ローカル5Gとは? 5Gとの違いや活用方法について

2020年春よりキャリアがサービスを開始した5Gとは別に、もう一つの5Gともいえる「ローカル5G」も始動しようとしています。ローカル5Gとはどのようなもので、5Gとは何が違うのか、その活用方法とともに解説していきます。

ローカル5Gとは?

ローカル5Gとは、企業や自治体が個別に利用できる小規模な「5G」通信環境のことです。プライベートネットワークなどとして利用可能な「自営の5G」とよく表現されます。

5Gは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのキャリア4社に、3.7GHz帯と4.5GHz帯、さらに28GHz帯という周波数帯が割り当てられています。総務省はこれに加えて、4.5GHz帯の200MHz幅(4.6~4.8GHz)と28GHz帯の900MHz幅(28.2~29.1GHz)をローカル5Gとして割り当てるとしています。

このうち、28.2GHz~28.3GHzの100MHz幅については2019年12月に制度化が完了しています。また2020年末には、28.3G~29.1GHzの800MHz幅と4.6G~4.8GHzの200MHz幅に関しても2回目の制度化が予定されています。

ローカル5Gの特徴と5Gとの違い

では、なぜキャリアが提供する5Gとは別に、5Gを利用した小規模な通信環境が構築されようとしているのでしょうか。総務省ではローカル5Gを、地域の企業や自治体、産業におけるローカルな需要、地域の課題解決に応えるための通信環境として位置づけています。キャリア3社による5Gサービスは2020年3月から、楽天モバイルは6月(2020年9月以降に延期)からサービスが開始されていますが、ローカル5Gはキャリアの提供エリアと関係なく、5Gの機能を各地域で企業や自治体が利用できる機会として提供されているといえます。

ローカル5Gを利用するための免許は、原則として建物の土地の所有者が「自己の建物内」または「自己の土地の敷地内」で利用する場合に取得できます。ただし、建物または土地の所有者からシステム構築などの発注を受けたベンダーやSIerも、代わりに免許人となることが可能とされています。このほか、他者の建物または土地でローカル5Gを利用する「他者土地利用」も可能などの条件も設けられています。

このローカル5Gの用途には、たとえばスマート工場内での情報収集のための無線通信などが想定されています。ローカル5Gを利用すれば、自社の施設や事業内容に最適化された通信環境を利用できます。つまり、限定されたエリア内ではあるものの、キャリアを介さず、独自に帯域幅を制御したり、通信速度をコントロールしたり、セキュリティレベルを変更したり自由度の高い通信環境を構築できる5Gが、ローカル5Gであるといえます。

ローカル5Gのメリット・デメリット

ローカル5Gを利用することにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。それぞれ見てみましょう。

ローカル5Gのメリット

ローカル5Gを利用すれば、自社の敷地内に自前の5Gネットワークを張り巡らせられます。その場合、検討対象になるのはWi-Fi、なかでも5Gと同等に近い最大速度を持つ第6世代のWi-Fi規格「Wi-Fi6」でしょう。

ローカル5GがWi-Fi6に対して勝っているのは、セキュリティ強度の高さと通信の安定性、通信遅延の低さ、電波到達距離の長さなどです。とくにセキュリティに関しては、ローカル5GはAPN(Access Point Name)とパスワードによる認証に加えて、SIMカードによる認証も必要になる点でWi-Fiよりも有利といえます。

また、Wi-Fiの2.4GHz、5GHz帯の電波は障害物を回り込みやすく電波が届きやすい反面、敷地や建物の外部にも電波が漏れ出てしまいやすいという特徴があります。ローカル5Gでも4.5GHz帯の電波に関しては同様のことがいえますが、高周波帯である28GHz帯は障害物を回り込みにくく、そのぶん電波の漏えいが少ない傾向があります。このことも、ローカル5Gの安全な運用を後押しする要素に挙げられるでしょう。

ローカル5Gのデメリット

デメリットについてもWi-Fiと比べると、ローカル5Gは導入コストが非常に高額です。Wi-Fi環境であれば数万~十数万円程度で環境を整えられます。しかしローカル5Gによる通信環境の構築には通常数千万円、ゼロから構築する場合は数億円の費用が必要になります。ローカル5Gはセキュアで安定した通信環境を得られる代わりに、ある程度大きな規模の設備投資となる点を考慮しなくてはならないでしょう。

ローカル5Gの活用方法

ローカル5Gを事業に活用するのであれば、5Gの高速・大容量、低遅延、多数接続、そしてセキュアという特性を十分に活かせるかを検証すべきです。

たとえばローカル5Gを使って生産ラインの監視や最適化、生産管理などを行うスマート工場などは代表的な活用方法となるでしょう。なかでも工場内のカメラやIoT機器のセンサーが捉えたデータをリアルタイムに収集するといった用途にローカル5Gは向いていると考えられています。

ほかには農産物の自動管理を行う農場、遠隔診療を推進する病院・医療機関、ARやVRによるスポーツ観戦が楽しめるスマートスタジアム、建設機械を遠隔制御する建設現場などにもローカル5Gが導入される可能性があります。また自治体の場合は河川監視、テレワーク環境の整備などに活用するケースが考えられるでしょう。

高いセキュリテイを要求される医療機関では、SIMが2枚利用出来る、デュアルSIMの端末を医師が持っていれば、病院内ではローカル5G用のSIMを利用して超高速・超セキュアな環境で医療情報を閲覧する端末に使えて、病院外では普通にプライベートなスマートフォンとして利用するというように端末1台でシームレスに使用することも可能です。

ローカル5G導入の注意点

ローカル5Gを導入する場合、基地局を設置します。ローカル5Gのための基地局のアンテナ設置工事を行う作業者には、第三級陸上特殊無線技士の免許が必須ですが、これはNTT ドコモなどの通信キャリアがアンテナ設置する場合に必要な第一級陸上特殊無線技士免許よりは簡単に取得できる資格です。免許の申請は総務省で随時受け付けており、申請から免許付与までは1カ月半程度かかります。

基地局を設置した場合は、1基地局あたり年間2,600円の電波利用料を総務省に支払うことになります。同じく端末も1端末あたり年間370円の電波利用料がかかります。基地局免許の申請は総務省で随時受け付けており、申請から免許付与までは1カ月半程度です。

また、ローカル5G導入には、当然ながら5G通信モジュールが入った5G対応端末が必要です。今後5Gに対応したスマホが普及してくると、5G対応端末も幅広く展開されていくでしょう。

ローカル5Gも結局当初は、NSA(Non Stand Alone)方式となるため、5G単体ではワークしません。4Gや地域BWA(Wi-MAXなど)の設備をアンカー(在圏管理や通信制御など)に使っていく必要があります。

ローカル5Gは、キャリアが提供する通常の5Gとはまた異なる可能性を秘めています。自社の事業展開とローカル5Gの組み合わせによって、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もあるのではないでしょうか。