WAFとはWebアプリケーションをサイバー攻撃から守るためのセキュリティ対策です。WAFを導入することで、悪質な通信を検知・遮断し、Webアプリケーションの脆弱性を利用した攻撃を防げます。

この記事では、WAFの仕組みや役割、WAFで防御できるサイバー攻撃の例、WAF運用のコツなどについて解説します。

WAFとは?Webアプリケーションを守る仕組みと役割

WAF(Web Application Firewall)とは、Webアプリケーションへの不正なアクセスや攻撃を検知・防御するセキュリティ対策です。主にSQLインジェクションやXSS(クロスサイトスクリプティング)などの脆弱性を悪用した攻撃からWebサイトを守ります。
ここでは、WAFの定義やWebアプリケーションを守る仕組み、WAFが必要とされる背景について解説します。

WAFの定義と主な機能

WAF(Web Application Firewall)とは、Webアプリケーションへのアクセスを監視・分析し、悪意のある通信を検知・遮断するセキュリティ対策です。WAFをWebサーバの手前に設置することで、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃を防ぐことができます。

WAFの主な機能は、シグネチャと呼ばれる通信のパターンに基づいて不正なアクセスを識別し、通信を制御することです。また、特定のURLの除外やログの収集といった機能も備わっています。

WAFが必要とされる背景(サイバー攻撃の実態)

WAFが必要とされる背景として、近年Webアプリケーションの脆弱性を標的としたサイバー攻撃が数多く発生していることが挙げられます。独立行政法人情報処理推進機構の発表によると、ソフトウェア等の脆弱性に関する2025年1月~3月の届出の内、全体の約7割がWebアプリケーションに関するものでした。

ECサイトや会員制サービスなど、ユーザーがWeb上で操作できるアプリケーションは特に狙われやすいため、WAFによるセキュリティ対策が求められています。

WAFが防御できる攻撃と事例

WAFで対応できる主なサイバー攻撃は以下の通りです。

  • SQLインジェクション
  • XSS(クロスサイトスクリプティング)
  • DDoS攻撃
  • バッファオーバーフロー

ここでは、各サイバー攻撃の概要やWAFによる対策例について解説します。

SQLインジェクションやXSSとは何か

SQLインジェクションとは、Webサイトに設置されているフォームなどからデータベースを操作するためのSQL文を不正に入力して行う攻撃です。顧客情報の流出やWebサイトの改ざんなどの被害を引き起こす恐れがあります。

XSSは、コンテンツを動的に生成するWebアプリケーションを狙って悪意のあるスクリプトを埋め込み、ユーザーのブラウザ上で不正な動作を引き起こす攻撃です。XSSによる攻撃を受けると、個人情報の漏洩などの被害につながります。

WAFを導入することで、これらの攻撃パターンの検知や通信の遮断が可能です。

DDoSやバッファオーバーフローなどの対策例

DDoS攻撃やバッファオーバーフローは、Webサーバに対して過剰な負荷がかかるような通信を行い、サーバの停止や乗っ取りなどを狙う攻撃です。DDoS攻撃では、複数のコンピュータから狙ったWebサーバに対して大量のリクエストを同時に送信してリソースを圧迫します。バッファオーバーフローは、Webサーバの許容量を超えた膨大なデータを送信して誤作動を引き起こす攻撃です。

不審な通信を検知・遮断できるWAFに加えて、アクセス状況やトラフィック量を監視する仕組みを併用することで、DDoS攻撃への対策が強化されます。また、バッファオーバーフロー対策には、サーバ側のソフトウェアやOSのセキュリティ対策も重要です。

WAFの種類と選び方のポイント

WAFには以下の3つの種類があり、特徴が異なります。

  • クラウド型
  • アプライアンス型
  • ソフトウェア型

それぞれの違いや選び方のポイントは以下の通りです。

クラウド型/アプライアンス型/ソフトウェア型の違い

クラウド型は、インターネットを通じてWebサービスとして提供されるWAFです。クラウド型のWAFの特徴として、導入しやすさや初期コストの低さ、保守や運用はサービス提供会社が行うため運用しやすいことなどが挙げられます。

