eSIMとは? 特徴・仕組みや使い方など

スマートフォンをご利用の方であれば、SIMカードの存在はご存知でしょう。では、近年新しいSIMとして普及が進んでいる「eSIM」についてはどうでしょうか。従来のSIMカードが持つ課題点を解決できる可能性があるeSIMについて、政府も推進しています。
この記事では、eSIMの概要からSIMカードとの違いや仕組み、使い方について解説します。

eSIMとは

まずはSIMについて説明します。SIM(Subscriber Identity Module)は契約者情報が内蔵されたICチップであり、従来はカード型であったことからSIMカードと呼ばれています。

SIMカードの中には固有の識別番号や電話番号などの情報が記録されています。スマートフォンなどのデバイスで4Gや5Gなどの移動通信システムを利用する際に必要となります。

一方eSIM(Embedded SIM)は、カード型ではなく本体一体型で、端末に内蔵する形でこれらを実現しています。eSIMの”e”(Embedded)は「埋め込まれた、組み込まれた」という意味があります。

また、従来からあるSIMの使い方として、複数の回線を利用できる「デュアルSIM」という仕組みがあります。これには、必要に応じてネットワークの切り替えができるというメリットがありますが、一方で、従来はどちらもSIMカード(物理SIM)である必要があり、また契約にかかる手間がデメリットでした。
このデメリットが、eSIMの登場により解消されました。詳しくはこの後の項目で解説したいと思います。

eSIMは従来のSIM(SIMカード)のあらゆる課題を解決する、新しいSIMの形として注目されています。

政府のeSIM促進

eSIMは日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、欧米諸国を中心に海外では普及が進んでいます。2024年にはスマートフォンの出荷台数における33.8%がeSIM対応機種になると予想されているほどです。

日本では2021年8月10日に総務省が「eSIMサービスの促進に関するガイドライン」を公開しました。総務省はSIMロック解除義務化と併せてeSIMの普及を推し進めています。

その理由としては、海外渡航者や来日観光客の利便性向上、通信業界の活性化が挙げられるでしょう。eSIMによりキャリアやMVNOの乗り換えがしやすくなることで、これらが容易に実現できるようになります。

総務省は各キャリアに向けて要請を行い、2021年春ごろから個人向けのサービスが始まっています。

eSIMの特徴・SIMカードとの違い

eSIMの特徴としてまず挙げられるのはその形状です。従来のSIMはカード型で、別途端末に挿入する必要がありましたが、eSIMは端末内蔵型であるためそれが不要になります。

また、形状に関連してIoTの観点からSIMを考えた場合、例えばSIMは車載カメラに利用されたり、農業・太陽光・防犯などの用途において屋外で利用されたりすることがあります。eSIMは端末内蔵型で、電子基板にハンダ付けされるので、従来のカード型のSIMよりも揺れや温度変化に強いということが特徴的です。

また、スマートフォンで利用回線を複数持ちたい場合(デュアルSIM)や回線を乗り換えたい場合、従来であればショップに足を運ぶ必要がありましたが、eSIMであればオンライン上で手続きを完結できます。時間と手間を短縮することができ、より手軽にデュアルSIMを利用してみることもできます。海外旅行などの際にも利用しやすくなります。

eSIMの仕組み

eSIMはRSP(Remote SIM Provisioning)という仕組みを使って遠隔で情報を書き込む仕組みを利用しています。RSPも「M2Mモデル」と「コンシューマモデル」の2つのモデルに分かれており、それぞれの違いは次のとおりです。

  • M2Mモデル:回線提供元(MNO・MVNO)でeSIMのプロファイルを書き込む
  • コンシューマモデル:ユーザー側でeSIMのプロファイルを書き込む

もともとM2MモデルはIoT機器向けに策定された規格であり、人間が操作するデバイス向けに策定された規格がコンシューマモデルです。

「書き換えが可能なSIM」として言われる場合は、コンシューマモデルの場合が多いといえるでしょう。

eSIMの使い方

eSIMを利用する場合の一般的な流れは次のとおりです。

  1. 利用可能な端末か確認する
  2. 回線を切り替える
  3. 端末にeSIMプロファイルをダウンロードする
  4. 端末側で回線を切り替える(eSIMの切り替え)

eSIMは端末に内蔵されているため、そもそも端末が対応している必要があります。対応端末の場合は、Webサイトによるオンライン切り替えや電話による回線切り替えが可能です。

その後、契約した回線提供元の指示に従いeSIMプロファイルを端末にダウンロードします。最後に端末側の設定で回線を切り替えれば利用できるようになります。

iPhoneやAndroidの種類によって設定方法は異なるため、お使いの端末ごとに設定方法を確認しましょう。

eSIMは端末に内蔵されているSIMであり、政府も推進している新しいSIMです。eSIMは欧米諸国では普及が進んでおり、日本でもこれから普及することが予想されます。
eSIMには多くのメリットがあるため、この機会にぜひeSIMを使ってみてはいかがでしょうか。より詳しくメリットやデメリットについて知りたい方は、こちらの記事「導入前に知っておきたい「eSIM」のメリット・デメリット」もおすすめです。