かざすだけで決済や鍵の開錠ができたり、さまざまな生体情報を見える化したりと、生活を便利にしてくれるウェアラブルデバイス。今回は、そんなウェアラブルデバイスのビジネスにおける活用事例を紹介します。
ウェアラブルデバイスの種類やメリット・デメリットといった基本的な内容も解説しますので、ビジネスへのウェアラブルデバイス導入をお考えの方はぜひ参考にしてください。

ウェアラブルデバイスとは

ウェアラブルデバイスとは、手首、腕、脚、頭部など、身体に装着して使用する周辺機器デバイスの一種です。
代表的なものとして、スマートウォッチやスマートグラス、VRゴーグルなどが挙げられます。近年、私たちの生活にウェアラブルデバイスが急速に浸透した背景には、端末に搭載されるセンサーやSIMカードの小型化・軽量化が進んだこと、eSIMの登場などにより、デバイスを「持ち運ぶ」だけでなく、「身に着ける」ことが可能になったという技術的な要因があります。(eSIMについてはこちらの記事「eSIMとは? 特徴・仕組みや使い方など」をご参考ください)
さらに、インターネット回線の高速化、省電力な近距離無線通信技術の発達、クラウドの普及などにより、収集できるデータの質や量が改善され、実用レベルに達したことも一因と考えられます。

ウェアラブルデバイスが注目される背景

ウェアラブルデバイスが注目される背景として、幅広い業界の業務効率化や作業品質の向上に役立っていることが挙げられます。医療や介護をはじめ、製造や物流などウェアラブルデバイスが活用されている業界はさまざまです。

たとえば、医療・介護業界では健康管理や高齢者の見守りの需要が高まっていることで、ウェアラブルデバイスの活用が注目されています。製造業界や物流業界では、ウェアラブルデバイスで在庫や従業員の稼働状況などの最適化が可能です。

また、ITツールの活用でビジネスモデルを変革し、企業の競争力を高めるDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されていることも、ウェアラブルデバイスが注目される背景となっています。

どんな種類がある? ウェアラブルデバイスの代表例と装着形式

ウェアラブルデバイスにはさまざまな装着形式や形状があり、タイプによって搭載する主な機能も異なります。ここでは、ウェアラブルデバイスの装着形式ごとに、代表的なデバイスや機能を紹介します。

指・腕・手首に装着するウェアラブルデバイス

指や腕、手首に装着するウェアラブルデバイスとして、スマートウォッチやスマートリング、活動量計などが挙げられます。これらのデバイスでは、装着している人の心拍数や歩数、消費カロリー、睡眠の質などの健康データの取得が可能です。また、近年では電子決済や非接触決済に対応したウェアラブルデバイスも登場しています。メールやチャットなどの通知確認や音声アシスタントによるIoT機器の操作など、スマートフォンの補助的な役割を担うデバイスとしても活用されます。

目元・頭部に装着するウェアラブルデバイス

目元や頭部に装着するウェアラブルデバイスには、スマートグラスやAR・VRヘッドセットなどがあります。スマートグラスやARヘッドセットでは、ユーザーが見ている目の前の景色に視覚情報を追加することが可能です。ナビゲーションや業務マニュアルの表示などの用途で活用されます。VRヘッドセットでは、視界を覆うような没入感のあるディスプレイによって仮想空間を体験できます。

足元に装着するウェアラブルデバイス

足元に装着するウェアラブルデバイスには、インソール型にセンサーを内蔵したスマートシューズや、靴に取り付けるタイプのデバイスなどがあります。スマートシューズでは、歩行データの測定やランニングフォームの解析などが可能です。また、健康管理や位置情報の把握にもスマートシューズを活用できます。靴に取り付けるタイプでは、位置センサーと専用のアプリケーション、振動機能などで視覚障がい者の歩行をサポートするデバイスなどが登場しています。

そのほかのウェアラブルデバイス

そのほかのウェアラブルデバイスで代表的なものは、衣服にセンサーが組み込まれたスマートウェアや、胸ポケットやベルトなどに装着して使えるボディカメラなどです。

スマートウェアには着ている人の動きや位置、心拍数などを検知するセンサーが搭載されていて、工場の安全対策や作業の効率化に役立ちます。ボディカメラは小型のカメラで、目の前の人との会話や手元の作業などの録音・録画が可能です。

