周波数再編アクションプランとは? 押さえておきたいポイント

技術の進歩やトラフィックの増加、災害への備えなどに対応するため、政府が無線通信に必要な電波の割り当てを見直す「周波数再編アクションプラン」。

この記事では、5Gの普及に向けた対応やミリ波の用途や割り当てなど、周波数再編アクションプランで押さえておきたいポイントについて解説します。また、各対象システムの帯域確保目標についても説明するので、ぜひチェックしてください。

周波数再編アクションプランとは

周波数再編アクションプランとは、携帯電話やテレビ、ラジオなどの無線通信に必要な電波の割り当てを見直し、効率的な周波数利用を図るために毎年総務省が策定し公表しているものです。

周波数再編アクションプランによって、高度な通信技術の導入が可能になることで、新しい通信サービスの開発や、国民生活の利便性の向上などにつながることが期待されています。

政府が周波数再編アクションプランに取り組む背景

政府が周波数再編アクションプランに取り組む背景には、技術の進歩、トラフィックの増加、災害への備えなどがあります。

技術の進歩によって、高速かつ大容量の無線通信が可能になりました。これにより、スマートフォンやタブレット端末などの利用が普及し、トラフィックが増加しています。特に、災害などの緊急時には、大量の通信が集中することが予想されます。

また、新しく開発された通信規格やサービスに対応するためには、新たに割り当てることのできる電波帯を確保することも必要です。こうした背景から、電波を適切な状況で有効活用するために、周波数再編アクションプランの策定・見直しが行われています。

周波数再編アクションプランで押さえておきたいポイント

2022年9月1日に公開された、令和4年度版の周波数再編アクションプランの内容の中から、特に押さえておきたいポイントについて解説します。

大きなポイントとなるのが、5G/Beyond 5Gの普及に向けての対応です。最新のアクションプランでは、すでに割り当て済の2.3GHz帯の40MHz幅のほかに、5G/Beyond 5Gの候補帯域として40GHz帯(37.0~43.5GHz)、26GHz帯(25.25~27GHz)、4.9GHz帯(4.9~5.0GHz)、2.6GHz帯(2645~2665MHz)の4つの帯域の割り当てが検討されています。

この中で特に注目されるのが、まだ活用の進んでいないミリ波の用途や割り当てです。ミリ波とは、一般的に30GHz帯から300GHz帯の高周波数帯域に分類される電波の一種で、英語でEHF(Extra High Frequency)帯とも呼ばれます。

低周波帯は、自動運転システムなどの次世代モビリティへの割り当ても検討されていることから、5G普及や衛星通信システムの割り当てにおいては、ミリ波のような未利用周波数帯の活用が重要と考えられます。

各対象システムの帯域確保目標

周波数再編アクションプランにおいて、特に帯域を必要とするシステムとして4つの電波システムが挙げられています。それぞれの概要と、帯域確保目標や現在の進捗などを説明します。

5G・Beyond 5G携帯電話網

5Gは高速・大容量・低遅延な通信が可能な通信技術であり、Beyond 5Gは、5Gの進化版として、より高速・高信頼・多様なサービス提供を可能とする通信技術です。

これらを利用した携帯電話網システムは、2025年度末までに+約6GHz幅を帯域確保の目標としています。候補となる帯域は、すでに携帯電話網として割り当て済みであるLTE及び5G/ローカル5Gのほか、2.3GHz帯、2.6GHz帯、4.9GHz帯、26GHz帯、40GHz帯などが想定されます。

進捗としては、2022年5月、5G用周波数として2.3GHz帯の+40MHz幅を確保しました。

衛星通信・HAPS

衛星通信とHAPS(High Altitude Platform Station:成層圏通信プラットフォーム)を組み合わせることで、災害時や人口の少ない地域においても安定した通信環境を整備し、社会インフラとしての機能を果たすことが期待されています。

これらのシステムは、2025年度末までに+約9GHz幅を帯域確保目標としています。候補帯域は、Ku帯(kurz-underの略、周波数12~18GHzのマイクロ波)における衛星コンステレーションなどの移動衛星通信システムの導入や、Ka帯(kurz-aboveの略、周波数27~40 GHzのマイクロ波)を用いた移動する地球局向けブロードバンド衛星通信システムの帯域拡張、さらにQ/V帯(周波数40~75GHzのマイクロ波)における非静止衛星用フィーダーリンクなどが想定されます。

衛星通信・HAPSシステムの近年の進捗としては、2021年8月と2022年4月に既存無線システムと共用する形で、ダウンリンク周波数として10.7~12.7GHzの+2GHz幅を、アップリンク周波数として14.0~14.5GHzの+0.5GHz幅の計2.5GHz幅をそれぞれ確保しています。

IoT・無線LAN

パソコンやタブレット端末、その他日常生活で使われる機器やセンサなどを無線接続するIoTや無線LANといった電波システムにおいては、+約1GHz幅の帯域確保が目標となっています。

候補となる帯域は、Wi-Fi6規格において、最大10Gbpsを実現するチャネルの複数確保が期待される6GHz帯が想定されています。

IoT・無線LANシステムについては、無線LAN用周波数として、6GHz帯を割り当てるための法整備が2022年9月に実施され、新たに+0.5GHzが確保されました。

次世代モビリティ

自動運転に代表される次世代モビリティシステムにおいては、2025年度末までの帯域確保目標として、+約30MHz幅を目指しています。さらに、数10Mbpsの通信速度を実現するため、一定の専用帯域の確保も目標として掲げられています。

周波数再編アクションプランは、我々の生活に欠かせない通信インフラを強化し、新しいサービスを提供するための重要な取り組みです。今後も更なる高速・高品質の通信環境が必要となる中、このプランを注視していくことが必要です。

今回の記事を通じて、周波数再編アクションプランの概要や各項目の進捗状況を把握し、今後のビジネス展開に活かしていただければ幸いです。