IoTとM2Mの違いとは? それぞれの特徴とメリット

IoTとM2Mは共通点もあり相違点もある技術だといわれます。その違いはどこにあるのでしょうか。IoTとM2M、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。

IoTとは

IoTはInternet of thingsの略であり、「モノのインターネット」と訳されます。その特徴とメリット・デメリットを説明します。

IoTの特徴

IoTの最も大きな特徴は「多種多様なモノがインターネットにつながる」ことにあります。

身の回りを眺めてみても、PCやスマートフォンは当然として、ゲーム機、テレビ、エアコン、照明、給湯器、HDDレコーダ、スマートスピーカー、ウェアラブルデバイスなどインターネットにつながるモノはどんどん増えています。従来はスタンドアローンで使用・利用していたモノがインターネットにつながり、IoTを前提としたこれまでになかったような新しいモノやサービスも作られています。

IoT住宅、医療分野におけるIoT(IoMT)、農業分野におけるIoTも普及や実現に向けた開発が進んでいます。また製造業では工場や生産管理、工程管理などにIoTツールを導入することで製造プロセスの最適化や業務改善を進める動きが顕著となっています。

メリット・デメリット

IoTのメリットはユーザーの利便性が向上し、企業の効率化が進むことにあります。たとえばIoT化された製品の部品などの消耗をいち早くキャッチして、スムーズに部品交換するような仕組みも構築可能です。故障や不具合対応、ユーザーごとの好みやニーズに合わせたカスタマイズ、状況に応じた生産量の調整・最適化などにもIoTが役立つでしょう。

デメリットはユーザーのプライバシーに関連した情報がやりとりされることによるリスクが挙げられます。ユーザーの製品使用状況のほか、位置情報や音声・映像情報が収集されることもあり、匿名性をどう保つかが問われます。一方ですでにIoT機器へのサイバー攻撃は急増しており、情報漏えいなどのリスクが懸念されています。またIoTがあまねく普及した社会が実現すれば、システムがダウンしたときの危険性もさらに大きなものになると予想されます。

M2Mとは

M2MはMachine to Machineの略です。IoTに先んじて生まれ、すでに導入・運用が進んでいるテクノロジーですが、こちらも特徴およびメリット・デメリットを見てみましょう。

M2Mの特徴

M2Mは機械と機械がネットワークを介して接続し、相互の情報をやりとりをする仕組み・技術です。具体的にはビルのエレベーター監視、自動販売機の遠隔在庫管理、コピー機のトナー監視・故障検知、電力・ガスメーターの自動検針、渋滞や交通規制などの情報をカーナビなどに表示するVICS(道路交通情報通信システム)などが該当します。車の自動運転システムはIoTによって実現されるといわれることもありますが、機械同士の閉じたネットワーク内での通信がメインとなると考えればM2Mのほうが、適合性が高いと考えられます。

その特徴は人間の手を介すことなく機械同士が通信することにあります。目的は主に2つで、1つは機械が機械から情報を収集すること、もう1つは機械が機械を制御することです。これらは基本的に閉じたシステム内で、あらかじめ組み込まれたプログラムによって実行されます。

メリット・デメリット

M2Mのメリットは高度に複雑かつ精密な作業を、機械同士の情報交換によって自動的に、リアルタイムに、持続的に実施できることにあります。人の手を介さないため、システム構築やプログラムに誤りがなく、安定した接続が確立されていればヒューマンエラーも発生しません。要件がM2Mに適したものでありさえすれば、基本的に状況判断のスピード、正確性は人間を上回るため、作業効率が数段向上することも期待できます。人員削減にもつながるでしょう。

デメリットはIoTと同じく、サイバー攻撃によるリスクが存在することです。M2Mは今後、よりインフラに近い分野で活用される可能性が高いため、システムが攻撃されて制御不能に陥れば多大な被害、損害が生じることが想定されます。システムやネットワークの安定稼働も絶対条件です。また、今後は規格の標準化、初期費用の抑制などが課題とされています。

IoTとM2Mは何が違う?

IoTとM2Mは重なる部分もあるよく似た技術であり、現在では「M2MはIoTに含まれる一つの技術」とする考え方も多く見られます。しかし両者にはいくつか違いもあります。

IoTの特徴としては、オープンなネットワーク、標準化されたプロトコル、判断を仰いで動作、集まったデータの活用性高い、信頼性が低い、身近な世界、新しくできた「概念」が挙げられます。

これと対比すると、M2Mの特徴は、クローズなネットワーク、専用のプロトコル、決まった動作、集まったデータの活用性が低い、信頼性高い、産業の世界、実績のある技術となります。

