商店街のDXにおける課題と成功事例を紹介

ビジネスをデジタル化することで根本から変革する取り組みであるDX。近年、新型コロナウイルスの影響もあり、商店街を活性化するためにDXを取り入れようという動きがあります。

そこでこの記事では、商店街にDXが求められる背景や課題について解説するとともに、商店街にDXを活用する事例を紹介します。商店街活性化のための方法を模索している方やビジネスのヒントをお探しの方はぜひ参考にしてください。

商店街にDXが求められる背景

商店街にDXが求められる背景には、空き店舗率の高さや新型コロナウイルスの影響などがあります。中小企業庁の令和3年度「商店街実態調査」によると、空き店舗率が10%以上の商店街は全体の43.3%。そして空き店舗の今後の見通しは、「増加する」と回答した商店街が全体の49.9%を占めていました。
さらに新型コロナウイルスの影響などもあり、近年の消費行動はオンラインへ移行し始めています。このことにより、実店舗での販売が主であった商店街の店舗は、時代に合わせてビジネスの形態を変える必要に迫られています。

こうした背景がある中で、商店街DXにより顧客のニーズに合わせた商品提供や購買体験を実現することが、集客力の強化につながる手法として注目されているのです。商店街のDXは、単なるIT化ではありません。実店舗とオンラインショップを融合させ顧客満足度を高めることで、商店街の再生につなげる重要な施策と言えるでしょう。

商店街DXの課題

商店街DXを実現するためには、いくつかの課題が存在します。

まず一つ目の課題は、DX人材の確保です。小規模な商店街では、DXに必要な知識や経験を持った人材を確保することが難しく、そのためDXの導入が遅れたり、失敗したりすることがあります。また、DX人材を雇用するための経費や費用がかさむため、負担が大きくなる点も課題です。

二つ目は、DXのための費用の確保が難しいことです。DXの取り組みは、ハードウェアやソフトウェアの導入、データ活用のための人材教育など多岐にわたるため、大きな費用が必要です。しかし商店街の中には、経営状況が厳しい店舗も多く、DXに必要な費用を捻出することが難しい場合があります。

これらの課題をクリアするためには、商店街が自治体や地域団体、そしてベンダー企業と協力し、積極的に取り組んでいくことが必要です。

商店街DXの事例

最後に、商店街DXの実際の事例を紹介しましょう。

東京都中野区

東京都中野区の商店街では、キャッシュレス化に対応していなかった店舗のキャッシュレス対応を推進し、最終的に商店街加盟店舗の85%以上でキャッシュレス決済が可能になりました。この動きに伴って、さらにLINEなどのSNSも活用して商店街内のコミュニケーション活性化を図ろうといった機運も生まれるなどの効果が広がっているといいます。

スムーズな導入のために、決済システム提供元の協力も取り付け、導入店舗向けの勉強会なども実施しました。

東京都三鷹市

東京都三鷹市の商店街では、商店街の再生にはプラットフォームの整備が必要と考え、500店舗以上の情報を登録した地域情報アプリを構築しました。

アプリでは、商店街の情報と所属する店舗の連絡先、ホームページURLなどを地図情報と共に掲載するほか、観光スポットの情報なども発信しています。日本語以外に、英語、中国語、韓国語など多言語に対応し、コロナ後のインバウンド需要に備えています。

神奈川県藤沢市

神奈川県藤沢市の商店街では、商店街通りや店内の360度パノラマ写真を掲載し、オンライン商店街ツアーを可能にしました。

商店街や、商店街の加盟店舗の外観・店内・取扱商品などを、オンラインで確認することができます。

岡山県表町

岡山県表町の商店街では、オンラインを通して顧客とコミュニケーションを図ることを目的として、ECサイト構築のための勉強会を実施し、参加店舗によるWebサイトの作成や運営に取り組みました。

期間限定で有志店舗によるECサイトを公開したほか、オンラインイベントの開催、SNSアカウント運用なども行っています。

長崎県長崎市

長崎県長崎市の商店街では、LINE公式アカウントを開設し、商店街利用客向けの情報発信を行っています。

発信内容は、商店街をお得に利用するための情報に加え、新型コロナウイルス感染者が出た場合の迅速な情報提供など。LINE公式アカウントに参加している飲食店は、自店舗のPRツールとしても利用できます。

商店街のDXは、現代の消費者ニーズに合わせた販売方法や、効率的な店舗運営に必要不可欠です。しかし、DXに取り組むためには、DX人材の確保や費用の確保といった課題があります。そこで、成功事例から学び、地域の特性を生かしたオリジナルなDX戦略を立てることが求められます。

商店街DXを進めることで、空き店舗の減少や地域活性化につながるなど、さまざまなメリットがあります。地域の方々と協力して、商店街のDXを実現しましょう。