データドリブンは、マーケティング施策の成功に欠かせない考え方です。従来の勘に頼ったマーケティング施策とは異なり、成功率が高くリスクが低い施策を立案・実行できます。正しい方法や活用すべきツールについてチェックしておくことをおすすめします。
ここでは、データドリブンの概要から重要性、実現方法、役立つツールまで詳しく解説します。
データドリブンとは
データドリブン(Data Driven)とは、売上やマーケティングなど、利益を得るために必要なデータに基づいて、次に取るべき施策を判断・実行することです。やみくもにチャレンジするだけでは、不発に終わることで無駄にコストを浪費する恐れがあります。データに基づいた分析・施策立案であれば、失敗のリスクを抑えられるでしょう。またその失敗も、類似する別施策の場でデータとして活用することができます。
データドリブンが注目される背景
データドリブンが注目される要因のひとつに、見込み顧客の選択肢がIT革命によって増加したことがあげられます。サービスの多様化によりさまざまな選択肢が用意されるようになり、勘に頼った営業活動では見込み顧客の購買意欲を高めることが難しくなってきているのです。そのため、データドリブンでビッグデータを分析し、顧客の希望にそったより費用対効果の高い施策を模索することが重要になるのです。
その他、データドリブンが注目される背景には、以下のようなものがあげられます。
顧客行動の多様化
見込み顧客が商品・サービスの購入を検討する際は、インターネットで入手した情報を重視する傾向にあります。類似品、競合品、価格、利用方法など、さまざまな条件を踏まえて購入するサービス・商品を選択するため、顧客の心理を理解したうえで適切なマーケティングを行わなければなりません。
新しい商品・サービスが短期間で登場している
昨今では、新しい商品やサービスが短期間で続々と登場するため、市場も短期間で激しく変動します。そのため、状況を迅速に見極めて、精度の高いマーケティング施策の実施が求められます。とりあえずマーケティングを実施してデータを取得し、次に活かすという方法では競合他社に遅れを取るでしょう。そのため、“客観的なデータに基づいた意思決定”を行い、適切なマーケティング施策を立案・実行することが求められます。
働き方改革の推進
勘に頼ったマーケティング施策では結果に結びつかず、現場の従業員の負担が増加してしまいます。その結果、労働時間が長くなる一方で給与が上がらず、負の連鎖に陥る恐れがあります。働き方改革が推進されている現代では、業務効率化による長時間労働の是正が急務です。客観的なデータに基づいたマーケティングを実施し、現場の業務負担をなるべく減らすことが1つの方法です。
マーケティングの品質向上の推進
データドリブンを推進することで、客観的なデータが次々に蓄積されます。蓄積したデータは、マーケティング活動において重要な意思決定のための材料となります。AIによる分析など、新しい技術と組み合わせることで、マーケティングの品質は大きく向上し、コストを抑えながら大きな利益を得られるようになります。競争力を高めるうえで、データドリブンは欠かせません。
データドリブンの重要性
データドリブンは、客観的なデータに基づいた施策を立案するため、自社の顧客について正しく理解することにも繋がります。データからは顧客の心理や趣向などが見えてきます。顧客が商品・サービスの存在を知り、競合他社のものと比較検討し、購入ボタンをクリックするといった段階別の顧客行動データを分析・活用することで、顧客に刺さるより精度の高い施策を立てられるでしょう。
勘に頼った施策を行って成功したとしても、なぜ成功したのかがわかりません。他のパターンで成功するために必要な施策を立てられず、売上がなかなか安定しないのです。また、施策立案が属人化してしまい、経験を積んだ従業員が退職したことをきっかけに売上が低迷するリスクもあります。
データドリブンを実施することで、企業の意思決定の精度向上と迅速化が期待できる点も重要だといえるでしょう。
データドリブンを取り入れる際の注意点
データドリブンを取り入れる際は、次のような注意点を押さえましょう。
人材の確保
データドリブンの実現には、データ分析スキルを持つ人材の確保が不可欠です。データサイエンティストの肩書きを持つ人物であれば、データから仮説を立てることができます。そして、仮説をもとに適切な施策を立案するには、自社のビジネスに精通した人材も必要です。
ツールの活用と認識の統一
データドリブンの実施には、さまざまなデータの一元化が必要です。複数のシステムが連携されず独立して稼働している状態など社内の至る所にデータが散らばっている場合、必要なデータを必要なときに参照できません。速やかに必要なデータを参照するためにも、データの一元化ツールを活用することが大切です。
また、別の部署が保有しているデータを活用する場合に備えて、部署間の連携体制を整える必要もあります。連携不足によってデータが十分に集まらない場合、施策の精度が低くなります。ただし、データドリブンによって施策を立案するという認識が統一されていない場合、協力を得ることは難しいでしょう。部署間の連携体制の構築と組織全体での認識の統一を早めに進める必要があります。
