私たちの生活や仕事のなかで、デジタル化はどんどん進んでいます。そんななかで覚えておきたい用語の一つとして「デジタルメッシュ」が挙げられます。デジタルメッシュについてなんとなくわかっていても、詳しいことはわからないという方は多いのではないでしょうか。
この記事では、デジタルメッシュの概要から、関連用語の解説、メリット・デメリットなどについて解説します。
デジタルメッシュとは?
デジタルメッシュとは、さまざまなICT技術を活用したシステムやサービスなどをつなぐ環境のことです。例えば、個人が利用するアプリケーションやソーシャルコミュニティと、行政サービスや企業サービスなどが結びついた環境が挙げられるでしょう。各ICT技術が網目状(メッシュ)に広くつながることからこの名がついています。
さらに、自動車やロボット・ドローンなどのモノがデジタルメッシュのなかに組み込まれることを「インテリジェント・デジタルメッシュ」と呼ぶこともあります。IoT、AI、VR、ARなどの技術については後ほど解説しますが、これらの技術との組み合わせにより、従来実現が難しかったさまざまなサービスやシステムが実現できるようになります。
併せて押さえておきたいデジタルメッシュの関連用語
デジタルメッシュをより深く理解するうえで、併せて覚えておきたい用語をいくつか解説します。
データメッシュ
データメッシュとは、データを分散して非中央集権化するアーキテクチャです。従来、データは専用のサーバなどで集中管理することが一般的でした。しかし、多様化する業務や社会への変化に対応するためには、より効果的なデータ管理が必要とされ、従来通りの方法では難しくなってきています。
データメッシュはデジタルメッシュのなかで、「必要なときに必要な人がすぐにデータを利用できる状態」を作り出します。データメッシュにより効率的なデータ管理が実現することで、マーケティングやカスタマーサポートなどに活かすことが可能です。
デバイスメッシュ
デバイスメッシュとデジタルメッシュは同一視されることもあります。しかし、厳密にはデジタルメッシュが「エンドポイントをつなぐ動的なネットワーク」、デバイスメッシュが「IoTの延長線上にあり、ウェアラブルデバイスなどから得られる体験を結びつけるもの」という違いがあります。IoTなどのデバイスによって作り出されるデジタルメッシュが、デバイスメッシュであるといえるでしょう。
メッシュネットワーク
広義には網目状(メッシュ)に広がるネットワークのことを指し、デジタルメッシュはメッシュネットワークの一種です。近年では網目状に広がるWi-Fiネットワークのことを指す場合が多いといえます。
メッシュ状に広がるWi-Fiネットワークは、従来型の1つのルーターに通信が集中する形態ではなく、複数の接続ソースを設置して通信の安定や高速化を実現する手段です。
デジタルメッシュを支える技術
前述のとおり、デジタルメッシュはIoT、AI、VR、ARの4つの技術によって支えられています。それぞれの技術について、簡単に解説するため一つずつ見ていきましょう。
IoT
IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」と呼ばれ、さまざまなデバイスがネットワークを介して相互に通信できることを表します。例えば、農業ではIoTセンサーを利用してネットワーク経由で状態を管理し、自動的な水やりを実現する、というようなことが実現可能です。
AI
AI(Artificial Intelligence)は「人工知能」のことであり、コンピュータが自ら学習して人間のように振る舞う技術の総称です。近年はAIの進歩が凄まじく、簡単なプロンプトで絵を描いたり、文章を作成したりする「生成系AI」が注目されています。
その他にも、マーケティングにおける分析の自動化、カスタマーサポートの自動化や品質向上のために活用されており、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めた技術の一つです。
VR
VR(Virtual Reality)とは「仮想現実」のことであり、仮想的なデジタル世界のことを表します。ヘッドマウントディスプレイなどのウェアラブルデバイスを用いて、まるで自分がそのデジタル世界に存在しているかのような体験を得られる技術です。
VRはエンターテインメント分野での活用が目立ちますが、研修やトレーニングなどでも活用でき、ビジネス分野での活用も進んでいます。
AR
AR(Augmented Reality)とは「拡張現実」のことであり、現実世界にデジタルの情報を付加する技術です。例えば、スマートフォンのカメラで顔を撮影しながら、仮想的なメイクを行ったり、カメラで道を写しながらマップ情報を表示させたりすることができます。
ARもビジネス分野での活用が進められており、メガネ型のウェアラブルデバイスを利用して工場などでの業務効率化に用いられているケースもあります。
デジタルメッシュのメリット・デメリット
デジタルメッシュはさまざまなメリットをもたらす反面、注意すべきデメリットも存在します。
メリット
デジタルメッシュのメリットは、ユーザの利便性・接続性の向上、あらゆる作業の効率化、技術・業務革新の可能性などが挙げられます。さまざまなアプリケーションやシステム・サービスが接続されることで、ユーザは必要なときに必要なデータにアクセスできるようになります。これは、利便性を向上させるだけでなく、作業・業務の効率化も期待できるでしょう。
また、IoT、AI、VR、ARなどの技術を組み合わせることで、従来実現できなかったものが実現できるようになる可能性も考えられます。前述の農業とIoTの組み合わせは、従来難しいとされていましたが、実際に実現していることからも、今後さらにさまざまな技術・業務革新が期待されます。
デメリット
一方で、プライバシーに関する懸念やセキュリティリスクがデメリットとして挙げられます。例えば、個人情報などが広範範囲にわたって参照可能な状態になっていた場合、本来参照すべきでない人物にまで見られてしまう可能性が考えられるでしょう。同様に、情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティリスクも増します。
デジタルメッシュにおいては、情報(データ)の取り扱いに十分に注意し、デジタルメッシュに沿ったセキュリティ対策が欠かせません。
デジタルメッシュはさまざまなICT技術を活用したシステムやサービスなどをつなぐ環境です。IoT、AI、VR、ARなどの技術によって支えられており、私たちの生活や業務に多大な影響をもたらす可能性があります。
デジタルメッシュの活用は今後欠かせないものとなるでしょう。メリットとデメリットをしっかりと理解し、セキュリティ対策などにも注意しながら活用を進めてみてはいかがでしょうか。