新型コロナウイルスの影響により、企業がリモートアクセスを利用する機会が増えています。しかし、リモートアクセスがどういったものなのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。また、VPNやリモートデスクトップ、テレワークなどと混同してしまっている方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、リモートアクセスの概要からVPNとの違い、リモートアクセスの仕組み、企業で導入する方法について解説します。
リモートアクセスとは
リモートアクセスとは、遠隔地(リモート)から社内ネットワークや社内のパソコンに接続(アクセス)することを指します。具体的には、自宅や外出先などのオフィス外から、社内ネットワークなどに接続することがリモートアクセスです。
昨今ではテレワークが普及していますが、テレワークは遠隔地における働き方の総称であり、実現するための手段としてリモートアクセスが用いられています。
リモートアクセスを活用することで、社内のパソコンを操作して遠隔地から業務を遂行したり、顧客先などで社内に保存されている資料を必要に応じて公開したりすることも容易に実現できます。
これらのことから、リモートアクセスは業務効率化の効果が期待できるでしょう。また、災害やパンデミックなどの際でも業務を継続するための手段として注目されています。
リモートアクセスとVPNの違い
リモートアクセスはテレワークを実現するための手段ですが、似たものとしてVPNがあげられます。VPNは仮想専用線のことであり、インターネット網などに仮想の専用線を構築して安全に社内ネットワークなどへ接続するための技術です。
VPNはリモートアクセスの一種であり、遠隔地から社内ネットワークなどへ接続する点では、離れた場所にあるパソコンの遠隔操作をするリモートデスクトップも同様です。パソコンやスマートフォンからリモートアクセスという手段を実現するための技術として、VPNやリモートデスクトップが存在します。
リモートアクセスとVPNの違いは、手段と技術の違いと覚えるとよいでしょう。
リモートアクセスの仕組み
リモートアクセスは「遠隔地から社内ネットワークなどへ接続する手段」であり、その仕組み(技術)としては次のようなものがあげられるでしょう。
- VPN(Virtual Private Network)
- リモートデスクトップ
- セキュアブラウザ
- API接続
- 仮想デスクトップ(VDI)
VPN
VPNは先程も触れたとおり仮想専用線のことであり、プライベートな通信環境を確立することで、リモートアクセスを安全に実現するための技術です。VPNの導入は、企業のネットワークセキュリティを強化する上で有効な手段となります。特に、テレワークや在宅勤務が増える現在の状況では、外部からの不正アクセスを防ぐために、VPNを使用したリモートアクセスの導入が推奨されています。
VPNの仕組みはエンドツーエンドの暗号化と認証に基づいています。これにより、データが公共のインターネットを経由しても、その内容は外部から見ることができないようになります。また認証機能により、正当なユーザーのみがネットワークにアクセスできるようにします。
リモートデスクトップ
リモートデスクトップは自宅などにあるパソコンから社内にあるパソコンに接続し、遠隔操作するものです。
VPNとリモートデスクトップはセキュリティの観点から併用されることが多く、テレワークにおけるリモートアクセスの仕組み(技術)として頻繁に利用されます。
リモートデスクトップの主な特徴は、ユーザーがリモートから目の前のコンピュータに直接アクセスできる点です。
具体的には、キーボード入力、マウス操作、画面表示など、捜査側の端末の性能に依存しない形で、現地でコンピュータを操作しているかのような感覚で作業を行うことが可能です。この仕組みにより、リモートからでも専用のアプリケーションを使用したり、重要なファイルにアクセスしたりすることができます。
セキュアブラウザ
セキュアブラウザは、ブラウザを通して社内システムなどに接続する技術です。近年では多くの社内システムがWebシステム化されているため、リモートアクセスの手段として利用されており、パソコンだけでなくスマートフォンからも利用できるため注目されています。
セキュアブラウザは、一般的なウェブブラウザとは異なり、データの流れを厳格に管理し、不正な通信を防止します。セキュアブラウザを利用することで、リモートからでも企業のデータに対する信頼性と安全性を保つことが可能となります。
またセキュアブラウザは、企業が所有するデバイスだけでなく、個人が所有するデバイスからもアクセスが可能であるため、「BYOD(Bring Your Own Device)」と呼ばれる個人端末を業務利用する形態のテレワークにも適しています。
API接続
APIは"Application Programming Interface"の略で、異なるソフトウェア間でデータを交換したり、互いに機能を使用したりするための規約のことを指します。
API接続は、企業が内部システムを適切に管理しながら、その情報や機能をリモートで利用するための手段を提供します。例えばAPI接続を活用すれば、社内のデータベースに保存された情報を、リモートで動作するアプリケーションで利用可能です。その結果、企業は自社のシステムと外部のサービスをシームレスに統合することができ、ビジネスプロセスの効率化や新たなビジネスチャンスを創出につながります。
API接続はセキュリティの観点からも重要です。APIは通常、アクセス制御機能を備えており、認証と認可のプロセスを通じて、誰がどの情報にアクセスできるかを厳密に管理します。これにより、企業はデータの保護とプライバシーの確保を両立することができます。
仮想デスクトップ(VDI)
VDIは"Virtual Desktop Infrastructure"の略で、サーバ上で動作する仮想的なデスクトップ環境をユーザーに提供するシステムを指します。
VDIの導入により、従業員は自分のパソコンやスマートフォンから、サーバ上の仮想デスクトップ環境にアクセスすることが可能になります。この仮想デスクトップ環境は、社内の物理的なデスクトップPCと同様の操作感や利便性を提供しますが、位置や時間にとらわれずに利用可能です。これにより、在宅勤務や出張中でも、社内のITリソースを安全かつ効率的に利用できます。
すべてのデータとアプリケーションはサーバ上に集約され、各デバイスにデータが分散されることがないため、データ漏洩のリスクを大幅に軽減することができる点もメリットです。
リモートアクセスを企業で導入する方法
リモートアクセスを導入する場合には、どこまでの範囲をリモート操作できるようにするのかを事前に決めておくことが重要です。
VPNで社内ネットワークに接続してすべての操作を許可することも可能であり、セキュアブラウザでWebシステム化された社内システムのみの操作を許可することも可能です。
ただし、リモートアクセスにおける自由度を高めるほど、セキュリティ対策も難しくなります。また、導入の際にはコストや手間だけでなく、通信に与える影響も考慮しなければなりません。
例えば、VPNはすべての通信を暗号化しているため、通常の通信と比べると通信速度は低下しやすく、リモートデスクトップは画面を転送することから通信帯域を圧迫する可能性が考えられます。
ある程度のコストをかけ、社外でも社内と同じ環境で仕事ができるようにする場合はVPN+リモートデスクトップ、必要最低限でよい場合はセキュアブラウザなどのように分けて考えるとよいでしょう。セキュアブラウザで利用できるものはWebシステムに限られますが、VPNやリモートデスクトップほどコストはかからず、導入も容易です。
業務する上でどの方法が最適かを見極め、自社に合う方法を選択しましょう。
遠隔地から社内ネットワークや社内パソコンに接続できるリモートアクセスは、テレワークを実現するための手段であり、導入する企業が増えています。
VPN・リモートデスクトップ・セキュアブラウザといったリモートアクセスを実現する技術を導入する際には、リモートアクセスを許可する範囲を事前にきめた上で、予算や通信に与える影響なども考慮して検討することをおすすめします。