IoTはインターネット技術をベースに、世の中のモノとモノとをつないでしまおうという考え方です。それは、インターネットという標準化されたプロトコルを持つネットワークを通じて、我々の生活の中に点在するモノとモノとをネットワーク化し、便利にしていくということです。我々の生活の中にあるモノは、人間の行動やふるまいと連携して動くものです。例えば、部屋の中にいて、暑いからエアコンを入れるということ例にとってIoT化すると、エアコンにセンサーが付いていて人間の行動を監視していて、人間が「暑いと発話」したり「うちわで仰ぐ動作」を感知したりすると自動でエアコンが稼働するのがIoTです。データの入力・計算・出力という一連の処理を行うのがIoTと言われるものなのです。

M2Mは昔からある考え方で、機械で機械を制御する方法です。予め閾値を決めておいて、その閾値を超える数値が来たら、この制御信号を送るなど。例えば、閾値を1,500℃に設定しておいて、炉の温度が1,500℃を超える数値が送信されてきたら、自動で火を止める信号を送り返す、のような考え方です。
これらは、信頼性の高い専用回線と専用のプロトコルを使って運用をされてきました。そもそも制御信号でしかないので、データを集めて活用しようという考え方も存在していませんでした。しかし、産業の発展につれて制御が段々複雑になってきて、複数の装置や複数の拠点と連携する必要が出てきました。そのため、M2Mの世界でもオープンや標準化という考え方が出てきたのです。

昔からある機械制御のM2Mが、標準化されたインターネットを使うIoTという概念と出会って、IoT/M2Mとなり、現在に至るという感じ。M2Mはずっと実践・実行せれてきた技術で、IoTは最近出来た「モノとモノとをネットでつないだら便利じゃね?」的な感じで出てきた概念。M2Mは技術。IoTは概念。それがいま融合したところ。

IoT/M2Mでは、標準化されたプロトコルを共通で使うようになっています。
それは、HTTP・MQTT・TCP・UDPなどです。

HTTPは、インターネットで使われてきた有名なプロトコルで、汎用性が高く、誰でも使いやすい。しかし、一方でオーバーヘッドが大きくて、データ量が増えてしまいます。また同期通信ですので、クライアント側から何か送信したらサーバから受取の返信があるまで待つことになってしまいます。

それもあって開発されたMQTTは、オーバーヘッドが小さくてHTTPの10分の1程度です。また非同期通信ですので、クライアント側からデータを送ってしまえば、後からサーバ側の都合の良い時に読んでもらえばいい、というものになります。

TCPやUDPは、HTTPやMQTTよりもOSI参照モデルで言うと低レイヤーのプロトコルです。
TCPは、信頼性の高いプロトコルです。確実な接続を確立するために、SYN(接続依頼)ACK(応答・確認)を3回やりとりする「3Wayハンドシェイク」と言われる手続きを行います。これにより信頼性は高くなりますが、通信回数が増えるということになってしまいます。
UDPは、TCPとは逆で、相手が受け取ったかどうか気にしません。送信したら送信しっぱなしのプロトコルになります。信頼性は落ちますが、非常に軽量でトラフィック負荷が小さいです。

IoT/M2Mでは、目的や用途に応じてこの標準化されているプロトコルを選ぶ必要があります。

M2MとIoTは、そもそも目的が異なります。M2Mの主な目的は上述したように、情報収集、もしくは機械の制御です。とくに今後増えていくのは、機械による機械の制御や管理だと考えられます。

それに対し、IoTではモノから得た情報を分析し特定の状況や傾向を見える化するなどして、故障・不具合対応、ユーザーニーズ対応、サービス拡充、新製品開発に活かすなど目的には多様性があります。ビッグデータの活用もIoTとの親和性が高い分野です。

上記と関連して、IoTではインターネットを使用するのがメインですが、M2Mではクローズドなネットワークや機械同士を直接有線で接続する方法が多く選択されます。システムとしてもM2Mは機械間で完結しますが、IoTでは収集した情報を複数の人間や部門で共有することもあります。

IoTとM2Mの今後

ただし、IoTとM2Mは今後、互いに連携または融合しながら発展していくものと考えられます。

工場における生産設備や産業ロボットの稼働状況、消耗品のセンシング、建設における現場監視や進捗管理、夜間警備、農業における農産物の生育状況のセンシングや出荷直前の畑の監視、住宅における温度管理や電力管理、家電の遠隔操作、医療介護におけるバイタルデータのセンシング、見守りサービス、店舗におけるカード決済端末や映像分析によるマーケティング……等々、活用分野が広がるにつれ、IoTだけでもM2Mだけでもなく、両者の効果的な組み合わせが必要とされるでしょう。

IoTとM2Mはそれぞれ異なる特徴を有しています。しかし今後は互いのメリットを活かし、デメリットを補完し合うことで新しいサービスを生み出していくと考えられます。2つの技術の効果的な使い分けや組み合わせについて認識しておくことが重要です。