シェアリングエコノミーとは? 知っておきたい基礎知識や事例など

2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標「SDGs」が世界的な動きを見せるなか、限りある資源を有効活用するための取り組みとして注目が集まる「シェアリングエコノミー」。その市場規模は2025年には37兆円まで拡大すると予想されていて、短期間で大きな経済効果を生み出す新しいビジネスモデルとして新規参入する企業が増えています。
今回の記事では、シェアリングエコノミーについて知りたいという方のために、基礎知識やメリット、デメリットについて詳しく解説していきます。

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは、ひと言で説明すると「使っていないモノやサービスを必要とする人に貸し出すこと」です。

企業が取得したのに使っていない遊休資産だけでなく、個人が所有して使っていないものや使用頻度の低いものなどを、必要とする人と共有することで新しい価値を生み出すというもの。日本語では「共有経済」といわれ、従来の「消費経済」に対する新しい経済モデルとして注目されています。

シェアリングエコノミーが広がってきた背景

2000年代にアメリカで発祥したシェアリングエコノミー。誕生のひとつのきっかけとなったのが2008年にリーマンショックから始まった世界金融危機による世界的な不景気で、ITの聖地と言われるシリコンバレーを中心に全米、世界へと広がっていきました。

このシェアリングエコノミーが普及していった背景には、「インターネットやモバイルの普及」「技術の進歩」「人々の価値観の変化」という3つの要素が関係していると言われています。

例えば、1990年代ごろから一般にも普及しはじめたインターネット。SNSを使えば誰もが自由につながることができるようになり、ITを活用して不特定多数を対象としたビジネスを展開する企業も増えました。これに加え、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末や、高速通信サービス、決済システムなどの技術が普及したことで、時間や場所に縛られることなく、より手軽に人と人、企業と人とがつながることが可能となり、ここに目をつけたIT企業が貸し出し可能なアセットとそれを必要とする人とをマッチングさせるプラットフォームを提供し始めたことでシェアリングエコノミーが広がる土台が出来上がったと言われています。

また、リーマンショックを発端とする世界的な不景気を経験したことにより、私たち自身の価値観が大きく変化したことも、シェアリングエコノミー普及の大きな要因のひとつです。

シェアリングエコノミーは、物流業界の課題解決にも貢献する可能性があります。下記記事では、倉庫や輸送のシェアリングなど、具体的なシェアリングの事例について解説しています。物流業界におけるシェアリングの詳細について興味がある方は、こちらの記事もご覧ください。
物流業界におけるシェアリングとは?

シェアリングエコノミーが注目されている理由

シェアリングエコノミーが注目される理由の一つに、資源を有効活用できる点が挙げられます。

特に近年はSDGsの世界的な広がりを受け、消費中心の経済活動から限りある資源を有効活用することに価値観がシフトし、必要なものを見極めて最低限のものだけを所有するシンプルでミニマルな暮らしを好む人も増えています。シェアリングエコノミーは、このような新しい時代の価値観に見事に合致したというわけです。

この価値観は、新型コロナの影響でより強まったという見方もあります。シェアリングエコノミーは、本業として取り組むほかに、副業として利用する方法があります。新型コロナの影響で本業や事業の存続に危機感を持った人の中には、空いた時間に所有する資産を提供して、リスクを軽減しようと考え始めた人も少なくありません。

そんなシェアリングエコノミーの市場規模は、総務省の「平成28年版情報通信白書」によれば、2025年に約3350億ドルにまで拡大することが予測されています。日本政府もシェアリングエコノミーに期待を寄せており、内閣官房IT総合戦略室内に「シェアリングエコノミー促進室」を設置するなどしています。

シェアリングエコノミーのメリット・デメリット

シェアリングエコノミーは今後も市場規模の拡大が見込まれていますが、新たにこの市場へ参入する際には、そのメリットとデメリットを正しく理解しておくことが大切です。

シェアリングエコノミーのメリット

シェアリングエコノミーのメリットとしては、低コストでビジネスを立ち上げられるということが挙げられます。シェアリングエコノミーは基本的に既にある遊休資産を活用してビジネスを展開していくため、ゼロから起業をするのに比べて初期費用や運用費用を大きく抑えることが可能です。

