通信速度に影響する? 帯域幅とは

インターネット回線について調べていると、「帯域幅」という用語をよく見かけます。帯域幅を通信速度と同じ意味で使っている記事もよくあるのですが、実は正確に言うとこれは少し違います。では、帯域幅とは何を意味する言葉なのか、通信速度とどのような関係があるのかなど、基本的なことを解説していきます。

帯域幅とは

帯域幅とは、通信や放送に使用する電波や光の周波数の幅、つまり「最高周波数」と「最低周波数の差」のことです。もともとは無線電波の周波数が専有している範囲を表す言葉として使われていました。

その無線電波を含むアナログ通信の帯域幅は「Hz(ヘルツ)」という単位で表します。たとえばAMラジオの周波数帯域幅は15kHz、FMラジオは200kHz、テレビは5.57MHz(5,570kHz)です。

それに対し、デジタル通信の帯域幅は「1秒間に何ビット転送できるか」を表す「bps」または「b/s」という単位を用いるのが一般的です。

帯域幅は周波数帯域、伝送帯域、バンド幅などとも呼ばれます。

帯域幅が広い・狭いとはどういうこと?

帯域幅は、その幅が広いほど多くの情報を転送することができます。アナログ通信のラジオとテレビを比べると、テレビは音声データに加えて映像データも送らなくてはならないため帯域幅が広く、逆にラジオは音声だけでいいので帯域幅が狭くなっているわけです。これは「道幅を広くするほど(車線数を多くするほど)多くの車が通れる」というイメージで考えるとわかりやすいでしょう。

情報を0と1の組み合わせに変換して伝えるデジタル通信でも同様のことが言えます。とくにインターネットを使う場合は、回線の帯域幅が広いか狭いかが、回線の快適さと深く関わってきます。帯域幅が広ければ広いほど多くのデータを一度に送れるので、インターネットを快適に使えるようになります。

かつて1980年代後半から1990年代にかけて利用されていたパソコン通信では、電話回線とモデムを使ったダイアルアップ接続による通信が行われていて、全盛期の頃の帯域幅は2,400bps、または9,600bpsでした。現在ではアナログ電話回線の帯域幅は最高で56kbpsとなっています。文字を表示するだけならこれくらいの帯域幅でもそれほど問題なく、電子掲示板でのやりとりやテキストチャットも行えますが、画像を送るとなるとかなり大変です。その後、ISDN回線が登場することになるのですが、それでも主流の帯域幅は一般電話より少し速い64kbpsでした。

やがて2000年代に入るとインターネットが身近になり、ADSL回線が一気に普及します。ADSLは従来のアナログ電話回線では使用していなかった周波数帯を使った、上りと下りで帯域幅が異なる回線です。下りは最大で約50Mbps、上りは最大で12.5Mbpsという広帯域通信を実現しました。

さらにその後、電気信号を光に変換して伝送する光回線の時代に入ると、下り上りとも概ね1Gbpsという帯域幅が利用できるようになりました。アナログ電話回線やISDNでは最大でもキロ(K)だった帯域幅が、ADSLでメガ(M)へ、光回線でギガ(G)にまで広がったことになります。

ADSL利用者が急増した2000年代初期、「ブロードバンド」という言葉が使われていたのを記憶している人も多いはずです。ブロードバンドとはそのまま「広帯域」の意味で、ADSL以降のCATVや光回線を含む、帯域が広く高速な通信回線を指す言葉です。一方、それ以前のアナログ電話回線やISDN回線は「ナローバンド(狭帯域)」として区別されています。

帯域幅は通信速度に影響するのか?

ここまで見てきたように、帯域幅とは周波数の幅のことです。しかし現在では、帯域幅はそのまま通信速度という意味でもよく使われています。「光回線の最大速度は1Gbps」といった表現がそれで、帯域幅というのは結局、通信速度のことだと思っている人もいるでしょう。

しかし、厳密に言えば、帯域幅と通信速度はイコールというわけではありません。帯域幅の広さと直接関係があるのは、あくまでも扱えるデータ容量の多さです。光回線の帯域幅が1Gbpsというのは、1秒間に1ギガビットのデータを送れるという意味です。もともとbps(またはb/s)という単位はビット毎秒、すなわち転送レート(ビットレート、転送効率)を表すための単位です。

しかし、帯域幅が十分に広く、一度に大量のデータを転送できれば、それだけ短い時間でデータがやりとりできるようになります。つまり、帯域幅が広ければ広いほど通信速度が速くなる、と捉えることもできるわけです。道路幅の広さの例で言うと、実は車の制限速度自体は同じなのですが、広い道路ほど車線をいっぱいとれますので一度に走れる車の台数が増してスムーズに移動しているということになります。

そのため今では帯域幅の広さをそのまま通信速度の速さとする表現方法が一般化してきています。最近では、Web会議ツールを使っていると「ネットワーク帯域幅が低くなっています」といったメッセージが表示されることがあります。これも要するに「通信速度が遅くなっている」という意味だと捉えてしまって問題ありません。

インターネット回線以外では、LANケーブルにも帯域幅(LANケーブルでは伝送帯域と呼ばれる)があります。CAT5というカテゴリの帯域幅は100MHz(最大通信速度は100Mbps)、CAT6は250MHz(同1Gbps)、2020年現在最新のCAT8は2,000MHz(同40Gbps)です。LANケーブルの場合ももちろん、帯域幅が大きいほど大量のデータを同時に送ることができます。

帯域幅は通信速度のことだと思っている人も多いのではないかと思われますが、厳密には違うということを知っておきましょう。正しく理解し、自分が利用している回線の帯域幅についても確認しておくことをおすすめします。