DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何かわかりやすく解説

国内の企業が早急に取り組まなくてはならない重要なテーマの一つが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。これから数年の内にDXを成し遂げることができなければ、日本の経済は「2025年の崖」に落ちるとされています。また、企業もDXを推進なければ多大な損失を被る可能性が高いとされます。DXとは何か、実現のために何から始めればいいのか、わかりやすく解説します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

デジタルトランスフォーメーションとは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。2004年、スウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマンによって最初に提唱されました。

企業向けに噛み砕いて説明すれば、デジタルトランスフォーメーションとは進化したデジタル技術を活用し、商品やビジネスモデルを刷新し、業務そのものや組織、企業文化などを変革して、競争力を得ること、と表現できます。

「Digital Transformation」をDTではなくDXと略すのは、英語圏では「Trans」の部分を「X」と表すことが一般的なためです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)が企業にとって重要とされる理由

2018年9月、経済産業省は「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDX の本格的な展開~」を発表しました。レポートをまとめたのは経済産業省が設置した「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」です。

この資料は大きな反響を呼びました。DXレポートによれば、多くの経営者が自社の成長や競争力強化のためにDXが必要であることを理解しているものの、実際にDXを実現している企業はまだまだ少数です。

DXの推進を妨げる最も大きな要因として挙げられるのが、老朽化・ブラックボックス化・肥大化が進んだシステム=レガシーシステムの存在です。とくに日本の場合、システムが事業部門ごとに構築されていて全社横断的なデータ活用ができず、さらに過剰なカスタマイズがなされることで重度のブラックボックス化が進行してしまっている事例が目立ちます。

では、企業がレガシーシステムの問題を解決するなどしてDXを推進できないと何が起こるのか。予測される事態は深刻です。

経営面では市場の変化に対応してビジネスモデルを柔軟かつ迅速に変更することができず、デジタル競争に勝ち残ることが困難になると考えられます。また、システムの維持管理費が膨れ上がり、企業内のIT予算を大きく圧迫するでしょう。さらに保守運用が不安定になってサイバー攻撃や事故・災害によるシステムトラブル、データ損失のリスクが高まるという問題も発生します。

DXレポートでは、ほかにIT人材不足などの条件も重なって、数年以内に国内経済そのものが急激な減速・停滞期を迎えると警告しています。具体的には2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるとしています。

この国内経済の転落は「2025年の崖」と呼ばれます。DXレポートの中で初めて登場した言葉で、レポートのタイトルにも使用されています。「2025年の崖」を超えるために、レガシーシステムの刷新と、その先にあるDXの推進と実現が急務とされています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進における企業に必要な取り組み

DXレポートで、「2025年の崖」と同時に産業界全体で共有すべき知見とされているのが、「DX実現シナリオ」です。「DX実現シナリオ」は、2025年までにレガシーシステムについて廃棄するもの、現状のまま凍結するものなどを仕分けし、必要な部分に関しては刷新を進めることでDXを実現して、2030年に実質GDP130兆円超の押し上げを図るというものです。

DXの実現に向けて企業が行うべき施策は多岐にわたります。

まず、既存システムの刷新とDX推進に関して経営トップ自らが強力にコミットメントしていくこと。このことは現場の抵抗を突破するためにも有効です。同時に、既存システムの問題点を洗い出して把握するため、システム全体を見える化する作業も必須となります。システムの稼働状況、実行プロセス、運用管理・保守体制、ハードウェア・ソフトウェア構成などに加えて、現状における技術的負債の度合い、データ活用のしやすさ・しづらさなども明らかにしていかなければなりません。

次に「DX推進システムガイドライン」の策定。これが経営戦略としてDXを推進していくための土台となります。そしてガイドラインを踏まえて、具体的なDX実現に向けた対応策を用意します。たとえば既存システムの中から不要な機能を抽出して廃棄・整理すれば、システム刷新に際してのリスクやコストを軽減できます。また、既存システムの部門や業務による分断=サイロ化を新しいシステムに引き継いでしまわないよう、業務プロセスを見直し、データの連携や共有を前提とした共通プラットフォームを構築することも求められます。

上記以外には、ユーザー企業とベンダー企業の間でシステム再構築やアジャイル開発に適した契約の見直しなどを含む、新たな関係の構築も必要とされます。そして最後に、DX人材の育成と確保も重要な要素となるでしょう。

経済産業省では、企業がDXを推進する際に参考になるよう「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」を取りまとめています。DX推進に関して基本的知識を得るために、ぜひとも目を通しておくべき内容となっています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)実現のカギとなる技術

DXにおける「進化したデジタル技術」とは何を指すのかということについても触れておきましょう。

DXレポートが発表された時点では、クラウド、AI、ビッグデータ、ソーシャルテクノロジーなどが挙げられていました。現在では5GやIoTも加えるべきでしょう。

DXにおいてはこれらの技術を複合した仕組みを作り出し、企業を変革していくことになると考えられます。その仕組みを人体に例えるなら、AIが頭脳となり、IoTが目や耳や鼻となリ、5Gが神経系となり、クラウドが脳内の記憶となるといったイメージです。これらの有機的な組み合わせにより、多様かつ膨大なデータを収集して分析し、結果を課題解決へと活用できるはずです。

2025年までに残された年数は多くありません。とくに創業年数が長く、早くから基幹システムを導入してきた企業ほど、大きな課題を抱えている可能性があります。既存システムの見直しから手を付け、DX推進のための取り組みを始めましょう。