
企業の映像監視システムでは、従来の録画装置だけでは対応が難しい課題が増えています。このような状況で注目されているものが、複数カメラの統合管理を通じてセキュリティ強化と業務効率化を同時に実現するVMS(Video Management System)です。
この記事では、VMSの基本機能から導入時に確認すべき検討ポイントまで、網羅的に解説します。
VMS(Video Management System)とは何か?
ここでは、VMSの基本的な機能や役割について解説するとともに、混同されやすいNVRとの違いについて見ていきましょう。
VMSの基本機能と企業における役割
VMSは、メーカーや規格が異なる多数のカメラ映像を一元的に管理・記録・再生する機能を提供するシステム・ソフトウェアです。
ライブ映像の監視や録画データの検索はもちろん、ユーザーごとにアクセス権限を設定できるため、部署や役職に応じたセキュアな運用が可能です。小売店の防犯から工場の安全管理まで、幅広い用途で物理セキュリティの強化と施設管理業務の効率化に貢献します。
NVRとの違いと導入によるメリット
NVR(Network Video Recorder)が録画機能に特化したハードウェア一体型の製品であるのに対し、VMSはソフトウェアベースの管理システムである点が大きな違いです。
VMSは既存のサーバーやクラウド環境で動作するため拡張性が高く、複数拠点のカメラも一括で管理できるため、管理工数を大幅に削減できます。
また、ソフトウェアのアップデートによって顔認証などの高度な分析機能を追加することも可能です。VMSであれば、既存のカメラ資産を活かしながら将来的な機能拡張にも柔軟に対応できます。
なぜVMS導入でセキュリティは強化できるのか?
VMSを導入することで、リアルタイムの脅威検知による予防的なセキュリティ対策と、インシデント発生後の迅速な対応という二つの側面からセキュリティを強化できます。この2つの側面から、VMSでなぜセキュリティが強化できるのかについて解説します。
不審行動検知とリアルタイムアラートによるリスク低減
VMSはAIや機械学習を活用した映像分析により、例えば立ち入り禁止エリアへの侵入や不審な徘徊といった行動パターンを自動で検知し、即座に管理者へアラートを送信できます。
顔認証技術と連携させれば、特定の人物を識別して通知することも可能です。24時間体制の人的監視に依存することなく、セキュリティリスクを大幅に低減できます。
通知はメールやSMSなど多様な方法で送信できるため、インシデントの兆候を捉えて迅速な初動対応が可能です。
管理者は監視室にいなくても、手元のスマートフォンで異常を把握し、現場の担当者への指示や警察への通報といった次の行動を即座に起こすことができます。
監査ログ活用でインシデント対応を迅速化
VMSは、操作履歴をすべて監査ログとして詳細に記録します。そのため、万が一情報漏洩などのインシデントが発生した場合でも、「いつ、誰が、どの映像データにアクセスし、エクスポートしたか」といった一連の流れを正確に追跡できます。
インシデントが発生した際には、このログを追跡することで、状況把握や原因究明を迅速に行うことが可能です。また、タイムスタンプが付与され、改ざん防止機能も備えた映像データは信頼性の高い証拠として活用できます。
そのため、インシデント発生後の対応を正確かつ効率的に進めることができるのです。
VMSは監視業務をどう効率化するのか?
VMSは監視カメラの管理体制を根本から変えて、業務効率を大幅に向上させます。従来のように各カメラを個別に確認するのではなく、統合的に扱うことで、これまで見えなかった課題の発見や、新たな価値創出につなげることができるのです。
ここでは、具体的な効率化の方法や仕組みについて見ていきましょう。
複数カメラを一括管理し映像検索を効率化
VMSは、拠点やメーカーが異なる膨大な数のカメラを単一の画面で統合管理できます。そのため、監視業務の属人化を防ぎ、効率的な運用を実現することが可能です。
日時やイベント種別などの条件で録画データを素早く検索したり、AI分析結果で映像を絞り込んだりすることで、インシデント発生時の映像確認作業も大幅に短縮できます。
また、マップ上でカメラ位置と映像を直感的に把握できる機能もあり、施設全体の状況を迅速に把握するのに役立ちます。
運用コスト削減と人的負担の軽減につながる仕組み
VMSは、動体検知があった際だけ録画するイベント録画や、クラウドストレージの活用により、データ保管にかかるコストを最適化します。
カメラやサーバーの稼働状況を自動で監視するヘルスモニタリング機能は、システム障害による稼働停止の防止や、保守担当者の負担軽減に役立つでしょう。
さらに、モバイル端末からのリモートアクセスに対応しているため、現場への巡回頻度を減らし、警備人員をより重要な業務に再配置することが可能になります。
VMS導入時に確認すべき検討ポイントは?
VMSの導入を成功させるためには、自社の要件に合った製品を慎重に選定する必要があります。単に多機能な製品を選ぶのではなく、「自社が解決したい課題は何か」「将来的にどのような運用を目指すのか」を明確にした上で、必要な機能を見極めることが重要です。
ここでは、VMS導入時の重要な検討ポイントについて解説します。
導入形態(オンプレミス/クラウド)の違いと選び方
VMSの導入形態には、自社内にサーバーを設置するオンプレミス型と、インターネット経由でサービスを利用するクラウド型があります。
オンプレミス型はカスタマイズ性に優れ、閉域網での運用により高いセキュリティを確保できる点がメリットです。一方、クラウド型は初期費用を抑えられ、メンテナンスの手間がかからない点がメリットとなります。
複数拠点の一元管理や災害対策を重視するならクラウド型、機密情報を自社で厳格に管理したい場合はオンプレミス型を選ぶなど、自社のセキュリティポリシーや予算に応じて最適な形態を選択することが重要です。
システム連携や拡張性を考慮した導入判断
VMS選定時には、将来のカメラ増設や機能追加に柔軟に対応できるか、という拡張性が重要です。
異なるメーカーのカメラを混在させて利用できるか(ONVIF対応など)、また将来的に顔認証やナンバープレート認識といった高度なAI分析機能を追加できるかを確認しましょう。
さらに、既存の入退室管理システムや警報システムとAPI連携できれば、より高度なセキュリティ体制を構築できます。そのため、ベンダーのサポート体制や、システムのアップデート実績も合わせて評価することをおすすめします。
VMS導入で企業の安心と業務効率を高めよう
VMSはもはや単なる録画システムではなく、企業のセキュリティ戦略全体を支える統合プラットフォームです。AIによるリアルタイムの脅威検知は予防的なセキュリティ対策を可能にし、堅牢な監査ログ機能はインシデント発生後の迅速な対応を実現します。
さらに、複数拠点の一括管理や業務の自動化は、これまで人的リソースに頼らざるを得なかった監視業務を大幅に効率化し、運用コストの削減にもつながります。
オンプレミスやクラウドといったVMSの柔軟な導入形態、既存システムとの連携を視野に入れた拡張性は、あらゆる企業規模や業種での導入を可能とする特徴です。
複雑化するセキュリティリスクに対応し、持続的な事業成長を目指すために、今こそVMSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

