IoTゲートウェイの役割と活用例

IoTの活用やIoTシステムの設置を検討していて、IoTデバイスなどと並んで「IoTゲートウェイ」という機器の存在を知ったという人もいるのではないでしょうか。IoTゲートウェイとはどのような役割を持った機器なのか、よく似た機能を持つルータとの違いや、IoTでの活用法などを含めて説明します。

ルータとは何が違う? IoTゲートウェイ

IoTゲートウェイとは、IoTデバイスをインターネットなどのネットワークに接続して、IoTデバイスとサーバ間のデータのやり取りを中継する機能を持つ機器のことです。

ネットワーク内の中継機器というとルータを思い浮かべる人も多いと思いますが、両者は似ているところもあれば異なるところもあります。

自宅などでインターネットに接続する際に使うルータは、ネットワーク接続に必要なアドレスであるIPアドレスを割当て、ホームネットワーク(家庭内LAN)につながったパソコンやスマホ、ゲーム機など複数の機器でインターネットを利用できるようにするための機器です。ルータはこのホームネットワークとインターネットのような異なるネットワークの境目に設置して中継する役割を担います。

(IoTが付かない)ゲートウェイはもう少し広く、プロトコル(規格)の異なるネットワーク同士をつなぐ機械といった意味を持つ言葉です。ルータはゲートウェイの一種とみなすこともできます。

IoTゲートウェイの場合は、たとえば複数のIoTデバイスで構成されるローカルネットワークがあり、そのネットワークと、インターネットや閉域網などの広域ネットワークを接続します。広域ネットワークのさらに先にはサーバやクラウドが存在します。

IoTゲートウェイの接続方式には有線と無線があります。ただ、IoTデバイスとIoTゲートウェイ間の通信は有線だと物理的な線の取り回しが煩雑であったり、ポート数に限りがあるため、多くが無線で行われています。接続にはWi-Fi、Bluetooth、920MHz帯無線、ZigBeeなどの無線方式が使われることが多いでしょう。一方、インターネットとIoTゲートウェイとの接続では、回線敷設が困難な屋外では4G(LTE)、5Gなどの無線回線が使われ、屋内で回線敷設が可能な場合は安定性のあるイーサネットなどの有線がよく用いられます。また、IoTで利用されるプロトコルの種類は非常に多く、HTTP、MQTT、AMQP、CoAP、TCPなどがあります。

IoTゲートウェイの役割

IoTゲートウェイはなぜ必要なのかという点を考えてみましょう。

まず、IoTゲートウェイを使用せず、IoTデバイスがそれぞれ直接インターネットに接続する方式もあります。シンプルなシステム構成になるのですぐに始められる方式なのですが、デバイスが増えると管理コストが肥大化していきます。IoTデバイス1個1個にSIMが1枚ずつ搭載され、それぞれがインターネット通信をしていると想像していただければ管理が大変なことがご理解いただけると思います。IoTデバイス自体にインターネットに接続するための機能や処理能力も求められます。運用時には電池消耗の度合いが激しくなるため、頻繁に電池交換をしなければならなくなるなどの問題も生じます。

これに対し、IoTゲートウェイを使えばIoTデバイスの負荷を軽減することができます。通信機能はIoTゲートウェイとの近距離通信ができれば十分でしょう。IoTデバイスに搭載されたセンサが捉えたデータは近距離通信でいったんIoTゲートウェイに渡され、そこからインターネットを介してサーバやクラウドへ送られます。

さらに、IoTゲートウェイにはグループ化したIoTデバイスの管理・監視を行うという役割もあります。サーバ側からIoTゲートウェイを通じてIoTデバイスにログインし、稼働状況や故障の有無を確認して操作することも可能です。

IoTゲートウェイをエッジコンピューティングとして利用するということも始まっています。IoTゲートウェイに処理機能を持たせ、クラウドにデータを送信する前に近距離通信で渡されたデータをローカルで処理をする考え方です。センサー至近のエッジ側で処理をすることで素早く命令を出し、サーバやクラウドで処理・蓄積が必要な複雑なデータ、大容量データのみを送信するという役割分担も進んでいます。

現在、IoTゲートウェイにはさまざまなプロトコルに対応し各種用途に使用できる汎用性の高いもの、機能や性能を絞った非常に安価なもの、タイムスタンプ機能や簡単な情報処理を持つ高機能なもの、工場向けなど特定の用途向けに開発されたものなど多くの製品が存在します。それら製品ごとにも異なる役割があります。

IoTゲートウェイの活用例

スマートファクトリーなどの生産現場で使用されるIoTゲートウェイは「産業用IoTゲートウェイ」などと呼ばれます。国内外の主要メーカーのPLCと接続でき、制御盤に収まる仕様になっているのが一般的です。

PLCは工場の生産設備やラインの制御を行う装置です。工場をIoT化し、設備や機械の稼働状況を見える化する、異常や故障を検知する、設備動作を制御する、しかもそれらをリアルタイムで行うには、PLCとデータのやりとりができるIoTゲートウェイがほぼ必須となります。スマートファクトリーでは、IoTゲートウェイが非常に重要な役割を担うことになるといえます。

ほかには物流の例を挙げることもできます。倉庫や配送センター、荷物を積載して運ぶトラック内にIoTゲートウェイを設置し、IoTデバイスは品物ごとや梱包箱にコンパクトなIoTデバイス(センサタグやスマートセンサ)をセットします。こうすれば荷物が今どこにあるか、温度が何度に保たれているか、振動や衝撃を受けているかといったデータを品物ごとにリアルタイム監視できます。

HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)でもIoTゲートウェイは活用されています。HEMSは家庭で使うエネルギーを節約するための管理システムのことで、政府が2030年までにすべての住まいへのHEMS設置を目指していることでも知られています。いわゆるスマートハウスの一種です。このHEMS用途に特化して作られたHEMS対応ゲートウェイは、冷蔵庫やエアコンなどの各種HEMS機器からのデータを収集しサーバに送ります。その上で、HEMS機器の使用パターンや家族の生活パターンを分析し、最適な節電ができるよう各機器をコントロールします。

IoTシステムにとって、IoTゲートウェイはIoTデバイスやネットワークとほとんど同じくらい重要なものです。IoTゲートウェイを理解して、便利にIoTを活用していきましょう。