データドリブンの実現方法
データドリブンを実施するためには、データ収集と分析だけではなく、効率的に進めるための処理が必要です。データドリブンを実現する方法について詳しく見ていきましょう。
1.データの収集・蓄積
データドリブンに使用するデータを収集することから始めます。どのようなデータでもよいわけではなく、目的達成に必要なデータを集めなければなりません。とにかく膨大な量のデータを集めて、その中から必要なデータを抽出するのも1つの方法ですが、効率的とは言えないでしょう。
“データで何をするのか”を明確にしたうえで、必要なデータを集めることが大切です。例えば、顧客行動を分析したい場合は、Webサイトへのアクセスや離脱率、他のページへのアクセス数、購買履歴などのデータを集めます。
売れる商品の陳列を目的とするならば、商品ごとの売上や合わせ買い商品、天候や季節、時間帯の情報などのデータを集めましょう。必要なデータを必要なだけ集めることで、短時間で精度が高い分析が可能になります。
2.データの見える化
収集したデータは、可視化する必要があります。データをそのまま統合すると複雑なリストになってしまい、分析に時間がかかりすぎるでしょう。膨大なデータの加工・可視化には、BIツールが便利です。効率的にデータを処理できるため、データ収集から分析開始までのタイムラグを最小限に留められます。
3.データ分析
データ分析の際は、データ同士の関連性を分析し、物事の根本原因を突き止めることが重要です。例えば、わかりやすい例だと雨の日は客数が少ないケースがあります。この場合、雨の日でも売上を安定させるために、雨の日限定でキャンペーンを実施するとよいでしょう。
このように、データ同士を多角的に分析すれば、課題や取るべき施策が見えてきます。
4.実行
データ分析によって導き出した結果に基づいて、施策を立案します。ただし、立案した施策を実行するかどうかを決めるのは“人”です。ここで、「不安だからやめておこう」「小さな施策で様子を見よう」と判断すれば、データドリブンのメリットを得られません。客観的な事実というという疑いのないデータを根拠にしている点がデータドリブンのメリットです。
客観的なデータに基づいて施策を立案し、たんたんと実行するには、データに基づいて経営判断や施策立案を行うカルチャーを社内に浸透させる必要があります。
データドリブンに役立つツール
データドリブンの実現には、ツールの使用が不可欠です。次のようなツールを組み合わせて使いましょう。
BIツール
BI(Business Intelligence・ビジネスインテリジェンス)ツールは、企業の至るところにあるデータを統合・分析・管理するツールです。収集したデータから、商品や価格帯、販売地域など、複数の軸から成り立つデータベースを作成し、条件検索や複数条件を満たした項目の抽出などを行います。また、条件から期待値、あるいはその反対のパターンでシミュレーションできます。
MA
MA (Marketing Automation・マーケティングオートメーション)は、マーケティングのフローと作業を効率化・測定できるツールです。見込み客化や顧客化などを目的としたマーケティングを効率化することで、短期間で売上アップが期待できます。
また、さまざまな分析機能やマーケティング施策実行の自動化などの機能が搭載されており、近年大きな注目を集めています。
SFA
SFA(Sales Force Automation・セールスフォースオートメーション)は、営業を効率化するツールです。営業のプロセスごとの進捗状況やナレッジの共有・管理に使用します。営業先から情報をツールに入力して共有できるため、自社に戻って営業日報を作成する必要がありません。また、マネジメント層向けのレポーティング機能も搭載しているなど、営業の効率化および成果向上を実現できます。
CRM
CRM(Customer Relationship Management・カスタマーリレーションシップマネジメント)とは、顧客情報や購買履歴、クレームなどの情報を管理するツールです。顧客データを分析する際は、CRMで管理しているデータを使用しましょう。クラウド上にデータをバックアップできるものであれば、外出先からもデータを更新できます。
DMP
DMP(Data Management Platform・データマネジメントプラットフォーム)とは、外部企業が提供するパブリックデータや社内のデータを収集・分析するプラットフォームです。MAと役割が似ていますが、主にWEBマーケティングに用いられています。
Web解析ツール
WEB解析ツールとは、自社サイトのアクセス数やユーザ行動などを可視化・分析するツールです。クリック率を指すCTR(Click Through Rate・クリックスルーレート)、WEB上で表示された回数を指すインプレッション数、来訪ユーザ数を指すUU(ユニークユーザ数)など、さまざまなデータを取得できます。
データドリブンは、客観的なデータに基づいて次の行動を判断するため、勘に頼ったマーケティングによる失敗のリスクを軽減できます。顧客行動の多様化が進む昨今では、データドリブンに基づいた施策立案・実行が不可欠になってきています。この機会にデータドリブンを導入してみてはいかがでしょうか。