以下の記事でもボディカメラについて詳しく解説しています。
ボディカメラとは? 業務効率化と安全性向上を実現するポイント


ウェアラブルデバイスを導入するメリット

ここでは、ビジネスシーンでウェアラブルデバイスを導入するメリットを解説します。主なメリットは以下の2つです。

人手不足の解消

ウェアラブルデバイスを導入する1つのメリットは、人手不足の解消です。
例えば、習熟度の低い人員の教育をウェアラブルデバイスでサポートすることにより、トレーニング期間を短縮できます。また、遠隔での作業支援がやりやすくなるため、現地には限られた人員で向かい、必要に応じて遠隔地の人員へ作業支援を求めるといった柔軟な対応が可能になります。
また、ウェアラブルデバイスを通じて言語を自動翻訳したりテキスト変換したりすることで、外国人労働者や聴覚障害者など言語によるコミュニケーションが難しい作業者とも意思疎通が図りやすくなり、人手不足解消が見込めます。

安全性の向上

ウェアラブルデバイスをビジネスの現場で導入するもう1つのメリットは、事故防止です。
ウェアラブルデバイスを使えば、作業現場における危険箇所を視覚的に伝えたり、長距離ドライバーに眠気警告を発したりといった警戒を促せます。また、ハンズフリーで通話や手順書の確認が可能になるため、両手がふさがらず、事故のリスクを低減できるうえに作業効率の向上にもつながります。

ウェアラブルデバイスのデメリットや注意点

ウェアラブルデバイスの主なデメリットは、バッテリー駆動時間に限りがあるため定期的な充電が必要であることと、デバイスによっては水に弱いため取り扱いに注意が必要であることです。
ウェアラブルデバイスは常時身に着けていられるのがメリットでもありますが、だからこそ充電するタイミングには気を付けなければいけません。
いざというときにバッテリー切れで使えないということがないよう、作業時間外は必ず充電するなどの管理が必要です。

ビジネスにおけるウェアラブルデバイスの活用例

ここからは、ビジネスにおけるウェアラブルデバイスの活用例を業種別に紹介します。

製造業

製造業では、主にジョブトレーニングや作業支援にウェアラブルデバイスが活用されています。
スマートグラスやゴーグルタイプのウェアラブルデバイスに作業手順書を表示して、作業者の知識や経験の不足を補うとともに、両手がふさがるリスクや手順書の確認不足によるミスを予防します。
また、現場の作業者がカメラ付きのヘルメットを装着し、撮影した作業状況を熟練作業者にリアルタイムで共有し、遠隔で作業支援を受けるという活用例もあります。

医療・介護

医療や介護の分野では、センサー付きの衣服などの形状をしたウェアラブルデバイスを患者に装着してもらい、身体情報を常時測定することで異変をリアルタイムで察知する、といった活用例があります。
またその他に、糖尿病患者に対して、ウェアラブルデバイスで得たデータを活用し、健康管理を支援する取り組みが行われています。

倉庫・物流

倉庫など物流の現場では、ピッキング作業に必要な情報を管理するタブレットやハンディターミナルをウェアラブルデバイスにすることで、置き忘れや落下といった事故を防止しています。作業中に手がふさがらないため、リスク回避だけでなく作業の効率化も実現した事例です。

ウェアラブルデバイス導入の進め方

企業でウェアラブルデバイスを導入する際は、事前の準備や適切なデバイスの選定、トライアルなどが重要です。ここでは、ウェアラブルデバイス導入の進め方を解説します。

導入前の準備と現場ヒアリングのポイント

ウェアラブルデバイスの導入前の準備として、まずは現場の状況やデバイス導入によって解決したい課題を把握する必要があります。例えば、製造業などで従業員が一人で作業する際の安全管理や緊急時の通知、接客業でのクレーム対応の記録など、ウェアラブルデバイスを導入する目的を明確化しましょう。

