近年注目を集める新しいカタチのSIMである「eSIM」。名前は聞いたことがあっても、具体的な内容についてはよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。eSIMは従来のSIMカードに比べて多くのメリットがあるとされています。
この記事では、eSIMがもたらすメリットと併せて、利用する際には覚えておきたいデメリットについて解説します。
eSIMとは
eSIM(Embedded SIM)とは、端末内蔵型のSIMです。スマートフォンを中心に利用されており、SIMには契約者の識別番号や電話番号などが保存されています。従来は「SIMカード」というカード型の物理的なSIMとして利用されており、Standard SIM/micro SIM/nano SIMとどんどん小型化が進み、次世代のSIM規格として端末に内蔵するタイプのeSIMが登場しました。
eSIMは政府も推進しており欧米諸国でも導入が進んでいるため、今後のSIMの標準になることも予想されています。
その他にもeSIMは従来の物理的なSIM(SIMカード)とは異なる特徴がいくつかあります。詳しく知りたい方は「eSIMとは? 特徴・仕組みや使い方など」も参考にしてみてください。
eSIMのメリット
eSIMがもたらす4つのメリットについて紹介します。
利用開始にかかる時間と手間を短縮できる
従来のSIMカードを利用する場合、スマートフォンの機種変更や回線切り替えはショップで対応することが一般的でした。
しかし、eSIMはオンラインで情報の書き換えを行います。そのため従来よりも時間と手間を省くことができ、手続きが簡単であることがメリットと言えます。スマートフォンの機種変更や回線切り替え、また新規の回線契約も、オンラインで簡単に行なうことが出きます。
QRコードやURLを通じて、手続きサイトにアクセスすることで簡単に開始できます。
また通信事業者(MNO・MVNO)にとっては、物理的なSIM在庫を持たずに済むことも、在庫管理の観点で大きなメリットでしょう。
SIM不良や機器の破損リスクが少ない
SIMカードは取り扱いがデリケートであり、差し替えの際などに故障のリスクが生じます。故障した場合は新しいSIMカードの発行が必要ですが、その際には手数料がかかるケースがほとんどです。
それに対して、eSIMは電子基板にハンダ付けされている状態で、はじめから端末に内蔵されているため、回線の乗り換えや契約時に差し替えたりする必要がありません。そのため、揺れや温度変化などの故障や破損リスクを抑えられる点がメリットだといえます。
回線選びの自由度が上がる
スマートフォンでSIMを利用する際、「SIM1枚のみ」もしくは「デュアルSIM」(1つの端末で複数のSIMが利用できる仕組み)という選択肢があります。しかし従来ではいずれも「SIMカード」(物理SIM)しか選択できませんでした。
そこにeSIMが加わることで、「SIMカードのみ」「SIMカード+SIMカード」「SIMカード+eSIM」「eSIM+eSIM」「eSIMのみ」という利用が可能になり、回線選びがより自由になります。(端末が希望の組み合わせに対応しているかは別途調べる必要があります。)
少し脱線しますが、デュアルSIMの話をします。この仕組みを使うことでユーザ側(スマートフォン側)で自由に回線の切り替えを行うことができます。例えば、スマートフォン1台で業務用の回線としてA社と契約し、プライベート用の回線としてB社と契約して使い分ける、ということが実現できます。
ほかにも、時間や場所においてより安定した回線に自動で切り替わる設定にできたり、通話用とデータ通信用というような使い分けができたりします。
オンラインで利用開始できるeSIMの普及で、より手軽にデュアルSIMを利用することができ、回線選びの自由度も上がるので、スマートフォンをより便利に出来るでしょう。
海外旅行時に現地の回線への切り替えが容易
海外旅行時にスマートフォンを利用する場合、現地でSIMカードをレンタルしたり、あらかじめ国内で旅行先に対応したSIMカードを購入したりする必要があります。
しかし、eSIMはオンラインで手続きが完了するため、現地の回線への切り替えも容易に行えます。また、使用する端末にどのサイズのSIMカードが対応しているかなどを確認する必要もありません。
eSIMのデメリット
多くのメリットをもたらすeSIMですが、利用する際には次に挙げるような点に注意が必要です。
対応端末でないと使えない
eSIMは端末に内蔵されたSIMであるため、そもそも対応端末でなければ利用できません。
また、端末にSIMロックがかかっている場合は解除する必要があります。SIMロックは特定のキャリアしか利用できなくするよう端末に制限をかけた状態であり、日本独自の仕様です。ただし、総務省は2021年10月からSIMロックを原則禁止としており、現在はSIMフリーが一般的になっています。SIMロックを解除するには、そのキャリアのショップやウェブなどから申し込んでください。
自分で設定などができる程度の知識が必要
eSIMを利用する場合、基本的に手続きはオンライン上で完結します。そのため、そういった手続きを苦手とする方にとってはハードルが高いといえるでしょう。
eSIMを利用する際にはeSIMプロファイルを端末にダウンロードし、端末側で回線の切り替え設定を行う必要があります。SIMカードを利用する際と比べて、ある程度のITリテラシーが求められます。
契約できる通信会社やプランが限られる
政府も推進しているeSIMですが、現状では契約できる通信会社やプランが限られます。大手キャリアは一通りeSIMが導入されていますが、格安SIMなどを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)では導入している会社のほうが少数派です。
eSIMに対応した端末もそれほど多くないため選択肢が限られるという点は、現段階ではデメリットだといえます。
eSIMは次世代SIMとして標準化が進んでいます。日本では現在SIMカードが主流ですが、欧米諸国ではeSIMの導入が進んでおり、日本でも主流となる日は近いでしょう。
登場して間もない新しいカタチのSIMなので、現段階で存在しているデメリットも、普及が進むにつれ徐々に改善していくはずです。
eSIMであれば従来あったSIMカード挿入部分が無くともSIMを利用できるので、端末の小型化など、プロダクトデザインもより自由になるでしょう。また、揺れや温度変化に強いというメリットがIoTに及ぼす影響も非常に大きいと言えます。
eSIMについてもう少し詳しく知りたい方は、「eSIMとは? 特徴・仕組みや使い方など」も併せてご覧ください。