センサネットワークとは何か? 使用されている技術や活用例など

IoT環境を構築するための基盤となるセンサネットワーク。そこにはどのような技術が使用されていて、どんな活用例があるのでしょうか。センサネットワークの概要と、その可能性について解説します。

センサネットワークとは

センサネットワークとは、無線通信機能を持つ多数の小型センサ端末を特定空間内の各所に設置し、それらの機器を協調して働かせることで施設の制御、あるいは環境の観測などを可能とする無線ネットワークのことです。

センサネットワークはIoTの普及に伴って需要が急増し、さまざまな分野で活用が広がっています。無線であるため配線の手間が省け、ネットワーク接続することで多くのセンサから得られるデータを一元管理できるのがメリットです。一方、センサネットワークはまだネットワークと端末間の通信規格や周波数など、国際的な標準化が確立していないといった課題も残しています。

センサネットワークに使用されている技術

センサを使用して温度や湿度、明るさ、加速度といったさまざまなデータを検知して収集し、情報を数値化する技術がセンシング技術です。センサネットワークはそのセンシング技術と無線通信技術とを組み合わせて設計したシステムの一つと言えます。

センサネットワークに使用されるセンサ端末はセンサノードと呼ばれます。手のひらに乗るようなコンパクトなサイズで、センサ、無線通信チップ、マイクロプロセッサ、電源ユニット(電池など)から構成されているのが一般的です。

このセンサノードに搭載される無線通信チップの通信規格には、微弱無線、Bluetooth、ZigBeeなどがあります。中でもZigBeeはセンサネットワークを主目的として作られた、安価で消費電力が少ない近距離用通信規格で、今後のさらなる普及が期待されています。

また、多数のセンサノードを一つのネットワークにまとめ上げるための技術として挙げられるのがマルチホップ通信です。マルチホップ通信はそれぞれの端末同士が直接接続してデータを数珠つなぎに伝送する方式です。マルチホップ通信のように端末のみで構成され、基地局やアクセスポイントを必要としない自律分散型のネットワークをアドホックネットワークと呼びます。この技術を活用することで、センサノードは消費電力を抑えながら近距離通信を行い、それを繰り返すことで数kmに及ぶ距離のデータ伝送を実現します。

センサネットワークの形態

たとえばZigBeeでは、センサノードを役割ごとに「コーディネータ」「ルータ」「エンドデバイス」という3つのタイプに分けています。コーディネータはネットワーク接続を開始する端末(1つのネットワーク内に1台のみ)、ルータはデータを中継する機能を持った端末(スリープできない)、エンドデバイスはデータを中継しない最も多く使用するであろう端末(スリープできる)で、どのタイプにもセンサを備えることが可能です。

これらのセンサノードを使った接続形態(ネットワークトポロジ)には、次のような種類があります。

スター型

1台のコーディネータに複数のルータとエンドデバイスを接続する形態です。1対Nの星型にネットワークを構成するのでこのような呼び名が付いています。他のネットワークでは家庭内LANもスター型が多く採用されています。

ツリー型

1台のコーディネータから枝分かれするような形で複数のルータやエンドデバイスがセンサネットワークを構成する形態です。1台のコーディネータにルータやエンドデバイスを接続するのはスター型と同じですが、ルータの先にさらに別のルータやエンドデバイスがぶら下がります。枝分かれした部分が複数存在するツリー型は、クラスタツリー型と呼ばれます。

メッシュ型

コーディネータ、ルータ、エンドデバイスを網目状に接続する形態です。メッシュ型ではあるルータに障害が発生してもそのルータを迂回し、別のルータを使って通信を続けられます。そのため障害に強いという特徴があり、反面、設置と管理のためのコストは高くなります。IoTに適した形態であるため、重要な部分だけをメッシュ型にするケースも見られます。

センサネットワークの活用例

センサネットワークは屋外、工場、倉庫、ビル、駅、道路、商業施設、店舗、家屋などさまざまな場所に構築することができます。

オフィスビルや家屋を対象とした活用例としては、センサネットワークとビル統合管理システムを連携させる試みがあります。照度、温度、湿度、CO2、電力、人感などのデータをセンサで収集し、分析して、最適な環境を整えるための制御を行います。

医療分野では、ユーザが腕時計型のセンサ端末を着け、加速度センサ、脈波センサ、温度センサなどから送られたデータを、センサネットワークを介して収集・分析し、医師の知見も用いながら健康管理や保健指導を行うというシステムが作られています。

他にも橋梁にセンサ端末を設置してリアルタイムかつ継続的に監視するモニタリングシステム、ビニールハウスや植物工場内の温度、湿度、日照、土壌水分などの栽培環境データをセンシングして収穫最適期の予測や農業アドバイスを行うシステム、輸送物や配送車にセンサ端末を配置して品物の温度、受けた衝撃、位置などのデータを取得し最適配送経路の指示、配送時間予測、輸送管理などに利用するシステムなどにもセンサネットワークが活用されています。

センサネットワークは今後さらに多くの分野で活用されていくでしょう。関連技術の進化やプロトコルの標準化も急速に進んでいくと考えられます。センサネットワークを取り入れることで現在提供しているサービスの効率化が可能になる、あるいはまったく新たなビジネスチャンスが生まれるということも期待できるでしょう。