また、ヒアリングを行う際は現場で起きている課題の把握だけでなく、心拍数などのデータを取得することに対するプライバシーの配慮もポイントです。

選定・トライアル・定着化のステップ

次に、ウェアラブルデバイスで解決したい課題や現場の環境に応じて、適切なデバイスを選定します。求める機能やスペック、装着箇所、導入や運用にかかるコストなどを考慮して、自社に合ったウェアラブルデバイスを選びましょう。

また、本格導入前にトライアルを行うことも重要です。業務の一部で試験的にウェアラブルデバイスを導入し、期待通りのデータを取得できるか、業務改善の効果が得られるかを確認することが推奨されます。

さらに、導入したウェアラブルデバイスが適切に活用されるように、マニュアルの整備や利用方法の研修で定着化を図りましょう。

導入後に注意すべき通信・セキュリティのリスクと対策

ウェアラブルデバイスの多くはネットワークを通じた通信機能が備わっているため、セキュリティリスクへの対応が必須です。ここでは、導入後に注意すべき通信・セキュリティのリスクと対策を解説します。

ネットワーク負荷と通信帯域の最適化

ウェアラブルデバイスで取得したデータをネットワークを通じて送受信する際は、ネットワークの負荷や通信帯域の最適化が重要です。特に、数多くのウェアラブルデバイスを同時に利用する場合や、映像など容量の大きなデータを扱う場合は、ネットワークに負荷がかかり通信の遅延やエラーが生じるリスクがあります。

自社専用のネットワークを構築して通信速度や安定性を向上させたり、取得するデータの内容や送受信の頻度を見直したりする対策を行いましょう。

セキュリティリスクへの備えと対応策

ウェアラブルデバイスを業務で使用する場合、セキュリティリスクへの備えも必要です。ウェアラブルデバイスを接続するネットワークへの不正アクセスやハッキングを防ぐためには、セキュアで安定した回線の導入が効果的です。

また、ウェアラブルデバイスを適切に利用するためのガイドラインを作成し、社内で共有することもセキュリティ対策につながります。デバイスの適切な使用方法の研修や、紛失を防ぐための管理体制の整備などを行いましょう。

ウェアラブルデバイスに関するよくある質問

ここでは、ウェアラブルデバイスの導入に必要な通信回線やSIMカード・eSIMの必要性、取得したデータの活用方法に関する質問に回答します。

ウェアラブルデバイスの導入にはどのような通信回線が必要ですか?

ウェアラブルデバイスを導入する際は、セキュリティ性が高く、低コストで運用できる通信回線が必要です。自社専用のネットワークを構築できるサービスを利用すると、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃のリスクを低減できます。

業務で使う場合、SIMカードやeSIMは必須ですか?

業務でウェアラブルデバイスを使う場合、通信容量や頻度が増えるため、IoT向けのSIMカードやeSIMの導入が推奨されます。法人向けのデータ用SIMなら、複数台のウェアラブルデバイスを使用する場合でも低コストかつ安全な運用が可能です。

ウェアラブルデバイスから得られるデータはどのように活用できますか?

ウェアラブルデバイスで取得したデータは、従業員の安全管理や業務の効率化、作業内容の記録などに活用できます。位置情報や生体情報、映像、音声などのデータを取得し、業務の改善や品質向上に役立てることが可能です。

ビジネスでウェアラブルデバイスを活用する際のポイント

ウェアラブルデバイスをビジネスで活用する際は、通信障害やセキュリティ面に注意を払う必要があります。
ウェアラブルデバイスを導入すれば扱うデータ量が増えるため、ネットワークの輻輳が発生するリスクが高まります。また、データをネットワークで扱えば情報セキュリティリスクが高まるため、その対策も必要です。
ウェアラブルデバイスを導入する際は、扱うデータ量に対してネットワークの帯域幅は十分かどうか、情報セキュリティリスク対策は万全かどうかなどにも気を配り、業務に影響が出ないよう注意しましょう。
ウェアラブルデバイスの種類やメリット・デメリットといった概要から、各分野における活用例までをご紹介しました。
ウェアラブルデバイスをビジネスに活用する際は、ネットワークの輻輳にも注意しましょう。ネットワークの輻輳に関する詳細は、下記記事やカテゴリをそれぞれご覧ください。

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参考:IPA「IoT開発におけるセキュリティ設計の手引き