スマートファクトリーは、製造業の競争力強化や生産性向上のカギとして注目を集めています。しかし、具体的にどのような取り組みが行われているのか、イメージがつかみにくいと考える方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、国内企業のスマートファクトリー成功事例を紹介し、その効果や導入のポイントを解説します。
スマートファクトリーとは?
スマートファクトリーとは、IoTやAI、ビッグデータなどの先端技術を活用して工場全体をデジタル化・ネットワーク化し、生産性や品質の向上を実現する次世代の工場の姿です。従来の自動化された工場から一歩進み、工場内のあらゆるデータをリアルタイムで収集・分析し、最適な生産を自律的に行う「考える工場」を目指しています。
スマートファクトリーの詳細な目的やメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
→「スマートファクトリーとは? 目的やメリット・デメリットなど」
スマートファクトリー成功事例
国内企業のスマートファクトリー化への取り組みは着実に進んでいます。ここでは、具体的な成功事例を5つ紹介します。それぞれの企業がどのような課題に直面し、どのようなアプローチでスマートファクトリー化を進めたのか、その効果とともに見ていきましょう。
三菱電機株式会社の事例
三菱電機は、FA機器の主要メーカーとして、工場内のデータ活用に着目しました。同社が開発した「e-F@ctory」システムは、生産情報とITを連携させ、工場設備IoTとエッジコンピューティングを活用して、リアルタイムなデータ分析を可能にしました。さらに、ITシステム(クラウド)との連携により、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンを包括的に分析し、生産性向上とコスト改善を目指しています。「e-F@ctory Alliance」パートナープログラムの発足により、生産現場の情報だけでなく、CADデータなどエンジニアリングチェーンのデータとの連携も実現し、より包括的なスマートファクトリーソリューションを提供しています。
ヤマハ発動機株式会社の事例
ヤマハ発動機は、長年にわたり製造・基幹システムを内製してきましたが、海外展開の拡大に伴い、拠点ごとの独自システム開発による非効率な運用に直面しました。この課題に対応するため、同社は外部パートナーと連携し、データのライフサイクルマネジメントを見直しました。具体的には、データの収集方法、階層化、活用方法についての包括的な検討などです。その結果、デジタルツールの導入によりエンジニアリングチェーンの精緻化と効率化を実現しました。この取り組みにより、ヤマハ発動機はグローバルな製造拠点間の連携を強化し、スマートファクトリー化を推進しています。
自動車メーカーの事例
ある自動車メーカーは先進的な生産システムを導入しました。AIやIoTを活用して生産ラインの各工程をデジタル化し、リアルタイムでデータを収集・分析しています。自社のノウハウと先進技術を組み合わせることで、製造工程と整備保守・管理の効率化を実現しました。熟練者の技術をロボットに伝承させ、人とロボットが共存する環境を実現しています。
食品メーカーの事例
ある食品メーカーは、スマートファクトリー化の一環として包装工程管理システムを導入しました。このシステムにより、包装工程設備の稼働データを自動記録し、紙帳票だった現場記録をスマートフォンアプリに切り替えました。その結果、オペレーターの業務負荷が軽減され、改善のスピードアップが実現しています。生産ラインのオペレーション改革を実現し、スマートファクトリー化を着実に進めています。
化学メーカーの事例
ある化学メーカーは、前述の三菱電機の「e-F@ctory」システムを導入してスマートファクトリー化を推進しました。製造現場のデータ取得を自動化し、電力量をリアルタイムで見える化することで、省エネと設備異常の早期発見を実現しています。さらに、品質管理、設備保全管理、エネルギー管理、設備稼働管理のデータを統合し、経営、製造管理、現場の3階層でのダッシュボードを用意しました。この成功事例を他の工場へ水平展開し、会社全体の最適化を進める計画です。
スマートファクトリー化を成功に導くために
これらの事例から、スマートファクトリー化を成功させるためのポイントが見えてきます。まず重要なことは、自社の課題を明確に把握し、それに適したソリューションを選択することです。また、段階的な導入を行い、小さな成功を積み重ねていくアプローチも効果的です。さらに、技術導入だけでなく、従業員の理解と協力を得ることも重要となります。デジタル技術に対する抵抗感を減らし、新しいシステムを効果的に活用するための教育・トレーニングも欠かせません。
スマートファクトリー化は、一朝一夕には実現できません。しかし、これらの成功事例を参考に、自社の状況に合わせた戦略を立て、着実に進めていくことで、大きな成果を得ることができるでしょう。スマートファクトリー化は製造業の未来を左右するといえます。ぜひこの機会に、スマートファクトリーについて検討を進めてみてはいかがでしょうか。