仮想通貨であるビットコインのコア技術として知られるブロックチェーン技術を、IoTに活用する動きが活発化しています。ブロックチェーンとIoTとはどのように結び付くのでしょうか。ブロックチェーンによって広がろうとしているIoTの可能性について解説します。
ブロックチェーンはIoTに有効?
IoTにとってブロックチェーンは相性の良い技術と言われています。それぞれの言葉の意味と、両者を組み合わせると何が実現できるのかを説明します。
IoTとは
IoT(Internet of Things)とは、モノがインターネットなどのネットワークとつながり、AI、ビッグデータなどの技術と組み合わさることで、センサなどを備えた端末から得たデータを活用して自動制御、遠隔計測・監視、自動認識などを行う技術です。IoTは工場などの生産現場や医療・ヘルスケアの分野で実用化が進んでいる他、IoT家電なども増えており、身近な存在になっています。
ブロックチェーンとは
ブロックチェーンとは、暗号技術と複数のコンピュータによる分散型ネットワークを用いて、取引情報などのデータをブロックごとにまとめ、コンピュータ同士で検証し合いながら正しい記録をチェーンのようにつないで記録する手法です。二者間の取引を効率的に、永久に記録できる「オープンな分散型台帳」とも言われます。ブロックチェーンはビットコインなどの仮想通貨システムを支える中核技術として知られています。
IoTとブロックチェーンを組み合わせる意義
では、IoTとブロックチェーンという2つの技術を組み合わせると、どのような効果が生まれるのでしょうか。
まずIoTが普及し、高度なサービスが登場するにつれて課題となると予想されるのが、従来のクライアント・サーバ型の中央集権型ITシステムの技術的弱点です。大量のIoT端末から膨大なデータが送信されてトラフィックが増加すると、通信回線やサーバに多くの負荷がかかります。そうなれば多くのIoTシステムにとって重要なリアルタイム性が損なわれ、場合によっては障害によって通信の継続性が失われるリスクが生じます。
また、IoTのような中央集権型のITシステムはシステムが複雑化するほど管理が難しくなり、コストもかかる傾向があります。さらにサイバー攻撃などに対しては、中央にきわめて堅牢なセキュリティ対策を講じる必要があります。
それに対し、分散型システムであるブロックチェーンはトラフィックが集中しないため負荷を軽減でき、たとえ一部でトラブルが起きても簡単にはサービスが停止しない耐障害性を備えています。また、中央にサーバが存在するわけではないのでサーバの構築や設定といった作業が不要で、IoT端末などの管理もネットワークの参加者がそれぞれで行えばよいという状況を作れます。セキュリティにおいても、ブロックチェーンは参加者が分散してデータを保持しているため攻撃リスクを軽減することが可能とされています。IoTとの組み合わせにおいては、データを暗号化と分散管理によってデータの改ざんが困難になること、透明性が高いことがとくに注目されています。
もちろん、ブロックチェーンに全く欠点がないというわけではありません。万一、システム内に何らかのバグが生じると、すべてのブロックを修正するのは難しく、システム全体に致命的な影響が及ぶリスクがあります。また、データチェックも中央集権型システムであれば集中的に行なえますが、ブロックチェーンではブロックごとに行う必要があり、メンテナンスに時間がかかります。
それでも高い拡張性、相互運用性、耐障害性といった要件が求められるIoTシステムにとって、ノード分散による可用性の高さ、導入コストの安さといったブロックチェーンの特徴は非常に魅力的です。しかも、IoTとブロックチェーンを組み合わせると参加者間で台帳を共有することになるのでデータ形式やアクセス方式が標準化され、契約の条件確認や履行を自動化するスマートコントラクトの共有によってルールの統一化が図られるというメリットも得られます。
IoTとブロックチェーンの組み合わせ事例
IoTとブロックチェーンの組み合わせは、国内外ですでにいくつかの活用事例が存在します。中でも目立つのは、IoTシステムのセキュリティ対策のためにブロックチェーン技術を導入するケースです。
たとえばIoT端末や端末が取得したデータの真正性を、改ざんを困難にするブロックチェーン技術を用いて確保するというIoT向けのセキュリティサービスが登場しています。サービスの用途として想定されるのは、オフィスなどの入退室用の顔認証システム、ビル設備管理や産業用制御装置関連のIoT端末の管理、自動車の鍵の管理などです。
特定のIoTサービスやIoT端末とブロックチェーンを組み合わせて提供する事例も見られます。具体的にはスマートロック、電気自動車の充電、腕時計型医療用IoTデバイス、サプライチェーンにおけるトレーサビリティシステムなどが挙げられます。
社有車の管理などは既にブロックチェーンをベースにした管理システムの運用が試験的に始まっています。営業車などの社有車の管理は、車両の整備メンテナンスの管理や、利用する際に物理的に車の鍵を受け渡ししなければなりませんでした。そこでブロックチェーンを利用したデジタルキーを使い、メンテナンスや運行管理、鍵の受け渡しなどをセキュアな環境で実現しているのです。
ブロックチェーンはIoTの可能性を広げる技術の一つとして期待されています。今後さらに多様なIoTとブロックチェーンの組み合わせが生まれていくでしょう。その動向に注目しておきましょう。