ITを駆使した先端技術のなかでも、「IoT」や「IoE」が世界的に注目を集め、利用されています。ここではIoTとIoEの違いと、IoEがビジネスに与える影響について解説します。
IoEの概念
IoEは「Internet of Everything(すべてのインターネット)」の略で、いろいろなモノやサービスがインターネットにつながることを意味する言葉です。インターネットの利便性をさらに生活の中に落とし込み、生活の質と満足度を向上させるという意味を含んでいます。
IoEの前に「IoT」という概念が登場していますが、IoTはモノがインターネットにつながる段階であるのに対し、IoEはそれ以上のモノやサービスがネットと通じる、IoTの上位互換として考えられています。
IoEとIoTの違い
IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、白物家電や衣類といった「モノ」がインターネットに接続し、相互に制御し合ってより良いサービスを作り上げ、デジタル社会を実現するという意味があります。
IoEは「IoT」「IoD」「IoH」の3つの定義をあわせたもので、IoDは「Internet of Digital(デジタルのインターネット)」、パソコンやスマートフォンなどのデジタル端末、サーバなどの機器類がネットにつながることを指します。IoHは「Internet of Human(ヒトのインターネット)」の略称で、モノだけではなくヒトが直接インターネットに接続することができる未来を表しています。
IoTだけではモノがインターネットにつながるだけにとどまりますが、IoDやIoHを併せることによって多くの情報が集約・分析・活用され、よりリアルでタイムリーに社会がつながっていきます。
IoEがビジネスにもたらす変化
IoEがビジネスにもたらす変化は、行政・医療・農業・小売業など多岐にわたります。あらゆる経済活動や社会活動をスムーズにしてくれるものがモバイル通信やインターネットの力で、IoEは人の手を介さない連続したシステムによって人件費の削減や生産性の向上を実現していくのです。
行政は、IoEによってあらゆる手続きがスマート化します。書類の申請・取り寄せ・修正や変更の手続きも人の手を介さずにワンストップで行えます。有権者自らオンラインで選挙活動に参加し、自宅からの投票ができるようになるなど、将来的にネットを活用した選挙への直接参加が可能になると考えられています。
医療分野ではすでにコロナウイルスの拡大によって日本でも実施され始めたオンライン診療をはじめ、インターネットを駆使した新たな診療形態が広まっていくと考えられています。病院側は薬剤や医療機器に関する情報をリアルタイムに管理でき、患者情報をあらゆる端末から集約し、データベースとして利用できるなど、業務の効率化も期待できます。さらにIoTデバイスに取り付けたセンサーによって体温や脈拍を計測し、症状の経過を診ながら最適な治療が提案されるほか、難症例はクラウドで共有され、最適な治療法や治療計画を複数の専門医が医療者専用のSNSやテレビ会議システムを使って協働で立案するなど、ビッグデータ、インターネット、クラウドを活用した取り組みも浸透していくことでしょう。
農業分野はIoE化によって農作物の育成管理をデジタル化し、人の手を介していた作業もロボットを使用して的確に行う「スマート農業」の普及が始まっています。屋外では無人で自動運転するロボットの耕作・田植えやドローンによる農薬散布、ドローン+8Kカメラによる育成状況の把握などが次々と実用化しています。自然環境下での作物の育成は天候に左右されますが、屋内で作物を人工の光と水やり、施肥によって管理し、作物の効率よい成長を促す植物工場も増えてきています。植物工場では、外部からの病原菌の流入も防げますから、農薬をほとんど使用しない安心安全な野菜として安定した出荷が可能になります。最近は、育成する工場から野菜を収穫し、そのまま隣接する加工する工場で加工し、付加価値を高めて出荷するという一気通貫の生産・流通も行われています。
オンライン店舗を含む小売業にもIoEの導入が進められています。販売者側にとっては商品の在庫管理や配送、、業務の手間を省いた効率化が可能になり、防犯用のネットワークカメラを設置した無人店舗の導入で、夜間の犯罪を防ぐ効果も得られます。顧客側にとっては電子決済やオンライン決済サービスの導入によって現金決済が不要になり、スマートな買い物ができるようになります。そして、IoEの導入は効率化やスマート化だけでなく、顧客の購入データを細分化、集約化することで、買ったもの、手にとったが(試着までしたが)買わなかったもの、手にもとらなかったもの、といった販売の詳細分析ができるようになります。顧客にとっても、口コミの投稿や閲覧、仮想試着サービスやおすすめ商品の提案が受けられるなど、新たな買い物体験が出来るようになるのです。
上記以外の業種についても、顧客や利用者の情報を活用して今まで以上につくり手側とリアルタイムで情報共有が行えるようになり、より良いサービスや商品の提供が行えるようになるのです。作業を一部ロボット化して業務の安全性を高めたり、人件費を削減して作業を効率化したりと、業種・業態を問わずIoE技術を導入することで、「的確なタイミング」で「最適なサービス(モノ)」を「適切な顧客に」提供するという、新たな時代に即したサービスが可能になるでしょう。
IoEはIoTの上位にある概念で、すべてのモノやヒトがネットでつながる未来を表しています。5Gを筆頭に新たな通信技術を使い複雑かつ手間のかかる業務が効率化すれば、ビジネスにも大きな変化をもたらすでしょう。すでに世界中でIoT化が進み、IoEの実現へと着実に進み始めています。ぜひあなたのビジネスにもIoEの概念を取り入れてみませんか?