5Gって何? 今後5Gでできることとメリット・デメリット

2020年春に日本でも5Gの商用サービスがスタートしました。しかし、5Gとは何なのか、5Gで結局何ができるのかを明確に説明できる人はそれほど多くないのではないでしょうか。5Gの概要、メリット・デメリット、そして今後5Gでできることなどについて解説します。

5Gとは

5Gとは「第5世代移動通信システム」を意味する言葉です。GはGenerationを表します。5G以前には1G~3Gがあり、2010年代にスマートフォンの普及と時を同じくして導入された4G(LTE)がありました。

5Gは日本では2019年に試験サービスが始まり、2020年には3月25日にNTTドコモ、26日にKDDI、27日にソフトバンクと順次サービスがスタートしています。ただし、5G対応スマホを持っていたとしても、2020年4月末時点で5G通信が利用できるエリアはまだ限られています。NTTドコモの場合、スタジアム・オリンピック施設、主要駅や空港などの交通施設、観光施設ドコモショップ、その他屋外スポットなどとなっています。

新型コロナウイルス(COVID-19)や東京オリンピック延期の影響もあり、今後の見通しは不透明な部分もありますが、NTTドコモでは2030年度中に基盤展開率(全国を10km×10Kmのメッシュに区切った際に5G専用周波数を使った基地局が設置される範囲の割合)を97.0%にすることを目標に掲げています。

5Gの特徴と仕組み

5Gには大きく分けて次の3つの特徴があります。

高速・大容量

4Gは110Mbps~1Gbpsという通信速度でしたが、5Gはサービス開始時で下り最大3.4Gbps(NTTドコモ)程度を達成、やがて下り20Gbps、上り10Gbps、10Gbps以上の超高速も実現することが要求条件とされています。またトラフィック量は2010年と比べて1,000倍以上に増大すると予測されており、5Gはこれへの対応が謳われています。

5Gでは、4Gで使用している3.5GHzよりも高い周波数帯(3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯)を用いることで帯域幅を広げ、データの通り道を確保するという仕組みで高速・大容量を実現します。

もともと電波には周波数を高くするほど直線性が強くなり、障害物の裏に回り込みにくくなるという特徴があります。そこで5Gでは、周波数6GHz未満の「Sub6」(3.7GHz帯と4.5GHz帯)を用いて広いエリアをカバーし、さらに高周波帯である「ミリ波」(28GHz帯)を混雑エリアなどにスポット的に展開するという周波数帯を組み合わせることで高速通信を可能にするという方法が取られます。 これは、通信の制御部分(手紙で言うと宛名や差出人の部分)と、コンテンツ部分(手紙の中身の文章の部分)を分離して扱うことによって実現します。そしてこのミリ波が出てくると、先程の上り20Gbps、下り10Gbpsという理論値に近づいていきます。

また高周波帯には、電波が遠くまで届きにくい、減衰しやすいという弱点もあります。そこで5Gでは、「Massive MIMO」の技術もカギになるとされています。Massive MIMOは従来のアンテナ本数よりはるかに多い100本以上のアンテナ素子を同時に用いることで、多数の端末に個別の電波を割り当てて快適なモバイル通信を実現するというものです。

低遅延

4Gは10ms(100分の1秒)の遅延が発生していたのに対し、5Gでは1ms(1000分の1秒)程度の遅延に抑えられます。これは主にデバイスとサーバーの物理的な距離を縮めることで通信時間を短くする「エッジコンピューティング」という技術によって実現されます。
今までは、端末からデータセンターにあるサーバーまでデータを伝送し、サーバー側で処理をしてデータを端末に戻すということをやっていましたが、これではサーバーまで行って返ってくるのに時間がかかります。そこで、基地局の近くにエッジサーバーを設置して、そのエッジーサーバーで処理しデータ端末に戻すことで伝送距離を短くして、低遅延を実現しています。
このような技術は、車の自動運転システムをはじめ、遠隔医療、機械の遠隔操作など、クリティカルなリアルタイム性を求められる場面で活用が期待されます。

多数同時接続

5Gでは基地局1基に同時に接続可能な端末数も格段に増えます。4Gの10倍以上の接続数(1平方キロあたり100万台)をサポートするとされており、IoT機器なども含め多くの端末が同時に使用できます。

