IoTサービスを自社で展開したいと考えたとき、大きな助けになるのがIoTプラットフォームの存在です。IoTプラットフォームとはどのようなものなのか、その役割や種類、使いこなすためのポイントなどについて解説します。
IoTプラットフォームとは
IoTプラットフォームとは、ある企業がIoTを使ったシステムやサービスを構築する際に必要となる機能や処理を提供する基盤システムの総称です。
IoTプラットフォームには多種多様な規模や内容のものがあり、ベンダも製造業の会社、業務パッケージソフト会社、クラウド提供会社、データベース会社、通信会社などを中心に世界中に存在します。
基本的に、最近のIoTプラットフォームはIoTデバイス、アプリケーション、ソフトウェア開発ツール(SDK、API)、通信プロトコル、ネットワーク、セキュリティ機能などをクラウドサービスと共に提供する形のものが多くなっています。
ただし、IoTで何を実現したいのかという目的、サービス内容、自社環境などによって、どんなベンダが提供する、どのようなIoTプラットフォームが適合しているのかという答えは違ってきます。
IoTプラットフォームの役割
「IoTサービス」を展開しようとする際、IoTプラットフォームはどのような役割を担うのでしょうか。主な役割を3つ挙げてみます。
各IoTデバイスの接続
センサを含む多数のIoTデバイスとの通信を確立し、管理します。APIやSDK、ドライバなどを用いてIoTデバイスをネットワークと接続し動作させることは、IoTプラットフォームの最も基本的な機能です。
また、接続=コネクティビティに加えて、IoTプラットフォームによってはデバイスに対して一括コマンドを送る、あるいはリモートアクセスするなどしてデバイスの登録、保守、監視などの管理を行うことも可能です。
データの収集と保存
IoTデバイスから送信されるデータを収集し保存します。多くのIoTサービスでは、膨大なデータを収集して保存する必要があるため、このこともIoTプラットフォームの重要な役割となります。
具体的には、クラウドサービスや外部システムと連携してセンサデータを収集し、必要な形でデータセンタやデータストアに保存・蓄積していきます。汎用的なストレージだけではなく、NoSQL、負荷分散型のデータベース、全文検索エンジンなども利用されます。また、生データにデバイスごとの管理番号などの属性情報を付与して保存するようなサービスも提供されています。
データの解析・処理
収集・保存したデータを解析・処理するためのソフトウェアやハードウェアの提供もまた、IoTプラットフォームの役割の一つです。IoTをサービス化するにはこれも欠かせない機能です。
ビッグデータと呼ばれるような膨大なデータを効率的に処理して解析結果を出力するには、並列コンピューティングなどの技術や高速な計算機資源が必要になることもあります。また、解析に機械学習などのAI技術を利用できるサービスも現れています。
これらの3つの役割のポイントは、「サービス化」というところにあります。「IoTサービス」によって自社の強みを強化するために、IoTプラットフォームを活用するのだ、というポイントを忘れないようにしましょう。
IoTプラットフォームの種類
IoTプラットフォームの中でも産業用途に特化したものを産業用IoTプラットフォームと呼びます。産業用IoTプラットフォームは大きく次の4つの種類に分けられます。
垂直機能フルカバレッジ型
IoTソリューションの構築に関係するすべてのものを提供するタイプのIoTプラットフォームです。開発・導入のためのコンサルティングから始まり、基礎アプリケーション、応用アプリケーション、クラウドサービス、ネットワーク、センサ類、運用支援に至るまでをソリューションとして用意し、提供します。こうした形態のIoTプラットフォームは、国内大手SIerが主体となって提供しています。
水平業種フルカバレッジ型
業界に縛られられず、あらゆる業種に対して提供するタイプのIoTプラットフォームです。その基盤上に、SIerやユーザ企業がIoTシステムを開発またはカスタマイズして運用します。汎用性を有する代わりに、細かい部分は独自にシステムを構築して対応することになります。
垂直基本機能提供型
目的や機能を絞った比較的小規模なIoTプラットフォームです。遠隔監視システム、予防保全システムなどのためのプラットフォームを一部のベンダが提供しています。今後、増加する可能性があるでしょう。
垂直アプリ提供型
垂直機能フルカバレッジ型から、開発・導入、運用支援などのコンサルティング業務を差し引いた各種プロセスやリソースを提供するIoTプラットフォームです。外資系の大手製造業者や、アプリケーション開発などを手掛けるサードパーティーが提供する場合によく見られます。
IoTプラットフォームを使いこなすには
IoTプラットフォームを使いこなすには、まず選定段階で十分な検討を行う必要があります。自社の目的と目的を実現するための要件を明確化し、どのような機能を持つIoTプラットフォームが適しているのか、費用対効果も含めて考えていきましょう。その際、複数のベンダに相談して情報を集め、徐々に条件を絞り込んでいく作業を行うことも役に立つはずです。IoTという言葉だけが先行していく中で、複数のベンダに相談することで自分たちが本当に何を実現したいのかという気づきが生まれることでしょう。
中小企業の場合は、垂直基本機能提供型のIoTプラットフォームを利用してスモールスタートさせる方法をとるケースが多いようです。ただし、その場合には機能以外にも接続性、セキュリティ、拡張性などに着目して比較検討することが重要です。スモールスタートしたとしても導入に失敗してしまえば大きな痛手を被ることになります。現在だけではなく持続的に利用することを想定し、将来の展望を見据えた選択を心がけましょう。
IoTプラットフォームを提供するベンダの数は、今後さらに増えていくものと考えられます。同時に、ベンダ同士でもデータ・フォーマットやプロトコルを揃える動きも出てきています。それによって、安価なベンダでスモールスタートした後に、別のベンダに乗り換えて大きく展開という戦略をとることも可能になってくるのです。さまざまなIoTプラットフォームについてよく研究し、自社に最適なプラットフォームを選んで活用することが「IoTサービス」を成功させる重要なポイントとなっていくでしょう。