また、使う側のメリットとしては、自分で資産を抱えたり事前に準備したりせずに、ちょっと使ってみるということが出来るため、時間とお金の節約になることが挙げられます。

シェアリングエコノミーのデメリット

デメリットとしては、トラブルのリスクや法整備の問題などが挙げられます。シェアリングエコノミーは基本的に不特定多数の人を相手にモノやサービスを貸し出すため、信頼できる相手かどうかの見極めが難しく、トラブルなどのリスクがどうしても高くなってしまいます。成長途中のビジネスモデルであるため法整備が追いついておらず、運用の難易度が高いと感じる方もいるでしょう。

また、使う側のデメリットとしては、提供されているモノやサービスのクオリティが判断しづらいという点が挙げられます。

これらに対しIoT技術を活用することで、デメリットを解消しサービス向上を図ることができます。例えば施設や資産にIoTセンサーを付け備品などを管理することや、スマホを介した鍵の受け渡しなどが可能です。運用の際に感じたデメリットはIoT技術の活用方法次第で解決する可能性があるため、一度専門家に相談してみるのもよいでしょう。

シェアリングエコノミーの種類

シェアリングエコノミーはありとあらゆるものが共有の対象となり得ますが、その種類は大きく以下の5つに分類することができます。

モノのシェア

洋服などのレンタル、不用品の売買などが該当します。
特別なイベントなどで一度しか着ない服を手軽に借りられるサービスもあり、浪費の軽減に役立つ効果が期待されます。同様に、不用品の売買プラットフォームを利用することでリユースが促進され、新たな商品の生産に伴う環境への負荷が軽減されるでしょう。

移動のシェア

車や自転車などの乗り物をシェアすることや、食べ物や品物などを運搬することが該当します。
移動のシェアは、都市部や地域コミュニティにおいて交通の効率性やコストの削減、環境への配慮が求められる中で、ますます注目を集めています。個々の利便性向上だけでなく、持続可能な都市開発や交通インフラの最適化にも寄与するでしょう。

空間のシェア

農地や駐車場、宿泊のための部屋、会議室といったスペースが該当します。
さまざまな空間を効果的に共有することで、限られた空間を最大限に活かして更なる価値を生み出す新しいビジネスモデルが生まれています。

例えば農地のシェアリングでは、共同で畑を耕し、収穫を共有することで、農業の技術や資源を効果的に活用できます。また、消費者と生産者が直接つながり、地元産の食材にアクセスできることから、地産地消の推進にも寄与しています。

スキルのシェア

原稿執筆、家事、育児など、対面型または非対面型のスキルが該当します。
個々人が持つスキルを活かし、お互いにサポートし合う新しい形態の仕事や活動が生まれています。スキルのシェアは、個人や企業が必要なスキルを柔軟に取り入れる手段として、効率性や専門性の向上をもたらしています。

お金のシェア

ある目標を達成するためにお金を募るクラウドファンディングなどが該当します。
個人やプロジェクトが資金を集める手段として広く利用され、新しいアイディアや事業の実現に道を開いています。お金のシェアは、資金調達の方法だけでなく、コミュニティや支援者とのつながりを強化し、共感と協力に基づいた持続可能なプロジェクトを生み出しています。

日本国内におけるシェアリングエコノミーの事例

モノ、移動、空間、スキル、お金など、シェアリングエコノミーには様々な種類がありますが、日本国内では実際にどのようなシェアリングエコノミーの事例があるのでしょうか。

例えば、近年特に認知度が高くなっているのが、食べ物の配達「フードデリバリー」です。これは、「移動のシェア」に該当するもので、この他にも使用頻度の低い車を貸し出す「カーシェアリング」などもこれに該当します。

また、民泊やシェアオフィスなどは「空間のシェア」としてビジネス展開する企業が増えていますし、不用品の売買を行うフリマサイトや1ヶ月定額で洋服をレンタルできるサービスなどは「モノのシェア」として市場が拡大しています。

「スキルのシェア」では、オンラインプラットフォームを通じてプロのスキルや知識を提供し、学びたい人々が必要なスキルを手に入れることができます。これは、専門的な分野での学びやキャリアの発展に役立ちます。

一方、「お金のシェア」は、資金調達の新しい手段として、前述したクラウドファンディングが例に挙げられます。アイディアやプロジェクトに共感する人々が、小額ずつ資金を提供することで、新しい事業や社会的なプロジェクトの実現が可能になります。これにより、伝統的な銀行融資に頼らずして、多様なバックグラウンドを持つ起業家やクリエイターが資金を調達できます。

上記でご紹介した内容を参考にして、眠っている遊休資産をシェアリングエコノミーで有効活用してみてはいかがでしょうか。