多数接続は、超高密度分散アンテナ「ビームフォーミング」技術を使い、電波を細く絞り、特定方向に向けて発射することで必要な端末にだけ正確に電波を届けることで実現しています。

5Gのメリット・デメリット

まずはメリットから紹介します。ユーザーにとって5Gを利用するわかりやすいメリットは、通信が快適になることです。4Gの10倍程度の速度になれば、スマートフォンで4Kや8Kの動画やゲームもストレスなく楽しめます。5Gならではの環境を活かしたコンテンツも登場するでしょう。

高解像度の動画、音声、画像を低遅延でやりとりできるということは、リモートワーク、テレワークに有用であることも意味します。オフィスはもちろん、たとえ自宅にいなくても、外出先からリモートミーティングに参加することも容易になるでしょう。少人数がつながるだけではなく、多人数が常につながって、必要に応じて出入りしながら打ち合わせなどを行えるビジネスチャットツールの強化版のようなツールも登場しそうです。さらに5GにARやVRを組み合わせることで、仮想的なオフィスを自宅などに出現させることを可能にするといった研究も進んでいます。

こうした動きが加速されれば、ライフスタイルや働き方が変わっていくと考えられます。医療や教育のスタイルも変化していくはずです。IoTやAI技術とのとの連携により家のスマートホーム化、工場のスマート工場化、街のスマートシティ化も進むでしょう。また車の自動運転システムも5Gによって大きく前進するといわれています。5Gは社会がより快適な方向へとアップデートされる、原動力の一つになると考えられます。

次にデメリットについてですが、5Gがインフラやライフラインに近いところで活用されるほど、セキュリティや設備保全の問題が浮上してきます。サイバー攻撃や、思わぬ事故、災害などによって5Gのシステムが正しく機能しなくなれば、たちまち人々の生活に支障が生じます。これらへの二重三重の万全な対策が求められます。

5Gによって実現できること

5Gの普及は多くのビジネスチャンスも生み出すと考えられます。現在、4Kハイスピード映像の遠隔地リアルタイム視聴、スポーツのVR観戦、建設機械やロボットの遠隔操作、世界規模でのスマホを使ったeスポーツ大会の開催、新しい音楽ライブ体験の創出……といったさまざまなアイデアが実現されようとしています。しかし、5Gにはまだキラーコンテンツ、キラーアプリケーションがないという意見も聞こえてきます。

5Gによって実現できること、5G時代だからこそ実現可能なコンテンツは、5Gを当然のように利用できる社会が到来してから一気に増えていくでしょう。これまでとは異なる新しいニーズを的確に捉えることで、そこに生まれるビジネスチャンスをつかむことができるはずです。

5Gが真価を発揮するのは2023年以降?

今スタートした5Gは、NSA(Non Stand Alone)方式ですが、今後はSA(Stand Alone)方式になります。このSAになるのが、2023年初頭と考えられています。そうなればようやく、今、巷でいわれているような5Gの真価が発揮されるでしょう。ちなみに、2030年には5Gの次の移動通信システム、6Gの試験も始まるともいわれています。

5GのNSAは、4Gと設備を共有している方式で、アンテナは5Gですが、通信を制御するコア装置は4Gを利用する仕組みとなっています。この方式では、性能は4Gと大きく変わらないため5Gにスムーズに移行することが可能です。
SA方式は、通信を制御するコア装置も5Gとなり、完全な5G仕様といえます。5Gだけで稼働するのでStand Aloneといわれています。

5Gの特徴として、「ネットワークスライシング」という技術があります。超高速や超低遅延、多接続など用途に合わせてネットワークのリソースをプログラムして使うという仮想化の技術です。超高速が求められれば、ネットワーク設備(ハード・ソフト)を超高速向けに(仮想的に)組んで超高速通信を実現し、超低遅延が求められれば、ネットワーク設備を超低遅延向けに(仮想的に)組み直して超低遅延を実現するという技術です。

5Gが“真の5G”としてのポテンシャルを発揮するのは2023年からといわれています。2020年の現在はまだごく初期段階であり、この後、拡充段階を経て成熟段階へと向かうとされています。ここから始まる数年で何が変わり生まれるのか、その変化を見逃さないようにしましょう。