アプライアンス型は、自社のネットワークに専用の機器を設置して運用するWAFです。性能やカスタマイズ性が高く、大規模なシステムの保護に向いています。

ソフトウェア型は、Webサーバ上に直接インストールして使用するWAFです。機器を増やさずに導入できるため、アプライアンス型と比べてコストを抑えられます。

選定時に重視すべき機能とは

WAFを選ぶ際に重視すべきポイントは、シグネチャの精度や設定できるルールの柔軟性、ログ管理機能などです。シグネチャの精度が高いWAFなら、新しいタイプのサイバー攻撃の検知や遮断がしやすくなります。また、設定できるルールの柔軟性は、誤検知を削減し業務への影響を減らすために重要です。さらに、サイバー攻撃の可視化や適切な対処を行うために、ログ管理機能の使いやすさも確認しましょう。

WAF運用のコツと注意すべき課題

WAFを効果的に運用するには、シグネチャ更新や誤検知チューニング、継続的な監視体制などが重要です。ここでは、WAF運用のコツについて解説します。

シグネチャ更新と誤検知チューニングの重要性

シグネチャ更新は、WAFがサイバー攻撃を検出するためのパターンであるシグネチャを最新の手法に対応させるために重要です。シグネチャが古いままだと、新たな手法で行われるサイバー攻撃を見逃してしまうリスクがあります。

また、誤検知を防ぐためのチューニングを行うこともWAF運用のコツです。WAFの設定によっては、問題が無い通信を攻撃と誤認して遮断してしまう場合があるため、適切なチューニングを行うことが推奨されます。

継続的監視体制とアラート運用のポイント

WAFを効果的に運用するためには、継続的な監視体制を整えることも重要です。不審な通信や攻撃を検知した時にアラートを出すようにしておくと、スムーズに対処できます。アラートを通知する条件や送信先などを適切に設定しておきましょう。

また、万が一サイバー攻撃の被害を受けてしまった場合の対処方法を事前に決めておくことも、迅速に対処するためのポイントです。

WAFに関するよくある質問

ここでは、WAFの機能や導入に関するよくある質問と回答を紹介します。

WAFとファイアウォールやIPS/IDSの違いは?

WAFとファイアウォールやIPS/IDSは、動作する階層が異なります。WAFがWebアプリケーションなどの高階層で動作することに対して、ファイアウォールはネットワークからOSの低階層で動作します。また、IPS/IDSはミドルウェアからOSの中階層が保護対象です。

WAFはすべてのセキュリティリスクを防げますか?

WAFはあくまでもWebアプリケーションの脆弱性を狙ったサイバー攻撃を防ぐものであり、すべてのセキュリティリスクを防げるわけではありません。WAFでは検知できない階層でのサイバー攻撃を防ぐためには、ファイアウォールやIPS/IDSなど複数のセキュリティ対策を導入する必要があります。

中小企業にもWAFは必要ですか?

中小企業であっても、Webアプリケーションを運用している場合にはWAFを導入したほうが安全です。クラウド型のWAFなら初期コストを抑えて簡単に導入できます。セキュリティ対策の要件に応じて、自社に合ったWAFの導入を検討しましょう。

WAFを導入し企業のセキュリティ対策を強化しよう

不正な通信を検知・遮断してWebアプリケーションを保護できるWAFは、サイバー攻撃を防ぐために効果的なセキュリティ対策です。特に、ECサイトや会員サイト、インターネットバンキングなどを狙った攻撃を防ぐためにWAFが役立ちます。機能やコストなどを比較した上で自社に合ったWAFを導入し、セキュリティ対策を強化しましょう。

参考:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第3.1版