最大1Gbpsの通信速度を実現可能な周波数帯「プラチナバンド」について、その概要や注目されている背景などを解説します。
総務省が公表した「プラチナバンドの再割り当て」報告書や、大手4社の対応バンドについても紹介するので、今後のモバイル通信市場の動向を確認したい方は参考にしてください。
プラチナバンドとは
プラチナバンドとは、700MHz~900MHzの周波数帯域を中心とした電波帯域を指す通称で、ビルなどの障害物があっても回り込んで電波が届きやすいという特徴を持っています。
一度に送れるデータ量は少ないものの、その特性から基地局の少ない地域や地下、屋内、山の陰などでも繋がりやすい周波数帯域であることから、携帯無線通信において最適な周波数帯域とも言われています。
また、携帯電話の高速データ通信規格であるLTEを、プラチナバンドの周波数帯で提供するサービスをプラチナバンドLTEと呼びます。
プラチナバンドが注目されている背景
プラチナバンドが注目されている背景には、楽天モバイルがこの周波数帯の自社への割り当てを主張していることが関係しています。
従来から携帯電話事業をおこなってきた三大キャリア、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社にはプラチナバンドが割り当てられている一方で、後発の楽天モバイルは、KDDIローミングで提供を受けている800MGHz帯を除けば、1.7GHz帯のみで携帯電話の通信サービスを提供している状況です。
プラチナバンドは障害物を回り込んで電波が届く性質を持つことから、基地局の少ないエリアでも安定した通信を提供しやすいため、契約エリアを拡大する上で非常に重要な存在となっています。そこで、楽天モバイルはプラチナバンドの再割り当てを主張する意見書を提出したのです。
なお、過去にはソフトバンクもプラチナバンドの割り当てを受けられない時期があり、1.5GHz帯と2.1GHz帯でサービスを提供していました。2004年には新しい会社を設立して800MHz帯への参入を試みたものの総務省から許可が下りず、訴訟にまで発展しています。その後、2012年に900MHzの周波数が割り当てられ、プラチナバンドを利用した通信が提供されるようになりました。
総務省が公表した「プラチナバンドの再割り当て」報告書
「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」は、楽天モバイルによるプラチナバンド再割り当ての要望に対して、再割り当てを実施する場合の移行期間や費用負担などについて検討したものです。
楽天モバイルからは、現在大手キャリア3社に割り当てられている周波数帯のうち、各社5MHz×2幅ずつ、合計15MHz×2幅の再割り当ての要望がありました。これに対し報告書では、3社から5MHz×2幅ずつの再割り当てを行った場合をモデルケースとして、さまざまな検討がなされています。
再割り当てには基地局の機器交換や工事が必要になるため、移行には一定の費用・期間がかかります。楽天モバイルは、携帯市場の民主化を加速させ国民の利益とするためにも1年以内の早期再割り当てを主張する一方、その他の3社は5~10年程度の移行期間が必要であることなどを主張しています。
大手4社の対応バンド
最後に、現在携帯通信サービスを提供する大手4社の対応バンドについてご紹介します。NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの対応バンドは次の通りです(2023年4月現在)。なお、次のうちバンド8、18、19、26、28(700MHz~900MHzのバンド)がプラチナバンドに該当します。
NTTドコモ
4G(LTE):バンド1、バンド3、バンド19、バンド21、バンド28、バンド42
5G:n28、n78、n79、n257
au
4G(LTE):バンド1、バンド3、バンド11、バンド18、バンド26、バンド28、バンド42
5G:n3、n28、n77、n78、n257
ソフトバンク
4G(LTE):バンド1、バンド3、バンド8、バンド11、バンド28、バンド42
5G:n3、n28、n77、n257
楽天モバイル
4G(LTE):バンド3
5G:n77、n257
なお、これらの対応バンドは変更される場合がありますので、最新情報については各キャリアや端末の公式サイトなどをご確認ください。
プラチナバンドの概要や注目される背景、再割り当てに関するタスクフォースの報告書などについて解説しました。
プラチナバンドは、障害物を回り込んで届きやすいという特徴から、安定的な携帯無線通信サービスを提供するために欠かせない周波数帯と言えます。そのため、プラチナバンドの再割り当ての方向性次第で、キャリアの需給バランスも大きく変わることが考えられます。楽天モバイルを含む携帯通信事業大手4社の今後の動向に注目しましょう。