
現代のデジタル社会において、システムの安定性と信頼性を維持することは企業の生命線といえます。システムが停止してしまうと、莫大な損失と信用失墜につながりかねません。システムの安定性、信頼性、継続性を保つために重要な考え方が「冗長化」です。
この記事では、冗長化の基礎知識からメリットやデメリットについて解説していきます。
冗長化とは?
冗長化とは、システムや設備の障害に備えて、同じ仕様の予備システムを事前に準備しておくこと(多重化)です。簡単にいえば、メインのシステムと全く同じスペックの予備システムを用意し、トラブル発生時にすぐに切り替えられる仕組みを構築することを意味します。
冗長化の対象
冗長化の対象は、単一障害点になり得るものすべてです。例えば、サーバー、ネットワーク回線、ストレージ、データベースなどが挙げられるでしょう。企業の基幹システムにおいても、重要な役割を果たす設備が対象となります。いずれかが障害などで正常に動作しなくなった場合に、システム全体に影響が及ぶものすべてが対象と考えます。
冗長化の必要性
冗長化は主に次の3つの点で必要とされています。それぞれ解説するため、一つずつ見ていきましょう。
ビジネスにおける信頼性の向上
近年、自然災害やサイバー攻撃のリスクが高まるなか、事業継続対策は企業の重要な課題となっています。自然災害やサイバー攻撃はいつ発生するかわかりません。しかし、利用者は「システムは使えて当然」と考えており、どのような場合でも使えなくなった時点で企業の信頼性は低下してしまうでしょう。冗長化はシステムの可用性を高め、障害発生時でも安定したサービス提供を可能にする重要な戦略なのです。
障害発生時のリスク軽減
システム障害は自然災害やサイバー攻撃と比べてより身近なリスクであり、同様に企業に甚大な損失をもたらす可能性があります。しかし、冗長化によって障害発生時のダウンタイムを最小限に抑えることができれば、業務への影響を軽減することが可能です。例えば、ネットワーク障害が発生しても、別の回線に瞬時に切り替えることで、サービスの継続が可能となります。
データ損失防止の観点からの冗長化
重要なデータの保護は、企業にとって最も重要な課題の一つです。冗長化されたシステムでは、データの複製や同期が常に行われるため、一部のデータが失われても、他のシステムから復旧できる可能性が高まります。考え方によっては、バックアップも冗長化の一種と捉えることもできるでしょう。同じデータを別の場所に保管する、ということは、一見すると無駄(冗長)に思えますが、データの損失防止の観点から見ると非常に有効です。
冗長化のメリット
冗長化の主要なメリットは次の3点です。冗長化の必要性と併せて「なぜ冗長化が求められるのか」といった理由にもなります。
高可用性の確保
冗長化の最大の利点は、システムの可用性を向上させることです。複数のシステムを並行して稼働させることで、一つのシステムに障害が発生しても、即座に別のシステムに切り替えることができます。システム自体を冗長化するだけでなく、システムを構成する要素(サーバー、ネットワーク、データベースなど)を冗長化する、という考え方も一般的です。
システム安定性の向上
負荷分散も冗長化の重要なメリットです。複数のサーバーやネットワーク機器に処理を分散させることで、アクセス集中による性能低下を防ぎ、システムの安定性を確保できます。例えば、Webサーバーを2台用意し、ロードバランサー(負荷分散装置)によって1万リクエストを5,000リクエストずつ振り分けてWebサーバーの負荷を分散する、ということも実現できます。
ビジネス継続性の強化
冗長化は事業継続計画(BCP)の重要な要素です。災害やサイバー攻撃などの不測の事態においても、重要なシステムやサービスを継続できる強靭な仕組みを提供します。BCPでは自然災害なども考慮するため、システム内の冗長化だけでなく、それこそシステム自体の冗長化も検討することが重要です。例えば、東京に本システムを構築し、大阪に本システムをコピーした副システムを構築して有事の際には副システムに切り替える、というような冗長化を行います。
冗長化のデメリット
冗長化は多くのシステムで必要とされており、さまざまなメリットも存在しますが、デメリットも存在します。冗長化は同等のシステム(サーバー、ネットワークなど)を複数準備するため、初期投資や維持管理コストが増加します。また、複数のシステム間でデータ同期や設定管理を行う必要があり、運用が複雑化する点もデメリットの一つです。
これらのデメリットがあるため、過剰に冗長化することは推奨できません。運用するシステムの特性や重要度に応じて、冗長化の構成を検討する必要があります。
ネットワークやシステムなどの冗長化を検討しましょう
冗長化は現代のビジネスにおいて不可欠な戦略です。システムの安定性、信頼性、継続性を確保するためには、適切な冗長化レベルを慎重に検討することが重要です。冗長化のメリット・デメリットも考慮し、企業の規模や事業特性に応じて最適な冗長化アプローチを選択しましょう。