工場の稼働監視とは? 必要性やメリット・デメリットを解説

工場に稼働監視システムを導入すれば、事故を防止して作業者の安全が確保できるだけでなく、IoT機器により収集したデータをもとに、業務効率化を図ることも可能です。
今回はIoTを活用した工場の稼働監視について、その必要性やメリット・デメリットを解説します。生産現場におけるIoT活用を検討されている方や、工場への稼働監視システムの導入をお考えの方は参考にしてください。

工場の稼働監視とは?

工場における稼働監視とは、生産設備の稼働状況をカメラやセンサーにより収集・監視して、異常を事前に予測・検知する仕組みのことです。生産設備の稼働状況のほか、設備の停止時間と稼働時間、在庫の不足、従業員の見守りなどを行い、工場の生産状況を見える化します。

稼働監視を導入すると、設備の保守点検や維持管理、異常状況の把握といった生産設備の稼働実態をより早く正確に知ることができ、工場全体の安全性や生産性の向上にもつながります。

工場の稼働監視はもともと人の目や手により行っていた作業ですが、近年は通信速度の向上やIoT機器の活用などにより、複雑かつ大量のデータを安定して収集できるようになったことで、稼働監視システムの導入が一般的になりつつあります。

生産現場における稼働監視システムの必要性

工場などの生産現場において、稼働監視システムが必要とされる理由は大きく2つあります。

まず1つは、生産設備のトラブルを未然に防ぐことによるリスク回避です。仮に生産設備が故障した場合、生産ラインを長期間停止しなければいけなくなります。生産ラインの停止は生産性の低下に直結するので、こうしたリスクを回避するために稼働監視の仕組みが必要です。

特に生産設備の重大なトラブルは人命にかかわる事故へ発展する可能性もあるため、人の目による監視ではなく、より信頼性の高い稼働監視システムによる監視が適しています。

生産現場に稼働監視システムが必要とされるもう1つの理由は、データ活用による生産性向上です。

IoT技術の活用により、工場内のさまざまなデータを収集できるようになり、現場の肌感覚ではなくデータに基づく業務効率化が可能になりました。しかし収集されるデータは膨大なため、人が処理するのには限界があります。

そこで、得られたデータを有効に活用するために、データの可視化や分析支援に役立つ稼働監視システムが必要になるのです。

稼働監視を導入するメリット

稼働監視システムを導入するメリットは、生産性を向上できる点にあります。危険行動や設備異常の検知による事故防止に効果を発揮するだけでなく、生産設備のダウンタイム短縮やスケジュールの効率化、加工滞留の改善などによる生産性向上の効果が期待できるのです。

従来の積層表示灯などによる稼働監視では、生産ラインが停止した際に「止まった」ことしか分からず、なぜ止まったのか、いつ止まったのかを振り返ることはできませんでした。しかし、IoTを活用した稼働監視システムであれば、ラインが止まった状況を後からログで追うことができ、今後の対策が取りやすいという点でも大きなメリットと言えます。

また、稼働率や稼働時間などのデータを、デジタルサイネージなどを活用して現場でも見える状態を整えれば、現場の意識改善を促す効果も得られるでしょう。

さらに、製品ごとに手作業による機器の段取りや脱着が発生する場合、作業者ごとの手順差をスマートグラスなどで見える化することで、習熟度の低い作業者のトレーニングが効率的になります。

稼働監視を導入するデメリットや注意点

長期的には生産性向上やコスト削減といった業務効率化に繋がる稼働監視システムですが、導入には相応のコストがかかる点に注意しましょう。

まず、データを収集するために各種センサーやカメラを設置する必要があるのに加え、設置した機器からデータを集積するためにはインターネット環境の整備も必須となります。

また、すでに生産設備にセンサーやカメラなどの監視装置を設置している場合でも、導入するシステムによっては、古い設備や機器に対応していない場合があります。既存の設備を刷新する必要があるとなればやはりコストがかかってしまいます。コストを抑えて稼働監視システムを導入したい場合は、古い設備や監視装置でもデータの収集が可能なシステムかどうか、導入前に確認しておくと良いでしょう。

さらに稼働監視システムを導入した後の注意点として、具体的なデータの解析方法や活用方法は自社で見極める必要があります。稼働監視システムはあくまで生産状況を見える化するためのものであり、見えるようになった状況に対してどのような改善を加えていくかは各社の方針によります。

工場における稼働監視システムの必要性や、導入のメリット・デメリットについて解説しました。稼働監視システムを導入することで、生産設備の稼働状況が見える化でき、生産設備の滞留やダウンタイムを短縮・削減して、生産性の向上が図れます。

導入に不安のある事業者の方は、ぜひ以下の記事もご確認いただき、まずは小規模な生産ラインへのシステム導入から検討してみてはいかがでしょうか。
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