ローカル5GとWi-Fiの違いとは? Wi-Fi6とプライベート5Gについても解説

5G技術を活用した「ローカル5G」が注目を集めています。そこで気になるのは、ローカル5GとWi-Fiには、工場などで運用する上でどのような違いがあるのかということです。ここではローカル5GとWi-Fi、とくにWi-Fi6との違い、さらにプライベート5Gとの違いなどについて解説します。

ローカル5Gの特徴

大手キャリアが提供している5G(パブリック5G、キャリア5G)とは異なり、ローカル5Gでは局所的に5G技術を用いたプライベートネットワークを構築します。ローカル5Gの免許は建物や土地の所有者に対して、自己の建物あるいは自己の土地の敷地内に構築を許可される「自営の5G通信環境」と言えます。2019年から申請受付が始まり、2020年から実際の利用が始まっています。

以下、その特徴を整理して見てみましょう。

通信品質

免許周波数帯を用いるため、通信品質は安定しています。事前の電波干渉調整などを行うことで、より安定した品質を得られるでしょう。また、パブリック5Gと比べると、ネットワークの混雑や一部エリアでの通信トラブルなどの影響を受けにくいのも特徴です。

周波数帯

ミリ波である28.2~28.3GHzに加えて、4.6~4.9GHzと28.3~29.1GHzが割当てられています。

最大速度

10~20Gbps。2020年時点では1~2Gps程度といわれています。

セキュリティ

APN(Access Point Name)とパスワードによる認証のほか、SIMカードにより認証も併用。そのためセキュリティはWi-Fiと比べてより強固といえます。また、ミリ波使用時はもともと電波が建物や敷地外に漏えいしにくい傾向があります。

認識方式

APNとパスワード、SIM認証が使われています。

コスト

ローカル5Gの基地局や交換機(コア)設備を含めると数千万円~1億円かかります。

通信の安定性

他事業者との電波干渉調整を行うことを前提として、高安定性を得られます。

通信遅延

いわゆる超低遅延で、およそ1ミリ秒程度です。

電波到達範囲

見通しの良い環境では1台の基地局で広範囲をカバー可能です。

Wi-Fi6の特徴

第6世代のWi-Fi規格であるWi-Fi6は、それまでのWi-Fi(Wi-Fi5)に比べて高速かつ同時通信が快適、省電力性に優れているというメリットを持ちます。個人ユースでは十分な性能ですが、企業が工場などで利用する場合には、ローカル5Gと比べた場合の性能差が見えてきます。

Wi-Fi6についても同じ項目ごとに特徴を挙げていきます。

通信品質

基本的に通信品質は安定していますが、免許が不要な分、電波干渉などの調整が難しくなるという側面もあります。

周波数帯

2.4GHz帯と5GHz帯が割当てられています。

最大速度

理論上は9.6Gbps。2020年時点では5Gbpsくらいといわれています。

コスト

アクセスポイント1台につき数万~十数万円かかります。

セキュリティ

パスワードが漏えいした場合のリスクがあることを想定すべき。また、2.4GHz、5GHz帯の電波は障害物を回り込みやすく、電波が敷地・建物の外にまで漏れ出す可能性があります。

認識方式

SSIDとパスワードによる認証が使われています。

通信の安定性

基本的に周波数帯が非免許帯なので、電波干渉や混信対策が難しく、それによっては安定しない可能性があります。

通信遅延

20~30ミリ秒程度です。

電波到達範囲

2.4GHzのほうが遠くまで届き、障害物があっても回り込みやすい特徴がありますが、長距離通信はできません。

ローカル5GとWi-Fiの違い

ローカル5GとWi-Fi6の違いは上記のとおりです。通信遅延やセキュリティに関してはローカル5GがWi-Fi6を上回る性能を有していますが、コスト面ではWi-Fi6が有利です。

また、これ以外にもう一つ、制御方式が違うというのも見逃せないポイントです。

ローカル5Gでは、基地局による一括集中制御が基本となります。また、原則としてパブリック5G(キャリア5G)との同期運用が前提となっています。どういうことかというと、ローカル5Gにおいても電波の届く範囲の端の方では、パブリック5Gとエリアが重なる部分があります。その部分での干渉や混信、輻輳を防止するために、ローカル5Gの基地局もパブリック5Gの基地局とスケジューリングして同期されたタイミングで電波を発射し通信を行うことになります。そのため、端末が増えすぎるとスケジューリングが難しくなり、干渉が起きて通信の継続に支障が生じる可能性があります。その場合はローカル5G基地局の増設が必要になります。

これに対し、Wi-Fiでは自律分散制御を行います。この方式では、端末から通信要求があると、アクセスポイントが割り当てられている全体の周波数の中から空いている周波数を自動的に選んで利用します。そのため端末がある程度増えても、アクセスポイントや端末が互いに協調して、そのときどきでベストな方法で通信を継続しようとします。

どのような条件で通信を行い、制御するのかによっても事情は異なりますが、ローカル5GとWi-Fi6のどちらを選択するかを決めるときは、この制御方式の違いについても検討する必要があります。

プライベート5Gと、ローカル5GやWi-Fiとの違いは?

プライベート5Gはソフトバンクが提供する、パブリック5Gとローカル5Gの中間に位置付けられるサービスです。企業や施設など敷地内において、ソフトバンクのパブリック5Gの周波数帯を利用し、仮想的に「ローカル」な5Gのネットワークを構築するものです。パブリック5Gの周波数帯を使用するので、パブリック5Gの基地局が存在しないと利用することは出来ません。ソフトバンクのパブリック5Gのエリアが広がる2022年にサービス開始予定と発表されています。

ローカル5GやWi-Fiとはまた異なるサービスであることを押さえておきましょう。

工場などに無線通信システムを導入する際は、ローカル5GとWi-Fiの違いについてしっかりと理解し、自社に合ったものを選ぶ必要があります。それぞれの特徴を最大限に活かせるよう検討してください。