AIとIoTで何ができる? さまざまな業種の事例を紹介

IoTが収集したデータをAIが分析して何らかの有用な情報や価値を生み出す…AIとIoT、この2つの技術を結びつけて生まれるソリューションがさまざまな業種に導入され、活用されています。AIとIoTで何ができるのか、活用事例を中心にご紹介します。

AI(人工知能)とは

AI(Artificial Intelligence、人工知能)とは、コンピュータなどを使って人間の思考や知的な振る舞いを模倣して再現するようなシステム、あるいはそうした技術を指す言葉です。

1950年代後半から1960年代にかけて第一次AIブームがあり、その後、1980年代の第二次AIブームを経て、現在は第三次AIブームのさなかにあるとされています。

2010年代前半から始まった第三次ブームは、コンピュータの飛躍的な性能向上に加えて、機械学習やディープラーニングといった新しい技術の登場によるところが大きいと考えられます。

機械学習は人間がプログラムしてすべての動作を指示するのではなく、AIがみずからデータを分析して法則性や特徴を見い出して学習しながら情報処理するシステムです。ディープラーニングは機械学習の一種と言えますが、ディープラーニング(および機械学習)には3つの種類があります。「教師データあり学習型」「教師データなし学習型」「強化学習型」です。

「教師データあり学習型」は、あらかじめAIが見つけるべきものが与えられていて、それにマッチするものを不眠不休で膨大なデータから見つけ出すものです。指名手配写真を教師データとして与えられ、全国の監視カメラ映像から犯人を捜すという例ですとイメージしやすいでしょう。

「教師データなし学習型」は、膨大なデータの海から共通するパターンを見つけ出すものとなっています。全国の監視カメラから、犯罪者に共通する動作を見つけ出し犯罪を予測するとか、来店する人がどのような態度をしていたら商品を購入してくれるとかといった、何も手がかりがないところから対象を分析・分別・ラベリングすることで何か手がかりを見つけるものです。

そして現在、最先端と言われているのが「強化学習型」で、囲碁や将棋、チェスで名人と対戦して有名になったAIです。人間の脳神経系をモデルに目標に向かって試行錯誤して、目標達成に貢献する行動ができれば褒められ、貢献できなければ怒られるという学習を繰り返し、データのどのような点に注目すれば目的が達せられるのかという目の付け所も自ら探していくAIとなっています。

IoTとは

IoTとは、センサなどを搭載したモノをインターネットなどのネットワークに接続することで情報をやりとりする仕組みを指す言葉です。Internet of Thingsの略で、モノのインターネットと訳されます。

IoTにおけるモノとはセンサ機器、駆動装置(アクチュエータ)、家電製品、建物や住宅、工場の生産用機械・施設などのことです。IoTデバイスという言葉もよく使われます。最近ではスマートスピーカ(AIスピーカ)、スマートロック、スマートタグなど身近なところにもユニークで便利なIoT製品が次々と登場しています。

AIとIoTを組み合わせると何ができるのか

AIとIoTの組み合わせによる新しい製品やサービスも普及し始めています。

IoTにおいては、IoTデバイスが収集したデータをどのように分析するかということがカギになります。その分析を人間が行うことも不可能ではありませんが、AIなら人間よりももっと迅速かつ効率的に処理することが可能です。あるいは、IoTが収集するビッグデータと呼ばれるような膨大なデータを処理するのは人間には難しく、むしろAIの得意な領域です。

例として、工場の製造現場における完成製品の検品を取り上げてみましょう。従来、検品作業の多くは熟練したスキルを持つ人間の目視によって行われてきました。しかし、センサやカメラを備えたIoTデバイスが製品の状況を捉えてデータとして収集し、クラウドに保存・蓄積、AIが良・不良を判定するモデルに基づいてそのデータを分析し、不良品を取り除くシステムが実用化されています。このシステムを使えば、同一の製品だけではなく、新しい製品が追加された場合でもAIがその製品の特徴量を学習し、新たな判定モデルを生成して対応することができます。

このように、AIとIoTの組み合わせや融合は、さまざまな新しいソリューションやビジネスアイデアを生み出す可能性を持っています。

業種別のAI・IoT活用事例

業種ごとに、もう少しAIとIoTを組み合わせて活用している事例をご紹介しましょう。

製造業

製造業での活用事例には上述した検品のほか、混在物の検出、機械や設備の異常検知、稼働監視、工場内立ち入りの顔識別などがあります。

製造機械・設備の異常検知では、カメラが捉える外観画像やセンサが収集する設備の温度変化などの各種数値情報を得て、AIが正常パターンからの逸脱がないかといった基準を用いた分析を行います。複数の異なる入力情報から複合的に判断するAIはマルチモーダルAIと呼ばれ、こうしたシーンでの活用が始まっています。また、今後は単に異常を検知するだけではなく、故障や劣化などの異常を事前に察知して防ぐ予知保全分野でのAI・IoTの活用も期待されています。

物流業

物流業で目立つのは、物流センターや物流倉庫など倉庫内の業務改善のためにAIやIoTを活用している事例です。

物流センターや物流倉庫では、入庫から保管、ピッキング、梱包、出庫に至るまでの一連の作業の省力化・自動化に向けたIT化が急ピッチで進んでいます。RFIDタグ、自走式ロボット、無人搬送車(AGV)、デジタルピッキングシステムなどを使って作業員の負担を軽減すると同時に、例えば最短経路でのピッキングや数量検品を遂行するためなどにAI・IoT技術が使われています。また、入荷検品や出荷検品では製造業と同様の検品ソリューションが導入されています。

農業

農業では農林水産省が「スマート農業」というコンセプトを打ち出しています。スマート農業はロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新しい農業とされていますが、その中にAI・IoT技術の導入も含まれています。

例えば気象データなどのビッグデータや、IoTデバイスやドローンが捉えたほ場(田畑や農園)のリアルタイムデータをAIで分析し、最適な栽培管理方法を提案するシステムの構築などが考えられます。これに近い栽培管理システムはすでに実用化されており、分析結果を受けて追肥の量を決めるといった形で作業効率を向上させることが可能になっています。

ほかには、画像解析を使った作物の病害虫による病徴の早期発見、AIが制御する作業ロボットによる作物の収穫、流通や販売とのデータ連携による市場動向や消費ニーズを把握した上での農作物生産量調整システムなども考えられています。

IoTでデータを集め、AIで処理していくという、AIとIoTの組み合わせは、今後多くの業種にさまざまなイノベーションをもたらしていくでしょう。ここ数年の動向にぜひ注目してください。