろうと予測されています。また、完全な自動運転といえるレベル5を実現する車が登場するのは、2025年頃になるだろうとの予測もあります。

こうした予測から想像されるのは、いまから数年から十数年先には、車のIoT化が格段に進み、車に対するイメージが様変わりしているだろうということです。人間がまったく運転する必要のない状況が当たり前になるのは、そのもう少し先かもしれません。しかし少なくとも、車がインターネットをはじめとするネットワークにつながり、常に情報をやり取りしているのが当然という世界がやってくるのは間違いありません。スタンドアローンで走る車はごく少数派になっているでしょう。

自動運転では5Gの通信技術も重要

自動運転で欠かせない通信技術が5Gです。5Gは2020年春から始まった新しい通信方式で、高速大容量・低遅延・多数同時接続が特徴になっています。高速で走る自動運転の車を想像してみて下さい。車が時速100キロで走っている場合、1秒間で約28m進むことになります。遅延のある通信では、データを送信して計算して結果を受信する1秒間で車は28m進んでしまっているのです。5Gは遅延が1ms(1秒の1,000分の1)という遅延の少なさが特徴の1つです、自動運転には5Gの通信技術が欠かせないことがご理解いただけると思います。

IoT化のトレンドは居住空間や工場や街にも押し寄せ、人々の生活そのものを変えると言われています。そして車と車社会、自動車業界にも大きな変革をもたらすはずです。今後数年の間に次々と登場するだろう車へのIoT活用例に、ぜひ注目しておきましょう。