人材の不足、進まないIT活用、生産コストの増大、環境規制の厳格化など、数多くの課題を抱える製造業において、デジタル技術の導入・活用による業務効率化は急務です。
この記事では、製造業のDXについて、その基本から進め方のポイントまでを解説します。製造業におけるDXの成功事例もご紹介しますので、取り組みを検討される担当者の方はぜひ参考にしてください。
製造業のDXとは
製造業のDXについて、概要から説明します。
そもそもDX（デジタルトランスフォーメーション）とは
DX、すなわちデジタルトランスフォーメーションは、デジタル技術の活用を通じてビジネスや組織のあり方を根本的に変革する取り組みのこと。DXを行う目的は、業務効率の向上、新しいビジネスモデルの創出、顧客体験の向上など多岐にわたります。
製造業のDX
製造業におけるDXとは、生産工程、品質管理、サプライチェーン管理など、製造業特有の業務やプロセスに対し、デジタル技術を用いて変革・最適化する動きを指します。
具体的には、IoT技術を使った機械の遠隔監視、AIを用いた品質予測や生産最適化、クラウドコンピューティングを利用したデータの一元管理などが含まれます。
製造業におけるDXの背景
製造業におけるDXの背景には、製造業が抱える複数の課題が関係しています。人材の不足、進まないIT活用、生産コストの増大、環境規制の厳格化に加え、顧客ニーズの多様化、国際競争の激化など、課題は多岐に渡ります。
これらの課題に効果的に対応するため、また、新しい市場やビジネスチャンスを探るために、デジタル技術の導入が求められています。さらに、デジタル技術の急速な進化や、他の産業でのDXの成功例が、製造業におけるDXの推進を後押ししている状況です。
製造業のDXの進め方のポイント
製造業におけるDXの進め方のポイントを解説します。
DXの導入プロセス
製造業のDXを効果的に導入するには、まず現状の業務やプロセス、技術の調査・分析を行い、変革が必要な部分や新しい技術の導入可能性を明確にする必要があります。
また、DXの導入にあたっては、いきなり全社・全工場を対象とするのではなく、1つの生産ラインで試験的に導入するなどスモールステップを踏むことで、失敗時のリスクやコストを回避できます。
デジタル技術の活用
デジタル技術を活用する際は、最新の技術やデバイスに注目しすぎず、自社の課題や目標に合致した技術を選択することが重要です。
例えば、生産ラインの稼働データをリアルタイムで収集したい場合、IoT技術の導入が検討されます。しかし、収集したいデータによっては従来のセンサーがそのまま活用できる場合などもあり、必ずしも最新のデバイスやセンサーが必要とは限りません。
不要なコストを避け、スリムなDXを実現するためにも、製造業DXの知見をもった外部の専門家やベンダーとの連携も考慮すると良いでしょう。
組織文化の変革
DXの成功には、技術の導入だけでなく、組織文化の変革も欠かせません。従業員全員が新しい技術や方法を受け入れ、積極的に取り組む文化を作り上げることが必要です。
DXは部署単位での実現は難しいため、経営陣も含めた組織全体でのコミュニケーションの強化、定期的な研修やトレーニング、変革に関するリーダーシップの醸成などを通じて、DXの取り組みを組織文化に根付かせる努力が求められます。
製造業におけるDXの成功事例
製造業におけるDXの成功事例をご紹介します。
生産効率の向上事例
ある飲料メーカーでは、工場の生産・製造計画の立案にAIを活用することで、年間約1,500時間の効率化に成功しています。従来、熟練者が過去の経験や知見をもとに最大6.5時間かけて行っていた計画立案作業が、最短で30分まで短縮されたとのことです。
品質管理の強化事例
ある電機メーカーでは、ディープラーニングによる目視検査の自動化を実現しました。傷や汚れなどの特徴をAIにより自動的に発見し、製品品質を均質化することが可能とのこと。品質検査にかかる時間や労力が省力化されることで、生産性も向上しています。
コスト削減の事例
通信機器を製造するメーカーでは、2つの工場を仮想的に1つの工場に融合する取り組みを実施しています。生産状況を見える化し、各工場の負荷状況を明らかにしたことで、工場間での生産応援が可能になりました。
この取り組みにより、廃棄コストなどが削減できたのに加え、設計情報の共通化などによって外部環境の変化にもより対応しやすくなったといいます。
製造業のDXは、業界が直面する多様な課題への対応や、新たな価値創出のための重要な取り組みです。デジタル技術の活用を通じて、生産効率の向上、品質管理の強化、コスト削減などの成功事例も次々と報告されています。
このようなデジタル技術の活用は、製造業が持続的な競争力を維持し、さらなる成長を遂げるために欠かせない要素です。
なお、工場におけるDXの詳細や、具体的な進め方、課題についてはこちらの記事もご参照ください。
