ビジネスシーンで急速に普及している生成AIは、多くの企業に新たな可能性をもたらしています。しかし、同時にさまざまなリスクも内包しています。生成AIを活用する際には、デメリットやリスクについても理解しておくことが重要です。
この記事では、企業が生成AIを活用する際に把握しておくべきデメリットについて、具体例を交えながら詳しく解説します。
データの取り扱いに関する生成AIのデメリット
生成AIの利用には、データの取り扱いに関連するいくつかのリスクがあります。企業はこれらのリスクを認識し、適切に対処することが求められます。
情報漏洩のリスク
生成AIを利用する際、企業の機密情報や個人情報が意図せず外部に漏洩するリスクがあります。例えば、一般公開されている生成AIサービスに機密情報を入力してしまうと、その情報が第三者に閲覧される可能性があります。
AIモデルの学習プロセスにおいて、入力されたデータが学習データとして取り込まれる可能性もあるからです。もしも機密情報を生成AIが学習してしまうと、後続のユーザーがその情報にアクセスできる状況が生まれかねません。
フェイク情報とハルシネーションのリスク
生成AIは時として、事実と異なる情報(フェイク情報)や、存在しない情報を事実のように生成する現象(ハルシネーション)を引き起こすことがあります。
例えば、製品仕様や顧客データに関する質問に対して、AIが誤った情報や存在しない情報を提供してしまう可能性が考えられるでしょう。このような不正確な情報に基づいて意思決定を行えば、企業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
倫理的・法的な生成AIのデメリット
生成AIの利用には、倫理的・法的な観点からも注意が必要です。
著作権侵害の可能性
生成AIが作成したテキストや画像が既存の著作物に類似している場合、著作権侵害の問題が生じる可能性があります。また、AIが学習データとして使用した著作物の権利者から訴訟を起こされるリスクも考えられるでしょう。
生成AIの文章や画像における著作権の考え方については、複雑な法的問題を含んでいます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
→「生成AIの文章や画像における著作権の考え方」
倫理的に不適切なアウトプットの可能性
生成AIは、学習データに含まれるバイアスや偏見を反映してしまう可能性があります。その結果、差別的な内容や倫理的に問題のある表現を生成してしまうことがあるのです。
例えば、特定の性別や人種に対する偏見を含んだ文章を生成したり、過激な政治的主張を含む内容を出力したりする可能性があります。このような倫理的に問題のあるコンテンツが企業の公式文書や広告に使用されれば、企業イメージに深刻なダメージを与えかねません。
業務担当者に影響するAIのデメリット
生成AIの導入は業務効率を向上させる一方で、人間の業務担当者に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。例えば、担当者が生成AIの便利さに慣れすぎてしまい、生成されたコンテンツを鵜呑みにしてしまうケースが考えられます。前述のとおり、生成されたコンテンツは必ずしも正しいものとは限りません。
また、AIへの過度な依存による問題解決能力の低下や、従業員が持つノウハウの継承が行われず喪失してしまうリスクも考えられるでしょう。このような状態が長期的に続けば、企業の競争力低下につながる恐れがあります。
生成AIデメリットと企業が取るべき対応策
このような生成AIのデメリットに対して、企業が取るべき対策としては次のようなものが挙げられます。
- 社内ガイドラインの策定
- データマネジメントの徹底
- 最新の法的動向や技術トレンドの確認
- 社員教育の実施
- 人間の判断を重視
まずは、社内での生成AIの活用方法や運用ルールなどをしっかりと定めることが重要です。ガイドラインの雛形は「日本ディープラーニング協会」や「総務省」などから公開されています。これらの雛形を用いて、自社に適したガイドラインを策定するとよいでしょう。
併せて、機密情報や個人情報の管理を厳格化し、不適切なデータがAIに入力されないようにデータマネジメントを徹底します。また、著作権法の改正やAIに関する新たな規制などの動向も常に把握しておくことが重要です。
社内ガイドライン策定後は、定期的に社員教育を実施し、生成AIの適切な使用方法やAIの出力を評価する能力を全社的に身に着けていきましょう。加えて、特に重要な意思決定や創造的な業務については、最終的には人間の判断を優先することが重要です。
これらの対策や考え方について、経営層を含むすべての関係者が共通意識として持つことで、生成AIを安全に活用できるようになるでしょう。
生成AIのデメリットを理解し適切な対策を
今後の企業活動において、生成AIの活用は欠かせません。この記事で解説したデメリットを理解したうえで、適切な対策を講じて利用することが重要です。リスク管理を徹底しつつ、生成AIのもつ可能性を最大限に引き出すことができれば、企業の競争力向上につながります。
この記事では生成AIのデメリットについて解説しましたが、生成AIには多くのメリットも存在します。生成AIについて基礎から知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
→「生成AIとは? 概要や活用するメリット・デメリットなど徹底解説」