近年、IoT技術やIoT機器を取り入れた次世代型住宅「IoT住宅」に注目が集まっています。IoTを住まいに導入することで、これまでの暮らしはどのように変化するのでしょうか。今回は、IoT住宅の特徴や、スマートハウスとの違い、そのメリットについて詳しく解説していきます。
IoT住宅とは?
IoT(Internet of Things)は日本語で「モノのインターネット」と訳され、あらゆるモノが人の手を介さずにインターネットでつながることを意味します。これからの時代は、パソコンやスマートフォン、テレビ、ゲームだけでなく、冷蔵庫やエアコンなどの家電製品、自動車など、ありとあらゆるものがインターネットでつながり、私たちの暮らしはますます便利になっていくことが期待されています。
そして、このIoTの技術を搭載した機器を取り入れた住宅が、「IoT住宅」です。この技術を導入することによって、主に「センサ操作」、「遠隔確認」、「遠隔操作」の3つの機能が可能になります。例えば、玄関ドアをIoT化することで、いちいち鍵を差し込まなくてもセンサによって施錠・解錠ができたり(センサ操作)、玄関ドアの開け閉めによって子どもの帰宅を職場から確認したりすることも可能です(遠隔確認)。また、帰宅時間に合わせてエアコンを入れたり、カーテンの開け閉めを行ったりということも(遠隔操作)、IoT化によって可能になります。
このように、暮らしの利便性を高めてくれるIoT住宅は、共働き世帯や男性の育児参加の増加を背景に、需要が増しています。
IoT住宅とスマートハウスの違い
IoTとよく似たものに「スマートハウス」というものがありますが、両者の違いがいまいちわからないという方も多いのではないでしょうか。
スマートハウスというのはIoT住宅よりも前の2010年ごろから登場し始めた住宅のことで、主に太陽光発電などからエネルギーを作り出す「創エネ」、家庭用蓄電池などでエネルギーを蓄える「畜エネ」、エネルギーの消費量を抑える「省エネ」に取り組んでいる家のことを指します。家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム「HEMS(ヘムス)=Home Energy Management System」を導入している家もそのひとつです。
スマートハウスとIoT住宅はこれまで、その登場時期の違いから異なるものとして区別されてきましたが、現在では省エネはIoT機器の導入が欠かせなくなっているため、両者は将来的に同義語として用いられるようになる、という考え方が主流となっています。
IoT住宅のカギとなる技術
IoT住宅が急速に普及するようになった背景には、「5G」と「AI(人工知能)」と呼ばれる2つの技術の進化が挙げられます。ここでは、IoT住宅を支える二つの技術について、その役割を詳しく見ていきましょう。
5Gサービス
2020年にスタートした次世代の通信規格「5G(第5世代移動通信)。それまで主流だった4Gネットワークと比べて、通信速度が劇的に高速化しただけでなく、大容量のデータをやりとりすることができるようになり、パソコンやスマートフォンだけでなく、電化製品や自動車などさまざまなモノをインターネットにつなぎ、高速でスムーズに通信することでさまざまな情報を収集・蓄積できるようになりました。現在では5Gサービスは、IoT住宅にとって欠かせない技術のひとつなのです。
AI(人工知能)
5Gと同様にIoT住宅に欠かせない技術が、AI(人工知能)です。IoTと組み合せることによって、人が操作をしなくても、掃除機が汚れを感知して室内をきれいにしてくれたり、家の中を常に快適な温度に維持してくれたりということが可能になります。例えば、家中の家電とつながっているAI搭載のスマートスピーカーを活用することで、「行ってきます」のひと声で家中の窓が施錠される、ということも実現可能というわけです。
何ができるのか? IoT住宅のメリット
IoT住宅によって、暮らしはどのように変化しいていくのでしょうか。ここでは、IoT住宅の代表的なメリットを詳しくご紹介していきます。
設備の遠隔操作
共働き世帯や家を留守にすることが多い家庭で便利なのが、家の中のさまざまな設備を遠隔操作できることです。例えば、仕事が残業になって家に帰るのが遅くなってしまった時でも、職場からスマートフォンを操作して家中のカーテンを閉めたり、家に到着する時間に合わせてエアコンで室内を温めたり涼しくしたりすることもできます。
省エネ化
IoTによって電気、水道、ガスをどの時間帯にどのくらい使用しているのか、消費量を細かいデータで見える化することによって、省エネに対する意識を高め無駄の削減につながります。
防犯対策
IoT住宅は防犯対策で高い効果を発揮することも大きな魅力のひとつです。例えば、夜遅くまで外出をする場合、暗くなってきたら遠隔操作によって室内の電気を点灯することで、周囲に留守を知られずに済むので安心です。
また、シャッターにIoTを搭載することによって、設定した時間に自動的にシャッターを閉めることも可能です。近頃では、ホームセキュリティとIoTの両方を組み合わせて、外部からの侵入に対して緊急通報するシステムも普及しつつあります。
健康管理
IoT住宅のなかには、住んでいる人の体重や脈拍、血圧などを自動で測定し記録ができるシステムもあります。
また、IoTを搭載したセンサ付きトイレの利用で、排泄物から情報を得て日ごとの健康状態の把握ができるようにする開発も進められています。
高齢者支援
IoT住宅のなかでも今後さらにニーズが高くなると予想されているのが、高齢者支援です。センサやモニタなどを活用することで、離れて暮らしている子どもたちが一人暮らしの親の様子を見守ることができるだけでなく、万が一の時には遠隔で緊急通報も可能です。
私たちの生活を大きく変えてくれるIoT。これからマイホームを建てる方は、ぜひ上記でご紹介した内容を参考にして、IoT住宅を検討してみてはいかがでしょうか。